今まで、大腸検査と言えば、バリウムの注腸検査と内視鏡検査が一般的です。
が、最近、CTC(CT Colonography)というCTで大腸検査を行うことが保健適用になり、検査を行う施設が増加傾向にあります。
CTC検査とはどういったものなのかお話したいと思います。
人間ドックでも行うことが出来る検査なので、参考いただければ幸いです。
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従来の大腸検査は?
注腸検査
肛門からチューブを挿入し、チューブからバリウムと空気を注入しつつ、体を回転させながら行う検査。
検査を受ける側は、お腹のふくらみによる痛みを感じながら行うこともある。
また、体を回転させながら行う検査のため、高齢の方には辛い検査になる。
検査時間は個人差があるが、20~25分程度。
詳しくは、以前注腸検査についてまとめたので参考ください。
大腸内視鏡検査
肛門から内視鏡を挿入して、大腸全体の内部を調べる検査。がんやポリープなどの病変が見つかった場合には色素をまいたり、ズームアップして病変表面の模様を観察したりして、より詳細な診断を行う。そのため前処置(腸の洗浄)が十分でない場合には詳細な検査が難しくなる。必要に応じて粘膜の一部を小さく採取して、組織が良性か悪性かを顕微鏡で調べる検査を行うこともある。
カメラに死角があることや、体への負担、腸管壁に内視鏡が当たるなどすると、痛みを感じたり、腸管に傷つける恐れがあるなどの短所もある。
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CTC検査とは?
CTC検査は肛門からチューブを挿入して、炭酸ガスを注入し大腸全体を十分に拡張させた状態でCT撮影を行います。
CTで得られた画像から3Dの仮想内視鏡画像という、あたかも内視鏡検査を行ったような大腸画像を作成し、観察と診断を行います。
検査中は大腸が拡張することによるお腹の張りに痛みを感じることはありますが、バリウムを使った注腸検査のように疲れることもなく、内視鏡検査のように大腸を傷つける恐れがないため、比較的楽で安全な検査といえるかもしれません。
前処置
大腸検査の宿命というべきですが、必ず大腸を空っぽにする必要があります。でないと、良好な検査を行うことができず病気を発見することができません。
ただ、注腸検査や内視鏡検査のように、どの施設でも決まった方法があるわけではなく、施設によって方法が異なることがあります。
よって、代表的な3種類を紹介したいと思います。
・ブラウン変法
注腸X線検査で行われる方法。クエン酸マグネシウム高張液という下剤を飲んでもらい、体内に残る便に水分を含ませ、軟便にさせることで排泄させる。大腸内に固形の小さな残差が残る場合があるが、患者さんの負担は軽い。
・polyethyleneglycol法-通称・PEG法-
大腸内視鏡検査で行われる方法。2リットル近くの腸管洗浄液により、大腸内に残る便を強制的に排出する。固形の便は残りにくいが、飲んだ液体が大腸内に残る場合がある。飲用量が多いため、前処置中に辛くなる患者さんも多い。
・fecal tagging法
CTC検査では、大腸内の残便や残液が診断に影響する場合があります。そのため、上記の2つの方法では、残便による偽病変や残液による腸管内の観察範囲を少なくすることに繋がる恐れがあり、この方法が開発されました。
fecal tagging法は経口造影剤を用いて、大腸内の残液や残便を標識し、病変と区別する方法。具体的には、PEG法の延長にあるような方法であり、2リットルの腸管洗浄液のうち、1400~1500ml飲用後、残りの液体に造影剤を加えて最後まで飲みほす方法です。造影剤は苦いことが多く、飲用量が多いことに加えて、患者さんの負担が多い。
検査手順
➀鎮痙剤を筋肉注射する。
腸管の動きを抑え良好な画像を得るためと、ガス注入時の違和感を軽減するのが目的です。
➁CT装置の寝台に左側を下に横向きに寝る。
➂直腸内を触診。
肛門病変の有無をチェック。
➃ガス注入用のチューブを肛門から挿入。
➄空気または二酸化炭素を大腸内に注入する。
二酸化炭素のほうが体内で吸収されるため、お腹の痛みが少ないと言われており、検査後も楽になるのが早いようです。
