放射線を学ぶ上で絶対に避けては通れないのが相互作用です。
ただ、相互作用は荷電粒子線と非荷電粒子線とで内容が変わります。
相互作用の内容は何となく理解していても、それがどの放射線の種類で起こるのか混乱する方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回はその基本である光子と電子線の相互作用の違いについてまとめてみたいと思います。
ただ、相互作用の内容まで一つ一つまとめてしまうと長くなりすぎてしまうので、内容の違いだけに焦点を合わせて生きたいと思います。
スポンサーリンク
光子と電子線の相互作用の違いとは?
光子と電子線の相互作用は大きく分けると2つずつに分類することができます。
光子 ➡ 散乱と吸収
電子線 ➡ 散乱と放射
です。
どういうことか。
理解を深めるためにも、光子と電子線の性質から考えてみたいと思います。
光子は、光と粒子の性質を持った放射線です。(具体的にはX線やγ線)
放射線なので、光のように光子があればその場が明るくなるということはありませんが、実は目に見えないだけで光子が空気中や物質中をどうやって動いているのかというのは、光にとても似ているのです。
なので、懐中電灯を例に考えてみたいと思います。
当たり前かもしれませんが、懐中電灯のスイッチを入れると明かりが点いて暗闇を照らすことができます。
もっと具体的にいうと・・・発せられる光は、空気中を扇状に広がりながら離れた位置まで光を届けることができます。
しかし、光が届く距離には限界があります。
光が強ければ強いほど遠くまで光を届けることができますが、弱いほど光は遠くまで届かなくなります。
これは、懐中電灯から発せられる光が遠く離れるほどに弱まっていくという性質を持っているためです。(放射線では、これを減弱と呼びます。)
これは、最終的には光はなくなって遠くで懐中電灯が点いているのかさえわからなくなってしまうはずです。
この光が遠くまで弱まりながら進み、最終的になくなってしまうことを、光子では吸収ということになります。
実際には、光子は物質中に吸収されるとそのエネルギーを渡し、次の現象を引き起こしたりもしますがイメージ的にはこれで十分です。
では、散乱はどうなのか。
散乱は空気中の光が水中に入射するときを想像すると簡単です。
海やプールなどで潜って、水中から上を眺めたことはあるでしょうか。
太陽の光が拡散し、少し幻想的(個人の感覚によりますが)に見えるはずです。
この光の拡散は、太陽光が水中に入射するとその方向を変えて横に広がることが原因で起こることですが、光子も同様です。
水中に限らず、物質中に入射した光子は散乱によって、その方向を変え吸収されるまで先に進むことになります。
図にして少しまとめると以下のようになります。
一方、電子ではどうでしょうか。
電子線は光子と違い、荷電粒子というマイナスの電気的な性質を持っています。
そのため、磁石のようにプラスには引き寄せられたり、マイナスには反発するといったことが起こるのです。
これは、空気中よりも物質中でより鮮明です。
物質とは、極論、原子の集まりなので、原子核(プラス)、軌道電子(マイナス)の電気的な力が常に働いている状況にあるということができるのです。
これは、電子線の進行に影響を与えることになり引き寄せられたり、反発したりを繰り返すため何度も小さく進行方向を変え前に進むことになります。
この、何度も進行方向を変えながら進む状態を散乱です。
ただ、電子線はマイナスであり、原子核はプラスの性質を持つため、たまに原子核にプラスに大きく引き寄せられ、変化球のようにその進行を大きく変更することがあります。
この時、電子線は真っ直ぐ進むエネルギーを外に放出し、余分なエネルギーを放出し、結果それがX線となることがあります。
この相互作用が放射です。
電子線の相互作用を図にすると以下のようになります。
スポンサーリンク
相互作用の種類の違いとは?
光子と電子線の相互作用はどんな種類があり、2つのどちらに分けられるのでしょうか。
といっても、相互作用の内容はまた別の機会にまとめますので、名前だけ分けたいと思います。
・光子
散乱:干渉性散乱、コンプトン効果
吸収:光電効果、電子対生成、光核反応
それぞれ、起こる確率は物質の種類や光子エネルギーによって変化します。
また、相互作用の起こりやすさを断面積で表されます。
・電子線
散乱:弾性散乱、非弾性散乱
放射:制動放射
制動放射が起こる確率∝物質の原子番号(Z)の2乗
∝入射粒子の質量の逆数の2乗