CT検査を行う上で避けることができない考えとして、スライス厚とスライス間隔というのがあります。
今回は、スライス厚についてまとめたいと思います。
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CT画像は輪切り画像と言われますが・・・
CT検査では輪切りの画像が得られ、よく断面像と表現されるため、体内の表面を観察しているものだと勘違いをされることが多いです。
実はこの表現は、正確には間違いなのです。
どういうことか。
CT画像の一枚、一枚にはハムのような厚みがあり、「断層像」と表現されるほうが正確であるといえます。
CT画像は身体の一部分を切ってその表面を見ているのではなく、厚みのある一枚だということです。
といっても、イメージが湧きにくいと思いますので、きゅうりを例に考えてみたいと思います。
1本のきゅうりを単純にきって開いてその切り口(断面)を見ているのが断面像です。
では、断層とは層を形成しているのである厚みをもった状態です。なので、2mmや3mm、1㎝など薄切りにした状態を断層と表現することになります。
図で表現すると以下のようになります。
「なにが違うの」って考えてしまうかもしれませんが、この違いは意外と大きいんです。
なので、スライス厚がとはどういったものでどんな影響があるものなのかまとめてみたいと思います。
イメージだけでも、つかめていただければと幸いです。
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スライス厚とは?
CTが断面を見ているのではなく断層なのだとすれば、「スライス厚」とは?
という疑問を感じる方もいるかもしれません。
でも、これも単純です!!
上のきゅうりの輪切りのように、輪切りでも料理の用途によって、厚い輪切りと薄い輪切りがあると思います。
この厚さ何mmっていうのがスライス厚です。
イメージではこんな感じですね。
ちなみに人の体は身長によってもことなりますが、座高だけでも男性であれば約90cm、女性であれば約85㎝もあります。(参考;経済産業省:人体寸法・形状データ「size-JPN 2004-2006」)
人の座高だけでも1mmなど薄く輪切りにして画像を作成するとなると、1000枚近いCT画像が得られることにもなるのです。
スライス厚による違い
きゅうりやベーコンなど食べ物であれば、厚さによって歯ごたえが変わり、おいしさも変わりますが、CT画像のでは、どのような違いがあるのでしょうか?
CT画像はX線が多く使って作成しているほうが画像を作成する際に正しいX線の情報を多く使い画像を作成するため、ノイズの少なくなります。
このノイズ量は、スライス厚によっても影響を受けます。
スライス厚が厚いほど多くのX線量が使われており、逆に薄いスライス厚ほど少ないX線量で画像が作成されています。
X線CT画像は基本的に一断層に含まれるX線量が多いほどノイズが少ない画像を得ることが出来るため、スライス厚が厚いほどノイズの少ない画像を得ることが出来ます。
これは、お肉で例えるなら、画像に含まれるX線量とは肉に含まれる肉汁みたいなものです。肉厚が厚いほど肉汁が凄くおいしいですよね。
感覚的にはそれと同じなのです。厚みがあるほど、お肉本来の味を感じることができますが、逆に肉厚が薄いとタレや細かい味付け、小さな焦げにまで味が左右されやすくなります。雑味が増えたように感じるわけです。
ここでまず知っていただきたい
ポイント➀
・スライス厚が厚いほど⇒ノイズの少ない画像
・スライス厚が薄いほど⇒ノイズの多い画像となり、病気によってはノイズで隠れてしまう
となることです。
じゃあ、スライス厚を厚くした方がノイズの少ない良い画像が得られるのだからそれでいいのではないか?
と思うのですが、もちろん良いことばかりではありません。
スライス厚が厚くなることで、画像全体がボケるため小さな病気を見つけにくくなったり、画像の連続性が乏しくなるため、3D画像を作成しても、ガタガタな画像になるため状況に応じた使い分けが必要となるのです。
ポイント➁
・スライス厚が厚くなるほど・・・
画像の連続性に欠けるため、3D画像には向かない
・スライス厚が薄くなるほど・・・
画像の鮮鋭性が良くなり、構造物同士を見分けやすくなる(空間分解能が良くなる)。連続性に優れ、3D画像作成にも使える。
つまり、スライス厚を変化させることで、画像に含まれるノイズ量や臓器内の病気の発見率が異なるため、状況に応じた使い分けが必要になります。
パーシャルボリューム効果
スライス厚の話をする際に欠かすことができないのが、
『パーシャルボリューム効果』と呼ばれるものです。
でも、パーシャルボリューム効果とは何でしょうか?
