MRI検査が普及し始めてから約30年、急速に広まり今では欠かせない検査になっているためか国家試験にもMRIに関する問題が多いように感じます。
これは、特に画像問題で多く見られているような印象を受けるので、何回かに分けてその対策になるようなものを載せていきたいと思います。
今回は、MRI画像におけるアーチファクト、つまり人為的や工学的に作り上げられる偽の像について実際に国家試験に出題されたものを中心にまとめてみます。
MRI検査では画像に関わる要因が多くアーチファクト出現しやすい検査のため、就職後も重要になるためしっかりと覚えちゃうことをおススメします。
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MRIの代表的なアーチファクト
本当に多いMRI検査のアーチファクト!!
まず、その種類を上げてみると・・・
➀画像処理アーチファクト
a)エイリアシング(折り返し)
b)化学シフト
C)打ち切り
d)部分容積
➁患者さんによるアーチファクト
a)体動
b)魔法角
➂RF(radio frequency)によるアーチファクト
a)クロストーク
b)ジッパー
c)RFフィードスルー
d)RF雑音
➃外磁場によるアーチファクト
a)磁場の不均一
➄磁化率アーチファクト
a)反磁性、常磁性、強磁性
b)金属
➅傾斜磁場によるアーチファクト
a)渦電流
b)非線形性
c)幾何学的歪み
➆データ誤差
➇流れに関するアーチファクト
といくつあるんだと思うほどとにかく多い!!
そして、国家試験までに全部覚えるのは困難というか無理でしょう。
他の科目の勉強もあるのですから、なおさです。
でも、国家試験を10年分くらい見直しても、上で赤にして示したアーチファクト画像を繰り返し載せて問題内容だけを変えているのが目立ちますので、対策は簡単かもしれません。(もしかしたら、臨床で特に多く見られるのに限定しようとしているのかもしれませんね。)
実際に出題された画像から対策してみましょう。
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エイリアシング(折り返しアーチファクト)
大学の授業によっては、エイリアシングというより折り返しアーチファクトという言葉で覚えている人も多いのではないでしょうか。
そして、国家試験でも高い出題率を占めているように思えます。
実際の画像を下に載せてみましょう。
みなさんは、これを見てなにが起こっているかわかりますか?
それぞれの画像の右と左に反対側のものが写りこんできているのです。
細かい原理や説明は省きますが、FOV(観察視野)の外にかかる傾斜磁場による認識誤差によるものが原因です。
本来画像の外にある構造物が、反対側の画像の中に写るのが折り返しアーチファクトです。
この画像は、診断にも影響することがあるので、写らない二様にするか診断に影響がないようにするかなにかしらの対処方法が必要です。
よって、国家試験でもその対処方法が聞かれることが多いので、簡単にまとめてみたいと思います。
➀表面コイルを使用する
このアーチファクトを出現させない最も簡単な方法は、FOV外にある構造物からの信号を受信しないこと、つまり、MRI装置に認識できないようにすることです。
患者さん全体を覆うような大きな送受信コイルではなく、FOV内の一部だけを覆うようなコイルを使えば、折り返しアーチファクトが生じることはありません。
➁FOVを広げる
折り返しアーチファクトはFOVを狭めることで生じるものです。なので、FOVを2倍程度に広げれば、折り返した構造物により、画像の影響は受けないことになります。
ただし、FOVを広げると画像内の臓器や病気の区別がつきにくくなります。これを空間分解能が低下すると言います。
そのため、空間分解能を低下させないためには、画素数を増やすか、傾斜磁場を弱くしなければならない。
➂過剰サンプリング法(2種類)
a)周波数過剰サンプリング法
周波数エンコード方向におけるサンプリング不足による折り返しアーチファクトが除去できる。
b)位相過剰サンプリング法
FOVを2倍にして、最終的な画像表示のときに不必要な部分を捨てて表示する。
メーカによって、no phase wrap(NPW)とも呼ばれる。
ただ、この方法は撮影時間の延長に繋がる。
➃飽和パルス
FOVの外からの信号を飽和させて、黒くしてしまう方法。
体動
まず、目のまばたきや体を動かすなど外面的な動きも含まれますが、それだけではなく、血液の流れや消化管の蠕動なども動きに含まれることを認識する必要があります。
そして、このアーチファクトの特徴は、主に二つです。
➀位相エンコード方向(決まった方向)に現れる。
➁等間隔に規則的に現れる。
と、ここまでを押さえて、実際に出題された国家試験問題画像をみると・・・
矢印の部分は動脈の拍動によって、動脈が上や下に等間隔に偽像となって現れています。
つまり、血流によるアーチファクトというのが答えになる画像でした。
となると、血流以外の動きによるアーチファクトも押さえておきたいところです。
ここからは、色々な動きのアーチファクト画像を載せておきます。
➀撮影時、患者さんが動いたことによるもの
➁眼球運動によるアーチファクト
➂脳脊髄液からのアーチファクト
➃呼吸によるもの
対処方法も聞かれるかもしれませんので、主な対処方法も挙げておきます。
➀血液など、流入してくるプロトンに飽和パルスをかける
➁TR(繰り返し時間),Ny(位相エンコード数),NEX(加算回数)の増加(撮像時間の延長)
➡大動脈などの周期的な動きによるゴーストアーチファクトは(TR)(Ny)(NEX)/T(motion)=ゴースト間隔(ピクセル数)によって表せられます。さらにここにピクセル径を乗じるとゴースト間隔が距離で表現されます。つまり、上記3つの要素を増加させることでゴーストアーチファクトの間隔が長くなります。結果として画像上のゴーストアーチファクトが減ることになります。
➂位相と周波数エンコード方向を交換する。(アーチファクトの出現方向を変える)
➃心拍や呼吸同期撮影。
➄流速補正法
➅患者さんに動かないように指示する。
➆鎮静剤など薬の使用。
➇腸管の蠕動が影響する場合は、グルカゴンを使用。
状況に応じて、以上の方法を使い分けて対処する。
磁化率(金属)
磁化率アーチファクトとは、組織/空気、組織/脂肪、組織/金属といったように、磁化率の異なる境界に生じるものです。
※磁化率とは物質の磁化の難度を表すもので、磁石にくっつきやすいものほど強い。
磁化率の違いが、MRI装置内で磁場の歪みを生み、画像の歪みの原因になります。
その例で多いのが、入れ歯やアイシャドー、金属クリップなどです。
このアーチファクトの特徴は、撮像シーケンスによって程度が異なることです。
EPI法やGRE法など、磁場の不均一を利用するような撮影法では特に顕著に現れます。
そして、T2強調FSE法など、180°パルスを繰り返し使う撮像法では、影響が少なくなります。
対処法は、原因となる金属物を外すことと磁化率アーチファクトに強い撮像法を使用して行うことです。
それでも、完全に影響をなくすことは難しいといえます。