CT検査と言えば、被ばくによる癌の発生が心配されるほどの検査です。ですが、一度の検査で得られる情報量が多いため、需要は多いのも事実です。
そこで、医療機器メーカーは被ばくを低くするための技術を色々と開発しています。
今回は、被ばく低減にも寄与しているCT-AEC(Auto Exposure Control)についてまとめてみたいと思います。
どの装置にも当たり前に使われている機能なので、参考いただければ幸いです。
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AECといえば・・・
以前、お話したこともある【AEC】という機構ですが、今までは、普通のレントゲン撮影(X線撮影)に使われてことで有名です。
X線つまりレントゲン撮影に使われているAECは、画像の濃度調整に使われています。
施設ごとに得たいレントゲン画像濃度を決めて、それに応じて、X線の照射量を変化させるというものです。(具体的には、X線の照射時間を変える機能。X線の強度や量に影響する管電圧と管電流は一定のまま)
簡単に言うと、体格が大きい人や小さい人でも同じような画質で診断できるように、画質調整するための機能だということです。
ただ、CTで使われているAECは画質を調整する機能と言う意味では同じですが、方法が少しだけ違うので注意が必要です。
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CT-AECとは?
では、CT-AECではどういった機能なのでしょうか?
レントゲン撮影では画像濃度調整が行っていましたが、CT-AECでは画像ノイズの調整が行われています。
では、画像ノイズとは何かということになるのですが・・・
TVで映像が乱れた時に目立つ、ザラザラっとした画面を見にくくするアレです!!音でいえば雑音といったものが身近なものになります。
ノイズとは本来見たい映像や音の邪魔をするものなので、その量が多いほど、音でも画像でも聞こえにくくなったり、見にくくなるものなのです。
これは、CT画像でも同様です。
CT画像でもノイズが少ないほうが画質が良く、ノイズが多いほど画質が悪いということになります。
言い換えると、CT画像に存在する画像ノイズが少ないほど診断しやすい良い画像と言えるのです。
ただその一方で問題もあります。
それは、患者さんに照射するX線量(被ばく量)が、ノイズを減らそうと思うほど増えてしまうことです。
でも、被ばくはできるだけ少なくしたい!!
と、いうことで施設ごとに
「この程度のノイズ量なら診断に影響しないから大丈夫だよ。X線量を少なくしていいよ!!」
という基準を決めてあり、それに応じたX線量を患者さんに照射して検査を行っていることになります。
そこで使われる機能がCT-AECです。
CT-AECは管電流値を変化させて、(照射するX線量を調整する)どんな人を撮影しても画像ノイズ量を一定に保つ働きをしています。
つまりCT画像の画質安定下にもなっています。
CT-AECの具体的な方法とは?
CT検査では、必ず断層像を得る範囲を決めるための位置決め写真(スカウト写真やスキャノ画像などメーカーによって呼び方は様々)を撮影します。
こんな感じのですね。
この位置決め写真は診断には使用することができないような画質の悪いものですが、患者さんの体の厚さ、骨など人体の構造などの情報を多くもっています。
この情報を用いて、胸部ならX線を吸収する臓器が少ないから、X線量を減らしても大丈夫!!
逆に、腹部はX線が透過しにくいような臓器が多いから、胸部に比べて多めにX線量が必要になるだろうという計算をすると、下の図のようなX線量を変化させる波形を撮影する前に計画することが可能になるのです。
結果、どんな部位であろうと、どんな体型の患者さんであろう(太った人にはX線量を多く、痩せた人にはX線量を少なくなど)と一定の画質(画像ノイズを一定に)を保った
CT検査を行うことが出来ようになります。
さらに、CT-AECを使用して撮影するということは患者さんの体格に応じて、X線量を適正に変化させるということになるので、不必要なX線を照射させることがなく、被ばく低減という点でも効果があります。
ただ、注意するポイントがあります。
CT-AECは位置決め写真を元にX線量を決めるという機能であるため、位置決め写真撮影時とその後の本検査時の撮影では位置や呼吸の深さが異なるなど、環境が変わることが起こると狙った画質を得られなくなってしまうことがあるのです。
まとめると
CT-AECには,以下の3つの働きがあります。
➀位置決めの画像から患者さんの体格を把握し,体の大きい人ではX線量を多く,小さい人では少なくして撮影する
➁ 体軸方向(Z軸)のX線吸収差を認識し,吸収の多いところと少ないところ(胸部と腹部の違いなど)の線量を変化させる働き
➂ 断層像のX線吸収差を認識し,線量を変調する働き
これら3つの働きから,照射するX線量を変化させるのがCT-AECです。
よって、現在のCT検査の被ばく線量は画質(画像ノイズ)によって決まるといっても過言ではありません。
画像ノイズが増えれば、本来、描出されるような病気もノイズに隠れてしまい、発見が遅れる可能性があるため、どの程度の画像ノイズであれば診断に影響しないかという判断によって決まるのです。
病気を絶対に見落としたくないと思い、画像ノイズを減らせば、それだけ患者さんの被ばく線量が増えることになるため、この関係性は非常に難しく、施設間でも異なることが多いです。
しかし、CT-AECを使うことで、患者さん一人ひとりに合ったX線量で検査を行うことが出来るため、不必要な被ばくを抑えるためにも、欠かせない機能といえるでしょう。