ここで、改めて確認すると、CT画像はX線の吸収の度合いを表現して作成されます。
ただ、CT画像は断層像であり、その断層内には正常な臓器や病気などが含まれることになり、これを一枚の画像で表現しなければなりません。
とすると、CT画像では断層内に含まれる構造物のX線の平均吸収値が表現されることになるのです。
断層内に含まれる構造物を平均して表現することには、弊害が起こることがあります。
それがパーシャルボリューム効果と呼ばれるもので、その影響はスライス厚が大きくなるほど顕著になって現れます。
では、実際に、どんな影響がでるのか確認していきましょう。
例えば、5mmくらいの大きさの病変が体内にあったとしましょう。
そして、スライス厚を5mm,7mm,10mmといったように変化させて画像を作成したとすると、どうなるでしょうか?
答えは、
また、これはスライス厚が同じ厚さでも、病変を捉える位置でも変わります。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
原因は、スライス厚内に含まれる構造物の占める割合の変化によるものです。
スライス厚内に占める病変の割合が少なくなるほど、病変は他の構造物と平均化されてしまい、どんどん曖昧な存在となってしまいます。
例えるなら、白い紙に大きな黒丸があると気づきやすいですが、点のような小さな黒丸があっても気づかないようなものです。
表現する領域内で占める割合が大きいものほど、人にわかりやすく的確に表現されるのです。
パーシャルボリューム効果の影響をまとめると・・・
➀構造物の境界で吸収値が不正確になること。
➁構造物の辺縁が不明瞭になること。
となります。
この、パーシャルボリューム効果は診断にも影響するということになりますが、影響を少なくする方法もあります。
その方法は、2つです!!
➀スライス厚を薄くする。
スライス厚内に含まれる病変の割合を大きくすることができ、画像をまたがって的確に病変の大きさや範囲を表現できる。
が、ノイズが多くなるので、X線量が不足していると、病変の大きさによっては隠れてしまう恐れがある。
➁ピクセルサイズを小さくする。
少し難しくなるが、CT画像の吸収値(CT値)は、立方体の構造物の平均値(ボクセル値)となる。
ボクセル=ピクセル×スライス厚(ピクセルは低辺の四角形であり、スライス厚は高さみなすと体積を求める式と同じ。)
であり、ピクセルサイズを小さくすると、含まれる構造物が少なくなるため、そこに含まれる構造物をより正確に表現できるようになる。
病院の検査を行う上で簡単にできる操作は➀のスライス厚を薄くすることが第一となります。
スライス厚を薄くすれば、下のような構造をした病変でも、正確に表現することが出来ます。
スライス厚の使い分け
スライス厚は画像にもたらす影響は無視できるものではありません。
しかし、全部の検査で薄いスライス厚を作成していては、画像の量が多くなり、読影への負担増と病院で保管するデータ量の増大を起こすため、工夫も必要です。
例えば、
➀スクリーニングのような、病気の有無を判断するような検査ではスライス厚が厚くても病変をある程度は把握できるため適しており、病変が見つかった場合のみ薄いスライスを作成する。
➁3D画像を作成する必要がある場合には、画像のキレが重要となるので、薄いスライスを作成する。
といった、状況に合わせて行う必要性はありそうです。
設定スライス厚と実行スライス厚
最後に用語として・・・
CTでは、スライス厚にも設定スライス厚と実行スライス厚という考えがあり、混乱の元になっているので、まとめて終わります。
・設定スライス厚(公称スライス厚)
医療機器メーカーが交渉しているスライス厚。
CT撮影時に装置上で選択が可能なもので、メーカーによって異なります。
東芝⇒0.5mm、1mmなど
GE⇒0.625mm、1.25mmなど
・実行スライス厚
ヘリカルスキャンでは、公称スライス厚が実際のスライス厚とは限りません。
本来、一致するのが理想ですが、
・焦点サイズ
・ヘリカルピッチ
・補間法/画像再構成法
などによって、設定スライス厚とは微妙に異なるため、これらを考慮した、実際のスライス厚が実行スライス厚と呼ばれています。ファントム撮影にて求めることが可能です。