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レントゲンのAECとは?

ネガフィルムが主流だったような以前のレントゲン撮影では、撮影する放射線技師が自分の判断でX線量を変化させて撮影していました。

 

撮影で照射するX線量を撮影条件といいますが、撮影条件はレントゲン写真の良し悪しを左右する重要な因子であり、患者さんの被ばく線量にも影響します。

 

しかし、この撮影条件には放射線技師間でバラつきがあったのです。

 

人は同じもの見ても、ある人は「大きい」といったと思えば、別の人は「いや、普通というか少し小さい」と思うことがあるように、人の感じ方はそれぞれです。

 

撮影条件は患者さんを見た時の印象で個々の放射線技師が変化させていたため、撮影する人が変われば、撮影条件(照射するX線量)が異なり、写真全体が白くなったり黒くなったりとバラバラでした。

 

特に、太っている人はX線をよく吸収するので、「いっぱいX線を照射しないと写らない(事実ではありますが)」という思いも相まって、過剰に照射されていたこともあるはずです。

 

このことは画像を比較する上でも問題になることもあったのではないでしょうか。

 

時間経過による治療の可否を判断するために、同じ人の撮影を依頼しているはずなのに毎回違った濃度で写真が届き、それで診察しなければならないのですから。

 

そこで、写真の濃度を一定に保つために開発されたのが、AEC機構(自動露出機構)です。

 

AEC機構の導入以来、レントゲン撮影には失敗が少なくなり、写真濃度にも安定性がでてきました。

 

まぁ、簡単にレントゲン写真を撮れるようになったのです。

 

そんなAEC機構とはどんなものなのかを今回はまとめてみたいと思います。

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AEC機構とは?

AEC(Auto Exposure Control;自動露出機構)とは、誰がどんな人を撮影しても一定の写真濃度を得ることができるように(同じようなレントゲン写真を撮れるように)、調整を行う機能のことです。

 

患者さんの体格は痩せている人、太っている人、筋肉質隆々な人など様々です。

 

レントゲン撮影において痩せている人は、X線吸収が少ないため照射する線量は少なくて済みますが、太っている人の場合は身体に厚みがありX線吸収が多いため、フィルムに届く線量が少なくなりがちになるため、痩せている人に比べて、多くの線量が必要になります。(X線吸収についてまとめたものがあるのでよければ・・・)

 

このように、どんな人を撮影しても、同じような写真濃度で提供するためには、体格の変化に応じてX線量を変化させなくてはなりません。

 

しかし、人が見た目で判断しX線の照射線量を変化させていては必ずミスが起こります。

 

結果、線量が足りず写真が真っ白になってしまったり、過剰に照射され写真が真っ黒になってしまったりすることになり、再撮影という余計な被ばくが増えることにもなるのです。

 

この写真濃度の不安定性を安定化に向けて開発されたのがAEC機構になります。

 

AEC機構は、照射され、被写体を通過したX線を検出し、レントゲン写真濃度が適正濃度に達したら、X線の照射を自動で中止させることができるものです。

 

適性の写真濃度というのは事前に決めておく必要がありますが、一度決めれば、誰が撮影しても、同じような濃度でレントゲン写真を撮ることが簡単にできるのです。

 

X線を自動で制御してくれるため、過剰なX線照射を抑える利点も持っています。そのため、写真濃度を一定に保つだけでなく、被ばく線量低減にも寄与しているということもできます。

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問題はないの?

レントゲン写真を安定させ、被ばくも低減できるAEC機構ですが、問題はないのでしょうか?

 

実は、あるんです!!

 

それは被写体(患者さん)の体格の違いによって停止信号を出力したときに実際にX線照射が止まるまでにタイムラグを生じることです。

 

どういうことでしょうか?

 

痩せている人に影響がでやすい短時間特性と太っている人に影響がでやすい長時間特性というものがありますので、紹介いたします。

 

・短時間特性

実は、AEC機構がX線照射を停止するように信号を送ってから照射が止まるまでには少しタイムラグがあります。
そのため、AEC機構で今がレントゲン写真の適正濃度だからX線照射を停止させてくださいとサインを送ってからも、X線照射が止まるまでの間、少し余分なX線がでていることになります。

 

もちろん、余分に照射されたX線もレントゲン写真濃度に影響を与えるので、線量が多くなった分だけ、適正濃度よりも少し暗い写真となって出力されます。この影響はX線量が少なくて済むはずの痩せている人や体格の小さい人に対して顕著に現れ、余分な被ばくをすることになってしまうのです。

 

ただ、AEC機構が停止サインを送るタイミングを速めれば問題になることはありません。

 

・長時間特性

これは、X線照射時間が長い場合(といっても1秒未満の話ですが)に、早めに照射が止まってしまう現象です。写真濃度を保つためのX線量が足らず、全体が白くなってしまい、診断しにくい写真となってしまいます。

 

この影響は太っている人に顕著になりますが、AECによる停止サインのタイミングを遅らせれば問題ありません。

 

また現在は、X線検出器側も進歩しているので、線量が少なくても診断可能な写真を得ることができますので、被ばくが減る分にはいいかもしれませんね。(こんなことをいうと、先輩技師たちから怒られるかもしれませんが・・・)

 

 

この他に問題になるのは、造影剤を使っている場合です。

 

造影剤はX線吸収がとても良くレントゲン写真上では白く写ります。そして、AEC機構はX線検出器に設置したあり、被写体を通過したX線を検出して働く機構です。

 

しかし、造影剤はX線吸収が良いということは、X線を通過させない、いつまでもAEC機構までX線が届かないということになります。

つまり、X線照射の停止サインがいつまでも発せられず、X線照射が止まらないことになるのです。

 

通常、X線照射装置には照射限度が設定されているので、心配されるほどの被ばくをすることはありませんが、必要以上のX線量が照射されることには変わりありません。

 

造影剤だけに限らず、X線吸収がよいものがAEC機構の前にある場合には同様のことが起こるため注意が必要になります。

 

患者さんも、もしレントゲンに影響がでそうなものを身に付けていたら、申し出た方がご自分の被ばくを減らすことにも繋がるので遠慮はいらないと思われます。

 

ちなみに、このAEC機構はレントゲンだけに限らず、CT(CT-AEC)にも搭載され、画質の安定性と被ばく線量の低減に寄与しています。