➅CTの位置決め写真を撮影し、大腸の拡張具合を確認。
➆仰向けでCT撮影を行う。
➇再び、左を下に横向きになり、追加でガスを注入。
➈うつ伏せでCT撮影を行う。
➉検査終了。
検査時間は15分程度です。
仰向けとうつ伏せの2体位でCT撮影を行うことで、腸管描出不良部分を補完し盲点をなくすこと、偽病変に見える残便を移動させることで、診断能を向上させることが目的です。
その代り、X線による被ばくは増えることになります。
検査後
検査後は、おならを出しくなることが多く、一度トイレに向かい、お腹溜まったガスを出したほうがいいでしょう。
一緒に大腸内に残っていた便が出ることもあるようです。
それ以外は、検査終了後から制限はなく、普段通りの生活に戻ることができます。
注腸X線検査のように、下剤を飲んで、バリウムを排泄する必要もありませんし、鎮静剤を使う大腸内視鏡検査のように検査後一時間近く安静にしている必要もありません。
そういった意味でも、負担が軽い検査と言えるかもしれません。
CTC検査の利点と欠点
CTC検査は注腸X線検査や内視鏡検査に比べて、侵襲性が低く、検査による合併症が起こる心配もないため、苦痛も少ないとされています。
また、技術者によって差が出る他の2つの検査とは違い、誰が行っても同様な検査結果を得られやすいため再現性にも優れています。
また、大腸以外の病変を一緒に発見することもできるという多くの利点があります。
が、一方では、被ばく量が多く、平坦な病気や小さなポリープなど発見できないという欠点もあります。
そのため、
どんな小さな病気も見逃してほしくない!!
被ばくをしたくない!!
と思う方に抵抗のある検査と言えるかもしれません。
検査比較表
他の大腸検査との比較表を作ってみましたので参考ください。
検査名 | CTC(CT colonography)検査 | 大腸内視鏡検査 | 注腸X線検査 |
---|---|---|---|
長所 | ・検査が比較的短時間。 ・苦痛が少ない。 ・大腸狭窄など内視鏡挿入が困難な場合も検査が行なえる。 ・臨床上問題とされる6mm以上のポリープの診断能が確立されている。 ・大腸穿孔や出血など合併症が起こることがない。 ・他の臓器の情報が得られる ・再現性に優れている。 ・病変の位置が正確にわかる。 |
・直接観察できるので、平坦な病気や小さなポリープの発見も可能。(病変の検出能が高い) ・病変があった時に組織を採取し、より詳細な検査ができる。 ・腸液が残っていても吸引しながら検査できる。 ・腸内の色の変化を見ることができる。 |
・大腸全体の把握が可能。 ・CTCより画質がよく、大腸の粘膜面まで観察できる。 ・残便が残っていても、移動させることで、偽陽性を減らすことが出来る。 ・大腸の動きを観察できる。 |
短所 | ・平坦な腫瘍や小さなポリープなどの病変が検出しにくい。 ・病変の色や固さの情報が得られない。 ・組織検査ができない ・被曝がある。 ・前処置がうまくできていない場合には、正確な検査が困難 |
・検査時に苦痛を伴うことが多い。 ・ひだの裏側などカメラの死角がある。 ・狭窄部位があれば検査ができない。 ・大腸を内視鏡で傷つけることがある。 ・客観的な観察に向かない。 ・前処置がうまく出来ていない場合には、正確な検査が困難 |
・平坦な病気が発見できない。 ・S状結腸など重なりが多いところにできる病気の検出率が低い。 ・体を回転させながら検査するため疲れる。 ・検査後も下剤を飲む必要がある。 ・腸内に空気が多量に入れるため、痛みがあることがある。 ・被ばくがある。 ・前処置がうまくできたいないと正確な検査ができない。 |
被ばく線量
CTC検査では、撮影時に使うX線量が施設によって異なることが多いです。
その理由は、大腸以外の病気を見つけられるという検査の特性に関係していると思われます。
それでも、現在のCT装置は被ばく低減の技術が進んでいるため、一回ごとの検査の被ばく線量は抑えられていることが多いです。
そのため、CTC検査では従来の腹部CT検査の被ばく線量と大差はないといえるでしょう。
日本診療放射線技師会のHPにある、腹部CT検査の医療被ばくである20mGyが目安となると考えられます。
もし検査を受けることがあれば、その施設に聞いてみるといいでしょう。