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ヨード造影剤のイオン性と非イオン性

今やヨード造影剤は、X線検査では欠かせないものになっています。   血管や臓器にできる病気をより正確に診断するためにとても有効な方法だからです。

 

しかし、以前のヨード造影剤は血管内に投与すると副作用が多く、使用しにくい薬剤でした。   そんなヨード造影剤も今では改良が進み、軽い副作用が起こる確率が3%、重篤な副作用が起こる確率となると1万人に4人ほどと言われおり、起こる確率は激減しました。

 

では、以前と今ではなにが違うのかお話したいと思います。   造影剤に興味がない人でも、病院で検査をすることになれば、高い確率で使うことになる薬剤です。

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2種類のヨード造影剤

さっそくですが、ヨード造影剤には2種類あります。(厳密にはもっとあるのですが、大きくわけると2種類です。)   それは、イオン性造影剤非イオン性造影剤です。

 

といっても、わかりにくいと思うので、   先ほど、以前に使われていた副作用の多かった造影剤がイオン性造影剤   今、血管内に投与するのに主要になっていて、副作用が少ないのが非イオン性造影剤です。

 

イオン性造影剤のことを以前に使われていた造影剤と表現しましたが、これは血管内に投与に関してのみであり、それ以外の検査では使われているのが現状です。

 

ただ、現在ではイオン性造影剤を血管内に投与する施設はほぼ皆無といえるでしょう。

 

では、イオン性造影剤と非イオン性造影剤ではなにが違うのでしょうか?   順番に見ていきたいと思います。

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イオン性造影剤とは?

イオン性造影剤の特徴は先にも述べましたが、血管内に投与したときに副作用が多いことです。 なぜこんなにも副作用が多いのか?

 

それは、イオン性造影剤が電荷を持つ、高浸透圧の溶液だからです。

 

具体的な理論まで言うと長くなり、難しくなるので少し簡単にまとめたいと思います。

 

イオン性造影剤は造影剤塩という塩を水に溶かし作られます。溶かした塩は液体中で、塩の分子として存在しますが、すぐに二つに分離して正電荷をもつ陽イオンと負電荷を持つ陰イオンの二つに分かれています。

 

電荷をもつ液体は、弱い電気を帯びており刺激が強いということになります。 そこで、電気を帯びている液体を体内に投与すると、どんなことが起こるか想像してみてください。

 

まず、体内の電気信号プロセス(心臓の動きや脳から脊髄への反射など)に影響を与えます。血管内に投与すれば、心臓に達したときに心臓の動きを制御する電気信号に影響し、不整脈を起こす恐れがありますし、脊髄内に投与されれば、脳からの電気信号に影響を与え、痙攣などを起こすことになります。

 

恐いのは電荷を持つだけではありません。

 

一つの塩の分子が陽イオンと陰イオンの2つの粒子に分離することはもう一つ厄介な事実を持っています。

 

それは、元々1つの分子を溶かしたはずが、2つに分離することで液体中の粒子の数が多くなるということです。

 

そして、造影剤の副作用は溶けた粒子の数が多いほど(浸透圧が高い)起こしやすいと報告されています。 浸透圧が高い薬剤が血管内に投与されると、造影剤が通過する際に体中の細胞からむりやり水分を集め、細胞の収縮や傷害を引き起こします。血管内にもとても負担のかかることで、時には血管にも障害をきたします。

 

赤ちゃんの肌のようにみずみずしい細胞がとても健康的だとすれば、水分を奪われた細胞は張りのない肌のようなものです。

 

それだけ、イオン性造影剤は負担の大きい薬剤だというのがわかっていただけると幸いです。

 

だた、副作用が頻発する血管内投与をされることはありませんが、他の検査ではイオン性造影剤は現在も使われています。

 

なぜなら、電荷と高い浸透圧による影響が少ない臓器では、造影効果も高く安全に使用できる安価な薬剤だからです。   主に、膀胱造影や胆嚢・胆管造影時に使われています。

非イオン性造影剤

造影剤の副作用の原因の多くは電荷(電気)と浸透圧だということでした。

 

そして、イオン性造影剤は副作用が多い造影剤だったのです。

 

では、一方の非イオン性造影剤はどうなのでしょうか?

非イオン性造影剤は、溶液中に電荷を持たないため刺激は少なく、体内の電気的プロセスに作用することはありません。

 

また、浸透圧も低いため、負担も軽くイオン性造影剤に比べ忍容性がかなり高く副作用が少ない安全な薬剤といえます。

 

その結果、非イオン性造影剤は値段が高いのに関わらず、イオン性造影剤にとって代わっていったのです。

 

ただ、非イオン性造影剤も血液に比べると若干浸透圧が高いといえるため、血管内に投与すると、熱感を感じる方がほとんどです。

 

それでも、投与5分後には収まることが多く、自然と回復するため問題ないといえます。(むしろ、血管内に造影剤がきちんと投与されているサインに使われるくらいです。)

 

また、ヨードが使われていることには変わりないため、ヨードアレルギーの人には使えないため多くはないものの、副作用を造影剤が引き起こす全て現象だと考えると、ゼロになることはありえないでしょう。。  

どうやって使い分けされているの?

非イオン性造影剤は安全な薬剤で、みながこっちを使えば問題ないのではないかと思ってしまいますが、値段が高い薬剤であり、適さない検査もあります。

 

そのため、イオン性造影剤を使っても問題なければ、イオン性造影剤を使う機会は多いといえるでしょう。

 

では、それぞれどんな時に使われているのでしょうか?

 

・イオン性造影剤 胆嚢・胆管造影、ドレーンチューブ造影、消化管穿孔が疑われバリウムが使えないときの消化管造影、尿路造影、膀胱造影など

膀胱造影の写真

・非イオン性造影剤 CTや血管造影検査など、血管内に投与が必要な造影検査 脊髄腔造影検査、嚥下造影(誤嚥しても安心の薬剤のため)、小児の消化管造影(イオン性造影剤は刺激が強く下痢になるため)

血管造影検査時