拡散強調画像は、拡散の程度によって、信号強度が変化する撮像法です。しかし、拡散強調画像だけでは、白く描出されているか黒く描出されているかという画像上の結果しか知ることができません。
ある程度、白く描出されていば拡散がなく、暗く描出されていれば拡散があるということは確かなのですが、それでも拡散とは無関係に白く描出される要因があった場合には、拡散の有無を正確に判断するには、別の情報が必要となります。
そんな拡散の有無を正確に判断するうえで使用されるのが、ADCマップというものです。
そこで、今回はADCマップについてまとめてみたいと思います。
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ADCマップとは?
ADCマップとは、2つのb値によって撮像された拡散強調画像からコンピュータ計算によって導きだされた、見かけの上の拡散係数を画像化したものです。
どういうことか、拡散強調画像の復習を踏まえ説明していきたいと思います。
拡散強調画像の信号強度とは、傾斜磁場強度、傾斜磁場の持続時間によって決まるb値とともに組織の拡散のしやすさを表す、拡散係数Dによっても決まります。
もう少しだけ復習しますと、拡散係数が大きいほど組織内のプロトンが動きやすく、拡散起こりやすいため、信号強度は低下します。逆に、拡散係数が小さく、拡散が起こりにくいほど信号強度は強くなるのです。
では、この拡散係数とはどうやって測定されるのでしょうか。
実は、これMRIを用いて行われるのです。原理として拡散係数が先にあるように感じになりますが、実は、画像の結果から拡散係数が求められていることになります。
と、拡散係数の測定の話に入っていきたいのですが、その前に、1つだけ考慮しておくべきことがあります。
それは、プロトン拡散現象とは、1方向に直線的に起こる現象でなく、ジグザクの軌道を取るということです。
そのため、最初のプロトンがいる位置と2度目の拡散強調傾斜磁場が送信された時のプロトンの位置との間の最短距離が、プロトンが実際に移動した距離ではないことを理解しておく必要があるのです。
これは、街中の散歩のようなものです。例えば、出発地点から最短で3km先に最終的な目的があったします。しかし、途中で散歩を楽しみたくなったために、路地裏を探索したりなど最短ルートから外れてしまうと、その分余計に歩くことになります。
結果、最短では3kmだった道も実際に歩いた距離はそれ以上になっており、出発地点から目的値までの距離と実際に移動した距離で相違が起こってしまうことになります。そのため、実際に動いた距離を知るためには、どの道を進んだのかという詳細な道筋とより複雑な計算必要になるのです。
では、みなが最短ルートを通らないのか?と、いうとそうではないはずです。
むしろ多くの人が最短の道を進む人もまた多いはずです。
このように多くの人が同じ道を進み、同じ目的に向かっていた場合、客観的には規則的に動く人が多いように感じられることになります。
実は、これは人の体でも同様です。
各ボクセルの中には、拡散だけでなく、微小灌流と呼ばれる規則性のある流れもまたあるのです。そして、目的を見張っていただけでは、周り道をしてきたのか、規則的な道を進んできたのか区別することができないように、MR信号に対する2種類の動くプロトンからの影響を区別することができないのです。
つまり、MRI装置で測定される拡散係数とは真の拡散の程度ではなく、あくまで、最終地点から予測された見かけ上の拡散係数となるのです。
そして、この拡散係数を用いたものがADCマップへとつながることになります。
では、ADCマップとはどうやって得られるものなのか。
ADCマップ画像を取得には、2度の測定が必要になります。まず初めに拡散強調傾斜磁場なし(b値がゼロ)で撮像を行い、画像を得ると同時に信号を測定します。
それから、傾斜磁場を送信(b値を一般的な1,000に設定し)測定を繰り返します。これによりもう一枚の画像を得ることができることになります。この画像は、水分子が自由に拡散されているところでは、信号強度が低く、拡散が障害されているところでは信号強度が高い画像となっています。
一般的によく見られる拡散強調画像といったところです。
この二つの画像から信号強度を読み取り、その信号強度対b値をプロットします。すると、b値が1,000の信号よりもb値が0の信号のほうが強くなっています。
そこで、信号の違い、変化を見るために、信号強度値をグラフ上にプロットします。すると、b値1、000の時の信号強度値とb値が0のとの信号強度値を結ぶことで、その信号強度値の変化の傾きを得ることができ、その直線の傾きが、拡散によってプロトンが移動した距離と相関し、この画素でのADC値となるのです。
実際には、様々なb値を用いて2枚以上の画像を撮像し、より正確な直線を得る努力をすることにはなりますが、ADC値を求めるには2枚以上の画像が得あれば十分であるということができるのです。
そして、画像間の信号強度の変化から求めることが可能なのです。
ここまで来れば、ADCマップ画像まであと一歩です。
複数のb値による画像から求められるADC値は、画像を構成する1画素ごとに求められます。そして、画素の全てにADC値を割り当てたのがADCマップとなるのです。
つまり、ADCマップとは、b値よる信号強度の変化量を画素ごとに求め、得荒れたADC値の集合体となる画像であるのです。
そのため、ADCマップでは、各画素において拡散がどの程度大きいかを表すことになり、拡散が起こりにくいところ、b値よって信号強度に変化が起こりにくいところでは、信号強度は低下する傾向になります。
下で拡散強調画像とADCマップを比較してみましょう。
すると、一方がもう一方を反転させたような画像になっているのがわかると思います。拡散強調画像で明るい部位(拡散が起こっていないところ)は、ADCマップでは暗くなっているのです。
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ADCマップの役割とは?
ADCマップは拡散拠町画像のコントラストをただ、逆にしただけならば、それほど必要ないのではないか。
と、思うかたもいるかもしれませんが、実は結構役に立つものなのです。
どう役に立つのかじっくりもう少しだけ説明を含めたいと思います。
拡散の測定は、短時間で行うことが重要です。これは、動きによる影響をなくすことが重要だからです。拡散強調画像では、ミクロな動きを測定し、画像化するため、身体の動きなどのマクロな動きによる影響を受けやすいからです。
そのため、実際の測定はEPI(エコープラナー)法が使用されます。
EPIは気温的には、T₂*強調画像なので、T₂コントラストの影響で元から明るく描出されるものがあります。しかし一方で、拡散が制限された領域も明るく表示されます。
これでは、T₂コントラストの影響なのか拡散が制限されているためなのか判断するk十ができません。
そこで、ADCマップが役に立ちます。
b値が0の時の画像の信号と比べると、拡散強調画像では通常の拡散があるところの信号は低下しています。逆に拡散が低下しているところでは、ここが異常ですと言わんばかりに信号は高いままです。
脱髄が起こっていたりすると、T₂強調画像ではかなり高信号となるため、先ほど述べたような問題が起こります。拡散強調画像における高信号部位は拡散障害が原因であるはずが、この様な部位では、原因が異なるかもしれないのです。
このような正常な拡散状態でも信号が明るい場合は、T₂コントラストが原因であるため、T₂シャインスルーと呼ばれる。
では、どうやって拡散障害なのか正常なのか区別するのか。
というと、ADCマップを見るのが解決策となります。拡散が低下することはADCマップでも信号が低下することに繋がるため、拡散強調画像上で信号が増加していれば、ADC値も同様に低い値となっているはずなのです。
逆に、ADCマップが暗くないのであれば、拡散強調画像で白く描出されていても拡散障害が原因ではないといえるのです。
ADCマップは拡散強調画像の白い描出をの疑いを晴らす大事な画像であるのです。