CTで使う造影剤量は?

ct%e3%81%a7%e4%bd%bf%e3%81%86%e9%80%a0%e5%bd%b1%e5%89%a4%e9%87%8f%e3%81%af%ef%bc%9f-2 Info

最近のCT検査に置いて、造影剤は欠かせないものになっています。

 

血管系の病気や腫瘍の良性か悪性の判断にガンの転移の有無、手術前に血管走行の確認など用途は様々です。

 

でも、ふと疑問に思いませんか。

 

造影剤はみんな同じ量が使われて検査しているのか・・・と。

 

 

身体の大きい人もいれば、子どもようにちいさい人がいるようにどうやって調整されているのでしょうか?!
もし自分が検査されるとしたらどれくらい造影剤を注射されるのか不安になる方もいるのではないでしょうか。

 

実際、造影剤は人の体にとって普段は存在していない異物のため、少ない量で検査できるのであれば、患者さんへの負担も軽くなるでしょう。

 

いかに造影剤の投与量を減らせるのかがCT検査における検査技術の発展における研究課題の一つにもなっています。

 

そこで今回は、現在、どうやって造影剤量の決め方についてお話いたします。

スポンサーリンク

CT検査に使われる非イオン性造影剤

少しだけ、CT検査に使われる造影剤について触れておきたいと思います。

 

使われる造影剤は非イオン性ヨード造影剤と言われるものです。

 

ヨード造影剤と言われるものには、イオン性と非イオン性の二つがありますが、非イオン性はイオン性に比べて血液と等浸透圧に近く、副作用が起こる確率が格段に低くなったものです。
イオン性ヨード造影剤と非イオン性ヨード造影剤については以前にもまとめたので、よかったらそこで)

それでも、2~3%の割合で副作用は必ず起こってしまうものですが、以前に使われていたイオン性に比べれば、安全に使える薬剤といえます。

 

ただ、同じ非イオン性ヨード造影剤でも、造影剤内に溶けているヨードの含有量が異なるものが複数存在します。

 

つまり、濃度の濃い造影剤か濃度の薄い造影剤があるということです。

スポンサーリンク

濃度の違う造影剤の種類

といっても、それほど多くの濃度の違う造影剤があるわけではなく、CT検査時に血管内投与する造影剤だけを限定していえば、代表的な濃度は4種類です。

それが以下のものになります。

 

・300mg/ml

様々な会社で色々な名前で出回っています。

もっとも一般的で良く使われている濃度の造影剤です。

・320mg/ml

・350mg/ml

・370mg/ml

様々な造影剤がありますが、会社によって名称が違います。

病院がどの造影剤を使っているのかは、大人の事情によるところが大きいというか、契約次第です。

 

この造影剤の単位(mg/ml)は1ml中水に300㎎のヨードが溶けていることを表しています。

(元々ヨードは粉末状ですが、水によく溶けるのです。)

 

大半の施設では、300mg/mlまたは320mg/mlの100ml入ったシリンジが1人に一本ずつ使われています。

 

しかし、全員に対して100ml使われているわけではなく、100ml中何ml投与するか?というのが実際の投与量になるのです。

 

そもそも、同じシリンジを使用するということは、1人一本ずつになるのは、異なる患者さんに使うと感染症のリスクを高めるため行うことはありません。

造影剤量は体重によって決まる

では、造影剤量は何によって決まるのか。

 

これは、患者さんの体重によって決まります。(造影剤を使う検査の時には体重を聞かれることが多いのではないでしょうか。)

 

造影剤の投与量には施設間で考え方は異なるかもしれませんが、

 

ただ、腹部(特に肝臓の病変の評価)には、体重1kgあたりに600㎎I濃度(600㎎/kg)になる投与量が良好な結果を得られることを示した報告あるため、これを参考したいと思います。10kgなら6000mg/kgです。

 

わかりにくいので、順番に説明していきましょう。(最後には簡単な計算式もあるので大丈夫です。)

 

今回は、最も多くの施設で使われている300㎎/mlの造影剤を投与するときを考えてみることにします。

 

まずは、600㎎/kgとは、どこから来ているのかいうことですが、これは施設で決めている濃度です。放射線診断科の医師が診断に有用と思われる画像濃度を得るために決めていることですが、全国的にこの値が基準となっていることが多いです。

 

そして、この濃度を得るためには、300㎎/mlの造影剤を体重何kgの人に何ml投与すればいいのかを求める式があり、それが以下の式になります。

 

体重あたりのヨード濃度量={造影剤の濃度(㎎/ml)×注入量(ml)}/患者さんの体重(kg)

 

600㎎/kg={(300㎎/ml)×注入量(ml)}/患者さんの体重(kg)

 

これを注入量を求める式に直すと、

 

注入量(ml)={(600mg/kg)×体重(kg)}/300mg/ml=2×体重 (ml)

 

ここで、みなさんお気づきでしょうか?

 

造影剤の注入量は体重によって決まると言いましたが、体重の倍の量(ml)を入れれば、注入される造影剤量になるのです。

 

つまり、具体的にいうと、600㎎I/kgの濃度を得ようとすれば、300㎎/mlの造影剤を注入すると考えた時、

 

・30kgの人なら⇒60ml

・40kgの人なら⇒80ml

・50kgの人なら⇒100ml

・60kgの人なら⇒120ml

 

注入されるということです。

 

でも、一本の造影剤には100mlしかないので、実際には50kg以上の方には100mlと大まかに決まっていることが多いです。

 

それでも、体重が多い方(体格の大きい方)は造影剤が体内で薄くなりやすく、造影剤の効果が低くなるため、、どうしても必要な場合には、濃度の濃い(350mg/mlまたは370mg/ml)造影剤か150ml入ったシリンジのものがあるので、どちらかが使われることになります。

150ml入った造影剤の例。
他の造影剤シリンジより太いのがわかる。

忘れてはならない腎機能

造影剤は体重の倍の量(ml)を注入されるのが基本だと言いましたが、例外があります。

 

それは、患者さんの腎機能が良くない場合です。

 

この場合は、造影検査自体を止めるか投与する造影剤量を減らして検査します。

 

なぜ、腎機能がそれほど重要な要素になるのか。

 

それは、非イオン性ヨード造影剤は99%が腎臓から尿となって排出される薬剤です。

 

そのため、腎機能障害がある方に投与すると、造影剤が排出されず、腎臓にたまり続けることになり、腎不全など症状を悪化させるおそれがあります。

 

腎機能自体は血液検査によって測定できますが、その指標はCr(クレアチニン)値またはeGFR(推算糸球体濾過量)と呼ばれる二つになります。

 

Crでは1.5mg/dl以上の方、eGFRでは40ml/min/1.73m²以下の方は腎機能が著しく悪いため造影剤の使用は控えることが多いです。

また、Crが1.0以上1.5mh/dl未満、eGFRが40~50ml/min/1.73m²の方に関しても、造影検査を行う場合でも、通常より減量して投与し、腎臓への負担を軽減するように努められています。

 

減量の程度は施設間や患者さんの状態によって千差万別ですが、2~3割程度減量することはよくあります。まれに5割程度減量することもありますが、画像における造影効果も落ち、診断はしにくくなります。

Rate article