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消化管検査でのバリウムとヨード造影剤

バリウム検査をはじめとする食道や胃、腸のような消化管検査ではその目的によって、造影剤の種類を変える必要があります。

 

造影剤がどのようにして、なんで使い分けられているのか紹介したいと思います。

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バリウムの役割

バリウムはもっとも一般的で有名な造影剤の一つです。

 

バリウムは食道、胃、小腸、大腸とすべての消化管の検査に使われています。

 

なぜなら、造影剤の中で最も安く、レントゲンに写りやすい。また、体内に吸収されないため、副作用が少ない。そのうえ、消化管の粘膜まで詳しく観察できるためです。
レントゲンを使った消化管検査において、バリウムが最もガンや潰瘍、炎症反応などの病気を発見できやすい造影剤なのです。

 

そのため、とても歴史が深い検査で代替えが多く考えられているのにかかわず、バリウムほどの高い精度で病気の評価ができず、未だに胃や大腸のバリウム検査がなくならずにいるのです。

 

しかし、詳細に消化管を観察できる造影剤である一方で、体内にまったく吸収されないため、便として排泄できない場合には、消化管穿孔(消化管に穴が開く)や腸閉塞
(消化管にバリウムが詰まる)を起こす危険性があります。

このリスクを回避するため、下剤と水分を摂って排便を促しているのですが、それでも消化管穿孔の恐れや消化管のどこかに極度に狭い部位がある場合には使用が控えられます。

 

また、誤嚥(飲み込んだものが食道や胃に行かず、気管に入ってしまうこと)しやすい人や消化管に穴が開いている恐れがある場合は吸収されずに体内に残ってしまう危険性があるために使うことができません。

 

誤嚥をすると、誤嚥性肺炎や肺肉芽腫を引き起こす恐れがあり、穴が開いた消化管からバリウムが大量にでてしまった場合には、それが原因で腹膜炎になる恐れがありますし、ほかの場合にも最悪手術をして体内から取り出す必要があります。

 

さらに、バリウムは緊急手術が必要な症状がある場合の、事前の検査に向かないとも言われています。(バリウム腸などに残っていると手術時に邪魔になる)

 

それでも、誤嚥や消化管穿孔の恐れ、緊急を要することがあっても、その形態や機能を調べる検査は必要です。

 

そんな場合、どうすればいいのでしょうか?

 

答えは簡単です。バリウムを使わず、体内に漏れても吸収される造影剤を使えばいいのです。

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ガストログラフィン(イオン性ヨード造影剤)

そんなわけで、消化管検査において第2の選択肢になる造影剤を紹介します。

 

ガストログラフィンというと製品名になるのですが、一般的によく使われる造影剤の一つなので、紹介いたします。

 

ガストログラフィンはイオン性のヨード造影剤のことです。

 

バリウムよりは消化管における造影効果は低いですが、バリウムが使えないような病気を持っている方でも検査を行うことができる造影剤です。

 

具体的にどんな場合に使えるのでしょうか?以下に箇条書きしたいと思います。

 

ⅰ.消化管に狭窄があるとき
ⅱ.急性の出血があるとき
ⅲ.消化器潰瘍、憩室が原因で穿孔の恐れがあるとき
ⅳ.その他、外科手術を要する急性症状時
ⅴ.胃及び腸の切除後(穿孔の危険や縫合不全がある恐れがある)
ⅵ.内視鏡検査実施前の異物および腫瘍の造影(バリウムだと内視鏡時に邪魔になる)

 

こういうと、バリウムより汎用性があって使いやすいように感じるガストログラフィンですが、問題もあります。ざっと以下の通りです。

 

ⅰ.消化管における造影効果が低く、ガンなど粘膜面にできる病気の発見には向いていない。

ⅱ.イオン性ヨード造影剤のため、ヨードアレルギーの人には使えないこと。

ⅲ.浸透圧が高いため、飲むと下痢を起こすこと。(検査時ガストログラフィーを飲んで、検査ついでに下剤の代用にする場合もあります。)

ⅳ.誤嚥すると、肺水腫を引き起こす恐れがあること

 

特にⅳに注目すると、誤嚥を引き起こす恐れがある人には、ガストログラフィンもバリウムも使えないことになります。

 

また、食道がんの手術後には、食道の縫合不全がないかチェックする必要があるのですが、縫合不全があった場合には、造影剤が気管に流入してしまいます。(胃や腸の縫合不全の場合はおなかの中に流入しますが、体内で吸収されるため大丈夫)

 

つまり誤嚥した状態と同じになり、肺水腫を引き起こす恐れがあるのです。

 

では、誤嚥や食道がんの手術後の縫合不全のチェックにはどんな造影剤を使えばいいのでしょうか?

 

非イオン性造影剤の役割

それが最終手段ともいえる、非イオン性ヨード造影剤です。

 

この造影剤は血管内投与に多く使われる造影剤ですが、消化管の検査時にも使われることがあります。

 

といっても、バリウムやガストログラフィンで検査するにはリスクが高いといわれる、誤嚥や食道の縫合不全の疑いがある場合がほとんどです。

 

非イオン性ヨード造影剤はバリウムやガストログラフィンに比べて、造影効果が低く、詳細な消化管の検査には向きません。

 

しかし、多少の誤嚥や食道の縫合不全が原因で気管に造影剤が流入するようなことになっても、肺水腫になる危険性は低いといえます。

 

そのため、誤嚥や縫合不全の有無を調べるだけの検査であれば、最も安全な造影剤といえることでしょう。

 

また、場合によっては消化管検査に用いる造影剤の中で最も体への負担が少ないため、小さな子供に使われることも多いようです。(血管内投与の場合は、負担は大きくなる)