放射線技師をという仕事をしていると、必ず聞かれるのが
「被ばくしなの?」や「被ばくして大丈夫?」
ということです。心配してくれる優しい言葉なのですが、きっと思われているよりも被ばくをしない職業です。
被ばくに関心が高まる以前から患者さんと医療従事者の被ばくを減らすために防護措置を行っているからです。
ただ、まったく被ばくしないというわけでもなく、業務内容や状況によっては、直接、X線を照射されるわけではないですが、被ばくすることもあり、無視できる問題ではありません。
ということで、実際に、病院の職員たちが行っている被ばくに対する対策を紹介したいと思います。
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職業被ばく限度
被ばくを心配する方たちにとって不安になるようなことですが、被ばくによって診断や治療にもたらされるメリットが被ばくによるデメリットよりも勝ると考えられた場合の医療被ばくには制限がありません。
全然考慮されないとことはないのですが、極端な話、診療上必要だとされれば、いくらでも被ばくが増えても法律上問題はないということです。
しかし、患者さんへの医療被ばくとは違い、放射線に関わる業務に携わる人(職業人)は、常に自分が浴びた線量を管理することが義務付けられています。
それは、明確な数値で制限があるので、先ずはそれを紹介します。
正直、この線量限度を超えるような被ばくをする医療従事者は誰もいません。
IVR(インターベンショナルラジオロジー)や透視検査(バリウム検査)に携わる医師や放射線技師は放射線が出ている環境に身を置くことが多いため、必然的に被ばく量が多くなる傾向にありますが、年間10mSv被ばくしたら、「多いなっ!!」とビックリされるほどです。
大半の医師や技師は月に0.01~0.1mSv被ばくするかしないかです。
と考えると、被ばく線量限度がどれだけ高い値に設定されているのかがわかると思います。
不安で被ばく線量を測るバッチを付けようと思う医療従事者もいますが、値を見て、「意外とない!!」となることのほうが多いようです。
ただ、被ばくが少ない範囲で収まっているのは、放射線防護を行っているからでもあります。
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防護の3原則
基本に立ち戻ると、放射線防護の3原則は「距離」「遮蔽」「時間」の3つです。
「距離」:放射線からできるだけ離れる
「遮蔽」:何かもので遮る
「時間」:放射線に関わる時間を短くする
防護はこの3つを常に頭に入れて実践していくことになります。
別部屋で操作
これは、遮蔽・距離・時間全てを含んでいます。
レントゲンやCTなどを始め、放射線を照射する検査室とそれを操作する操作室があります。
X線を照射するときは、操作室で検査室に通じている扉までしっかりと閉めて行うことがほとんどです。
そのため、医療従事者は被ばくが少ないのです。
身を守る鉛入りプロテクター
操作室でX線を照射することがほとんどなのですが、時には、X線が照射されている環境の検査室で処置を行うこともあれば、検査することもあります。
そんな時は、鉛の入った装備を身に付けるので、それらを紹介します。
と、これは、福島原発事故時のような汚染区域に行くときの装備でした。熱いし、重いしで夏に着ると脱水になりそうなほどらしいです。
病院での鉛装備はもっとシンプルなものです。
・ 鉛メガネ
目(水晶体)は放射線感受性の高い臓器の一つであり、被ばくが多くなると白内障になることもあります。
その防御措置として、鉛入りメガネをかけます。
・鉛入り襟カラー
甲状腺の防護を考えるときに使われます。
・鉛入りエプロン
もっとも使用頻度が高いモノで、身体の臓器を守るのに使います。特に問題視される生殖腺まで、届く大きさのものを着るのですが、結構重く、風を通さないので、熱いです。
そのほかにも、鉛入り手袋もありますが、これをつけて細かいことはできません。指を曲げるのにも一苦労です。
どうでしょう。
病院にも鉛入りの装備は、結構あるものなのです。
そうすると、検査室で患者さんの近くで照射されることがあっても、被ばくはほとんどしないで済みます。
必要ないときはX線を照射しない・短時間撮影
レントゲン透視はX線を出し続けて、リアルタイムでレントゲン画像を確認するものですが、照射時間が長ければ被ばくも当然多くなり、患者さんの中には皮膚が赤くなることもあるそうです。
が、レントゲン透視は必要時以外は使わなければ、照射される時間を短くなり、バカにならないほど被ばくを減らすことができるのです。
また、撮影枚数を減らすことはX線の照射時間を減らすことに繋がり、結果的に放射線防護になります。