CTでは、投影データから画像を再構成するというコンピュータ処理が必要です。コンベンショナルスキャンでは、1回転データを収集して移動しての繰り返しのため、画像再構成するのにデータが不十分であることはありません。
しかし、ヘリカルスキャンでは移動しながらデータを収集するためどの位置を取っても1回転分のデータを得ていないことになります。
つまり、画像再構成するのにデータが不十分なのです。
では、どうやって画像を再構成しているのか。それは、どうにかして1回転分のデータを集める(そろえる)作業を行っているのです。そしてその方法が、360°補間と180°補間と呼ばれるものです。
今回は、この二つについてまとめてみたいと思います。
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そもそも補間とは?
そもそも、補間とは数値表や観測で得られた値に基づいて、その間にある、表が載せないまたは観測していない数値に対する値を算出することです。
簡単にいうと、足りないデータをその前後のデータから予想して穴埋めしようというものです。最近では、アプリでも画像から動画を作るものがでてきているので、想像がしやすくなっているかもしれません。
いくら静止画をつなげようとしても限界がありますが、そのデータから前後の画像が予想できれば、動画のように見せることが可能です。動きがカクカク・シカジカな動画であれ、その動き毎にその間の動きを計算し、補間することで滑らかな動画を観ることができるのです。
昔の目に黒い線が入ってしまっている人でも、なんとなく頭の中でその人の目を想像してしまうことはないでしょうか。
それも補間です。
自分の頭の中で、足りないデータを計算し穴埋めしているのです。
このように、足りないデータを他の情報から作り上げることが補間であり、CT画像再構成にも使用されているのです。
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360°補間とは?
画像再構成に使用される、一つの補間方法が360°補間です。しかし、ヘリカルスキャンで得たデータは、スキャン軌道がらせん状であるため本来、画像を作るのに必要である360°分のデータが存在しません。
そこで、X線管球が同じ位置にある時の前後のデータを用いて足りない分のデータを補うのが360°補間です。
例えば、画像を作るのに、管球が一番上にあった時のデータが不足しているとします。データが不足しているので、ここままでは画像を作ることはできません。
なので、その前に管球が一番上にあった時とその後の管球が一番上にあっと時の2つのデータから計算し、補間を行います。別の言い方をすると、過去と未来のぞれぞれ、現在と管球が同じ位置にあっとデータを使用します。
なので、画像を作ろうとする一回転分戻った時(-360°)と1回転進んだ時(+360°)のデータを揃える必要があります。つまり、管球が2回転した分のデータを使用し、画像を再構成していることになります。
前後それぞれ360°分のデータを使用するから360°補間です。
では、360°補間の利点と欠点とはどんなものでしょうか。
・利点
利点は、画像を作るのに2回転分のデータ、つまり多くのX線量を使用していることです。1断面に使用されるX線量は通常に比べ2倍になるため、画像ノイズが低減されます。
・欠点
欠点は、画像再構成する断面位置から使用する補間データまでの間隔が広いことです。
そのため、ヘリカルピッチによる影響を受けやすく、ピッチが大きくなるほど、使用する補間データまでの間隔も大きくなります。
結果、実効スライス厚の増加を顕著になります。パーシャルボリューム効果やモーションアーチファクトの影響(被写体の動きによる影響)が大きくなります。
180°補間の前に・・・
この後、説明に使用される対向データについてまとめたいと思います。対向データという考えは、180°補間を理解するうえで欠かせません。
360°補間を理解していただいた方からすれば、次の理解のための関門といえるでしょう。
では、説明していきたいと思います。
対向データとは、実データに対向して存在するであろうデータをのことをいいます。
そもそも、実データとは何なのか。
それは、X線管球から検出器に入射したX線によるデータのことです。なので、実データとは実際に照射したX線が被写体を通過し、検出器に入射するという過程を経てきたデータになります。
一方、対向データとは、実在するデータとは言えません。
なぜなら、対向データとは、「実データに対向する方向から入射したX線は、実データと同じデータになるはずだ」という考えによって作られたものだからです。
つまり、ある方向からX線を照射して得たデータとその反対方向から照射して得たデータは取得する方向は逆でも得られるデータは同じになる。という考えから、『実際に得られたデータがあるなら、その反対方向からのデータは仮想で同じデータとして作っても大丈夫だ』となるのです。
CT検査では、X線を1回転させてデータを得ることから時計の方向を借りて考えることにしましょう。
時計の方向で表すと、最初は12時から6時の方向へX線が照射されます。そして、回転が進み、半分回ったころになると6時から12時の方向へX線が照射されることになります。
この12時から6時の方向へのX線と6時から12時の方向へのX線は向きが反対なだけです。
つまり、同じデータを得ていることなるのです。
これが対向データの考え方です。
そうやって、実データから実際にはないその対抗するデータ(対向データ)を得ることで、画像再構成のためのデータ量の底上げが可能となるのです。
180°補間とは?
では、実際に180°補間では、対向データはどのように使用されているのでしょうか。
もう一度言いますが、180°補間は対向データの不可欠です。このことから、180°補間は対向データ補間と呼ばれたりします。
180°補間とは、実データから180°分進んだデータ(対向データ)から補間データを得て、画像再構成するものです。180°補間では、360°補間の時に問題になった補間データまでの間隔の広さを対向データを使用することによって解決しています。
つまり、180°補間では断面位置から補間データまでの間隔が狭く、実効スライス厚の増加を防ぐことができるのが特徴です。さらに、補間データまでの間隔が狭くなることで、時間分解能の向上になり、モーションアーチファクトの少ない画像を得られやすくなるのです。
対向データという、少し不確かなデータを使用しているのに関わらず180°補間による画像再構成は従来の方法と同等の画像を得ることが可能です。
そのため、この方法は広く、そして主流に利用されています。
ここで、一つだけ注意点があります。
180°補間という名前ではありますが、実際には180°ではなく、180°補間+ファン角であるということです。これは、別の機会にまとめてあるのですが、管球が180°分のデータだけでは使用されているX線がファンビームであるため収集するデータが不十分なのです。