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MRI原理㉑:拡散強調画像とb値の関係とは?

拡散強調画像を撮像するときに設定するb値とは、拡散強調画像のコントラストを決定する因子の一つです。

 

しかし、b値とはなにか?という質問に答えられる人は少ないように感じます。

 

そこで、今回は拡散強調画像のコントラストがどのように決まっているのか、b値とは何かについてまとめてみたいと思います。

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拡散強調画像とは?

拡散強調画像とは、細胞内の肉眼ではわからないような極小さな(ミクロ)な拡散(動き)による信号の変化をあらわしたものです。

 

これだけでは理解するには難しいので、順序よく、この場合の拡散とはどんなものがどんな動きをするのかというを説明していきたいと思います。

 

この場合の拡散とは、身体の中に含まれる水のような分子がどの程度自由度をもって動けるのか、また、動くのであればどのくらいの距離を動いたのか意味しています。

 

そのことを踏まえ、改めて拡散強調画像という言葉の意味を考えてみると、分子がどの程度自由にたくさん動いたのかを各分子ごとの差を画像上に表したものであると考えることができます。

 

と、ここで終わってしまってはただの言葉の授業になってしまうので、もう少しだけ具体的な話をすることにしましょう。

 

分子とは、眼で見えないくらい小さな存在であるため、その存在する空間が大きければ大きいほど自由に、ランダムに動き回ることができます。空気中に含まれる分子が目に見えないところである程度自由に飛び回っているようにです。

 

この分子の動きは障害物となるようなものがない限り、常に起こっていることであり、空気だけでなく、水などに含まれる分子もそのような動きをしているのです。

 

そして、この分子の動きがどの程度あるのか、拡散しやすさというのを拡散係数Dで表しています。拡散係数Dの値が大きいほど、拡散を妨げられることはなく、動く距離大きくなっていることを表現しています。

 

ただ、人の体内で考えた場合、拡散が空気中ほど自由に大きく行われているのかというと実はそうではありません。

 

むしろ結構な制限がかかることになります。

 

なぜなら、組織を形成する細胞には細胞壁、細胞小器官、細胞間物質など多くの構造体を含んでいるので、ランダムな拡散に対しては障害物となってしまっているからです。

 

実際、この影響とはこれからお話する画像信号にも大きく関わってくることになります。それは、正常な場合であれ、異常な場合であれです。

 

では、拡散が画像の信号とどう関係しているのかさらに進めてみることにしましょう。

 

少し復習になりますが、MR画像とは、装置に入ることである程度揃っているプロトンの向きを変え、プロトンの位相を揃え、時間とともにズレる位相を再度、収束させることでエコー信号を得て、k空間なるものに埋め込んで、最後にフーリエ変換することで作られています。

 

そして、再収束させるとこ、プロトンの位相が完ぺきに揃うほどに得られる信号は強く、再収束してもプロトンの位相にズレが残ってしまっていると、信号が低下するという関係があります。

 

これは、拡散強調画像でも同様です。

 

拡散強調画像では、ここで、故意にプロトンの位相がズレたところで再収束をしようとしてみるとします。もしうまくいけば、強い信号を得られますが、うまくいかなかった場合、信号は低下するか、もしくはゼロになることになります。もうこれは、復習した内容ですが、MR信号を得るうえで大原則な関係といえます。

 

ただ、ここで注意が必要になってしまうのです。

 

それは、再収束できるプロトンは、再収束するまでの間にどこかに移動してしまわないものだけであるということです。

 

高い信号を得るためには、先ほどまで話していた拡散はプロトンをその場所から移動させてしまうため、逆効果となってしまうことになります。逆を言えば、拡散などでプロトンがその場所から離れることがなければ、再収束による高い信号を得られることになるのです。

 

なので、拡散が止まっているような脳梗塞の部位では高い信号が見られるのです。

 

では、何が起こっているのかもっと詳しく見てみることにしましょう。

 

まずここで確認いただきことは、拡散強調画像がどのようなシーケンスを使用し撮像されているのかということであり、それは、グラディエントエコーを使用したEPI(Echo Planar Imaging)だということです。

 

そこで、流れを確認する意味でも水で満たした容器を考えてみることにしましょう。そして、この陽気に、例えば左から右へ変化する傾斜磁場を与えます。その結果、磁場勾配に従い、プロトンは異なる周波数で歳差運動を行い、位相にはズレが起こります。そして、この時、右側よりも左側のプロトンの歳差運動の周波数は高くなっています。

 

そこで、プロトンの位相を再度そろえるために傾斜磁場を反転させ送信します。すると、プロトンの位相は傾斜磁場強度に従い反転し、次第に位相は再収束されていきます。この時に、高いエコー信号を得ることができるのです。

 

と、ここまでがグラディエントエコーシーケンスの復習ですが、ここで、また注意することがあるのです。

 

