「X線を使った検査は被ばくをするだから、何回も何回も頻繁に撮影されたくない!!」と思うのは、当然です!
さらに、一度の検査で何枚も撮影し、また毎日撮影するとなれば尚のことでしょう。では、なぜ何枚も一度に撮影する必要があるのでしょうか。大きな理由は二つです。順番に見ていきましょう。
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2次元画像から3次元情報を得る
題名にもあるようにレントゲン画像は2次元の画像です。に、対して人は3次元のもので、当然病気やケガは3次元的に起こります。
病気でも、ボール状のものもあれば、もやっとボールのようなギザギザした形のものと立体的に発病し、ケガもぽきっと横に折れて骨折することもあれば、縦に割れるように骨折することもあります。
それでも、レントゲン写真では2次元でしか表現することができません。とすると、3次元のものを2次元で表現するには限界がでてきてしまうのです。
どのような限界かというと・・・それは、2次元だと、すべて平面上で表されるため、奥行きがわからないということです。つまり、一方向からの撮影では、立体的な形や位置を理解できないのです。
ちょっと、理解しにくいので、一般的な写真で考えてみましょう。電車を真正面から撮影すると、その後ろには何車両繋がっているのか正確にはわかりません。そのため、どれくらい長い車両になっているのかわかるためには横や斜めから撮影した写真が必要になります。
同様に、胸のレントゲンを正面から撮影したときに病気が見つかっても、その病気が前側にあるのか背中側にあるのか特定することはできません。
また、骨折の場合にも骨折した骨が前方にズレているのか後方にズレているのか診断がつきません。診断できない状態で、骨の整復を行おうとしても正確な位置に戻すことはできないでしょう。
2次元画像から3次元的な理解をするためにと思い、レントゲンを撮影する!!そうやって、撮影していくうちに、結果的に病気やケガの方向、位置を正確に診断するために何度もレントゲンを撮影することになるのです。(正確には前もって、どんな方向から撮影した画像が必要か判断します)
そのほかに、位置を特定する以外にも、病気の見落としを防ぐ目的もあります。
例えば、病気が骨の後ろに存在している場合です。レントゲン画像では骨は白く写りますが、骨と後ろなど重なる位置に他の白いものや灰色の病気があっても骨の白い濃度に隠れてしまい、病気を見落とす原因となります。そこで、横から骨の裏を観察することで、病気の有無を判断できるのです。
目の前に壁が立ちふさがっていると正面からみても壁の向こう側は見えないけども、横からみれば、壁の裏側をみることができるのです。
多方向から撮影することで、病気の見落としを防ぎ、病気やケガを立体的に把握することができるため、よりよい治療に結びつくのです。
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経過観察のため
毎日撮影するのは入院患者さん以外にほぼいないと思われます。でも、入院するほどでも、なぜこう毎日、撮影する必要があるのでしょうか?
例えば、大きな手術をすると、胸やお腹にドレーンというチューブが体内に挿入されることがあります。
そのドレーンチューブは、手術後の状態をより早く直すすためや、体内に悪いものが溜まらないために挿入しているものですが、身体を動かした拍子に抜ける場合もあります。チューブの位置がズレていないか、抜けていないのか確認に撮影を行います。
こういったことの他にも、入院中には毎日の変化が重要になります。
見た目の体調だけでなく、画像上の変化を観ることで、回復にむかっているのか、はたまた、よくない方向に向かってしまっているのか、客観的に判断できるのです。
こうして、毎日レントゲンを撮影する必要がでてくるのです。
何回も撮影して被ばくは大丈夫なの?
レントゲンと言えば、放射線をつかって撮影しているということで、やはり気になるのは被ばくですよね。
医療被ばくの観点で言えば、被ばくすることより、診療上有用な情報が得られることが重要だと考えられることで検査を行っており、有用な情報を得ることができるならば、具体的な被ばく量には制限はありません。
といっても、最近は被ばくへの関心も高まっており、被ばく量を見直す動きが強くなっていることと、装置も以前の装置に比べ、放射線量を減らしても今までと同じような画像を得ることが可能になり、実際に投入されてきています。
これが理由なるからはわかりませんが、ただどの病院も被ばくを減らす努力をしているのは確かです。
そして、一度に何枚もレントゲンを撮ることで、被ばくを心配されても、その後の病気の発病が被ばくに関連しているのかという結びつけは難しいといえるでしょう。
参考に日本放射線技師会が出している、被ばく線量低減目標値を載せたいと思います。