CT画像には装置や金属など様々な要因によって、偽の異常所見(アーチファクト)が現れることがあります。
アーチファクトを覚えることは、画像の正常と異常の違いを理解するうえでも重要であるため、国家試験でも必ずと言っていいほど出題頻度の高い内容です。
そこで、代表的なCT画像のアーチファクトをまとめてみました。
これ以外のアーチファクトも沢山ありますが、出題頻度は低いので割愛しました。
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ビームハードニングアーチファクト
【現象と原因】
照射されたX線質が相対的に硬くなることで起こるアーチファクトです。
そもそも、CT撮影時に使用されるX線は連続エネルギーと呼ばれるものです。
連続エネルギーX線とは、高いエネルギーから低いエネルギーまで成分を連続的に含んでいるX線のことです。CT撮影ではこの連続X線を患者さんに照射し検出器まで届いたX線を解析して画像を作成していることになります。
ただ、ここで問題があります。
それは、X線のエネルギーが単一でないということは、患者さんを透過し、検出器到達するX線の成分が安定しないということです。
X線は患者さんを透過する際、骨や臓器など様々な構造によって吸収されることになります。
これは、低エネルギーX線ほど顕著であるため、X線吸収の原理に従い、長い距離を通過するほどに、密度の高い物質を通過するほど、はたまた原子番号が高い物質を通過するほど、吸収されやすくなります。
結果、低エネルギー成分のX線は患者さんの体内で吸収され高エネルギーのX線だけが残ることになるのです。
この現象は、照射されたX線の平均エネルギーに変化を与えることになります。
どのような変化か?
それは照射された連続X線のエネルギーが照射時から比べて相対的に高くなることです。
どういうことか?
例えば、照射された当初のX線が120kVを最大とし40kVまでの連続したエネルギーを含んだものとします。この時、単純に平均エネルギーは、80kVとなります。(実際にはエネルギー分布は偏っているため、もっと低くなります)
しかし、X線が患者さんを透過する際には低エネルギーX線ほど吸収されやすいため、照射されたX線の最低エネルギーは40kVから60kVになってしまいます。すると、X線エネルギーの平均値を考えた場合、120kVを最大に60kVまで含んだものとなるため平均は90kVとなるのです。
つまり、照射されたばかりのX線に比べ患者さんを透過している際のX線は低エネルギー成分が吸収されなくなることでその平均エネルギーは相対的に高くなっているのです。
では、X線のエネルギーが変化することは画像にどのような影響をもたらすのでしょうか。
その影響がビームハードニング効果になります。
X線はエネルギーが高いほど透過性が強く、低いほど透過性が弱い性質をもっています。
そのため、平均エネルギーの低かった照射当初のX線は透過性が弱い低エネルギー成分を含むため構造の微小な変化にも影響されやすく、吸収と透過を繰り返すことになります。
一方、平均エネルギーの高いX線は透過性の強い高エネルギー成分だけを含むために吸収が起こりにくく、構造の微細な変化に影響されることなく、透過することになります。
これは、戦車とゴーカートでも例えることが可能です。ゴーカートのような小さくパワーのない乗り物の場合、小さな石でもあれば強く車体が揺れたり跳ねたりしますが、戦車は小さな石があっても存在に気づかないほど影響なく進むことができます。
同様に、低エネルギーX線は微細な物質の変化にも影響されその情報を得ることもできます。逆に高エネルギーのX線はX線が透過しにくい物質があっても、透過してしまうため情報を得にくいのです。
この影響により、X線吸収が起こり、平均エネルギーが高くなりやすい構造物の内側に行くほど情報が得にくくなり、得結果として画像には黒くなって描出されることになります。
この影響が顕著に表れるとされているのが、頭部や肩、骨盤内など骨に囲まれた領域の撮影時とされています。
骨は原子番号が高く、X線吸収が起こりやすい物質です。そのため、臓器にX線が到達するまえに低エネルギー成分が吸収されてしまい、臓器の情報を得るX線は微細な構造に影響されにくい高エネルギーX線だけになってしまうのです。
結果、骨に囲まれた臓器は囲まれていない臓器に比べ、微細な情報が得られにくくなり、画像濃度に影響を与えることになります。
このX線のエネルギーの変化が画像濃度にもたらす変化がビームハードニング効果と呼ばれるのです。
【対策】
このアーチファクトの対策には補正データを用いて補正を行うのが一般的です。
画像フィルター(再構成関数)に含まれていることもありますが、得られたX線情報がビームハードニング効果による影響を受けているといるという前提で画像を再構成するといった方法です。
またビームハードニングアーチファクトといえば、必ず問われるのはキャッピングとカッピングです。
どちらも補正に関わる現象なので覚えとくといいでしょう。
では、どういった現象なのでしょう?!
・「キャッピング」
水ファントムのような本来均一なCT値を示す物体を撮影したときに、周辺に比べ中心部のCT値が上昇する現象。
・「カッピング」
キャンピングとは逆の現象。水ファントムのような本来均一なCT値を示す物体を撮影したときに、周辺に比べ中心部のCT値が低下する現象。
【画像】
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リング状アーチファクト
【現象と原因】
X線を受け取る検出器が故障した場合に起こるアーチファクトです。
故障した検出器やキャリブレーション不良によって発生するのが特徴です。
【対策】
検出器の故障の場合は、医療機器メーカーによる検出器の修理、交換が必要です。
【画像】
メタルアーチファクト
【現象と原因】
撮像範囲内に金属など、X線の吸収が非常に高い物質が被写体内に存在した場合に起こるアーチファクトです。
吸収が高い部分を透過したX線に対する検出器の出力が不正確な値になるため、投影データが不完全となる。
単純に金属などX線吸収が高い物質がある場合には、その部分の情報を正確に取得できないため、画像として抜けたように表現されると考えても間違いではありません。
X線を使用した検査である以上、金属など原子番号や密度の高い物質は天敵なのです。
【対策】
取り外せる金属類は検査前に外してもらう。
アーチファクト補正用のソフトの使用。
【画像】
モーションアーチファクト
【現象と原因】
撮影中の患者さんの体動や心臓など常に動いている臓器によるアーチファクト。
【対策】
患者さんの協力が一番。(しかし、出来ない場合も多い。)
心臓へのアーチファクトは心電図を用いた心電図同期撮影を行う。
腸管の動きに関しては、ブスコパンの使用や撮影時間の短縮にて対応。
【画像】
パーシャルボリュームアーチファクト
【現象と原因】
パーシャルボリュームアーチファクトは、厚いスライスで構造が複雑に変化する部位でストリーク状となって現れる。
以前、スライス厚についてまとめてみたので、参照ください。
【対策】
できるだけ薄いスライスで再構成を行う。
ピクセルサイズを小さくする。