それは、この説明の際には、プロトンの拡散による影響が全く考慮されていないということです。

 

しかし、実際には水に含まれるプトロンは常に動き回っており、拡散はおこっています。これにより、2度目の反転された傾斜磁場がかかる時には違う場所に移動していて、その場所での傾斜磁場は1度目の傾斜磁場の強度と全く同じではないため、プロトンの位相は完全には再収束されていないのです。

 

それは、強すぎるのか弱すぎるのか、2度目の傾斜磁場が送信されたときにプロトンの居る場所によって異なりますが、いずれにしろ、完全な再収束が起こらないために、信号強度が低下してしまっているのです。

 

つまり、拡散という現象は、MR信号を低下させる要因であるのです。

 

では、この現象は、一般的なスピンエコー法などの場合には問題が起こらないのか。

 

その答えは、YESでもあり、NOでもあります。

 

なぜか。

 

それは、傾斜磁場の強度が重要となります。

 

1度目の傾斜磁場(位相を分散させる傾斜磁場)が弱かった場合、容器内で起こる位相のズレは非常に小さいものになります。そのため、場所によってプロトンの位相が異なっていることは事実であれ、その影響は軽微であり、その場合、最終的な信号強度もさほど変化しないのです。

 

つまり、弱い傾斜磁場を使用している限り、拡散による影響を考える必要がないことになります。また、別の言葉でいえば、拡散による影響を検出することができないともいえます。

 

一方、非常に強い傾斜磁場を使用している場合は違います。

 

この場合、信号に顕著に変化を与える、大きな位相のズレを起こすことになります。そして、もしこの顕著な変化が再収束の傾斜磁場によって相殺されず、位相ズレが起こっていれば、信号の総和に明らかに信号の損失が起こることになります。

 

つまり、強い傾斜磁場は拡散による影響を強調する効果があるのです。

 

ということは、少し最初に戻りますが、拡散による信号への影響を強調した画像である拡散強調画像には、強い傾斜磁場が使用されることになるのです。

 

 

そして、この傾斜磁場強度に関係あるのが、b値と言われる値になります。

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b値とは?

b値とは、MR信号への傾斜磁場の影響を表したもので、拡散に対する感度のものさし的存在です。単位はs/mm²。

 

なので、b値が高く成るほど、に拡散強調の度合いが強い画像となり、画像上では正常な拡散が起きている領域は暗く、拡散が低下した領域ではいつも明るくなっています。

 

b値の大きさは、主に傾斜磁場強度と傾斜磁場の持続時間によって決まります。

 

もっと順序よく説明していきましょう。

 

プロトンの拡散する距離が短いほど、位相の分散と再収束は傾斜磁場によって生じる位相シフトの差は小さくなります。極端に言うと、拡散が全くなければ、これらの傾斜磁場によって生じる位相差は完全に相殺することが出来ます。

 

つまり、拡散強調画像とは、

 

➀拡散係数D(分子の移動距離がどの程度あるのか表すもの)
➁傾斜磁場パルス強度

によって信号強度が変わり、コントラストを変化させることになります。

 

傾斜磁場に関しては、生じる位相シフトは傾斜磁場強度だけでなく、その持続時間にも影響されることになります。持続時間が長ければ、それだけ位相差は大きくなるのです。

 

また、2つの傾斜磁場の間の時間も重要です。

 

もしこの時間を延長させることになると、プロトン/水分子はより長い距離を移動することになります。そして、長い距離を移動するほど、経験する2度の磁場強度の際はより大きくなることになります。

 

これは、位相のズレが大きくなっていることも意味し、また不完全な再収束が起こりやすく、信号低下が起こりやすくなるのです。

 

このことを踏まえと、拡散強調画像の信号に影響する要因を見直すと、

➀傾斜磁場強度
➁傾斜磁場強度の持続時間
➂2つの傾斜磁場間の時間
➃拡散係数D

となるのです。

 

既に述べた通り、拡散強調画像には、強い傾斜磁場が必要です。傾斜磁場が強くなればなるほど、より多くの位相シフトが起こります。弱い傾斜磁場では、拡散による信号を変化を検出することができないためです。

 

実際には、傾斜磁場強度と傾斜磁場持続時間を選ぶことで拡散に対する感度を決定します。この両方の要因が組み合わさったのが、先ほど述べたb値です。

 

b値を増やすと、画像は拡散に対してより感度を増し、大きいb値ほど拡散によってMR信号強度が変化することになるのです。

 

そのため、b値を増やすことで、拡散が起こりやすい場所では信号強度は低下し、拡散が起こりにくい場所では強度が高くなります。これは、プロトンの位相ズレと再収束の関係によるものです。

 

逆に、b値がゼロのように小さくなると、拡散の影響を考慮しない画像となります。そのため、プロトンが多く含まれる水のようなものほど信号強度は高くなるのです。