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透視装置のアンダーチューブとオーバーチューブ

リアルタイムにレントゲン画像確認できる装置を透視装置と呼びますが、透視装置にも様々な形式があります。

 

それが、アンダーチューブ型とオーバーチューブ型の2つです。

 

見た目的には、X線管球(X線発生器)が検査台の上か下についており、X線が上下のどちらから照射されるかの違いではありますが、被ばくや画質に影響を及ぼすため、少し整理したいと思います。

 

ただ、現在はオーバーチューブとアンダーチューブの両方に切り替えが可能なCアーム型装置をアンダーチューブとして使用していることが多いので、Cアーム装置とオーバーチューブ専用装置の比較いたします。

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透視装置の型

オーバーチューブやらアンダーチューブやら難しい言葉で表現することしかできないので、最初に透視装置の一例を載せたいと思います。

オーバーチューブ型装置
上にX線管球・下にX線検出
Cアーム装置
X線管球の位置を上下に切り替えることができる

 

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オーバーチューブの利点と欠点

オーバーチューブ型とは、X線管球が上に、X線検出器が下の検査台の中に固定されている装置のことを言います。

 

この装置の特徴は、X線菅球と検査台間の距離が大きく、上部空間が広く使えることです。

そして、検査台が広いということです。

 

これは様々な利点をもたらします。

・利点

➀患者さんの観察がしやすい。
➁患者さんにとって邪魔なものが少なく、広いため検査台の上でも動きやすい。

➂患者さんに触れて、検査や治療を行う時に、上の空間が広いためやりやすい。

➃患者さんと装置が干渉するところが少ないため、装置を動かしたときに事故が起こりにくい。

➄様々な検査や治療に対応しやすい。(汎用性が高い)

➅画質が安定している。

➆Cアーム装置に比べて、装置が安い。

➇患者さんの被ばくがアンダーチューブに比べて少しだけ低い。

・欠点

➀麻酔下や状態が悪い患者さんで動けない場合、多方向からの観察に向いていない。

➁X線が上から照射されるため、近くで手技を行う医師や技師の頭部や頚部の被ばくが多い

➂患者さんに検査台の端を持たれると、動かしたときに指を挟める危険性がある。

➃X線管球を頭側から足側・足側から頭側方向に動かし、照射方向を変えることができるが、その角度に応じて画質が悪くなる。

距離が長いため、患者さんに届くX線が少し減る

 

簡単にまとめると、オーバーチューブ型装置は、検査や治療など汎用性が高い装置であるが、任意の方向から観察・撮影することができず、限界がある。

また、患者さんの被ばくは少ないが、医療人の被ばくが多い装置である。

Cアームの利点と欠点

Cアーム装置とは、アンダーチューブとオーバーチューブの両方に切り替えが可能ですが、アンダーチューブ型として使った時の利点と欠点について載せたいと思います。(Cアーム装置自体の利点も多いので一緒に載せます。)

 

Cアームの特徴は、縦や横にとX線管球とX線検出器の角度を自由に動かせることです。そして、アンダーチューブ型として使った時、X線管球が下、X線検出器が上側に配置されます。

 

利点と欠点をまとめます。

・利点

➀患者さんが動けない状態でも、あらゆる方向(任意の方向)から観察することができ、描出範囲が広い。(患者さんの負担が軽い)

➁X線検出器を患者さんに密着させて撮影できるため、画質(対象臓器が拡大しないため、鮮明な画像が得られる)が良い。

➂X線管球とX線検出器の距離が短いためX線の出力が小さくて済む。

➃医師や技師、看護師など検査や治療に携わる人たちの被ばくが少ない。

・欠点

➀患者さんとX線検出器間の距離が近く、検査や治療が行いにくいことがある。

➁患者さんとX線検出器間の距離が遠いほど、画質が低下する。

➂検査台が狭い。

➃装置が高価で、汎用性に劣るのため、導入されにくい。

こんな風に回転できる

 

 

Cアーム装置は、オーバーチューブ型に比べて良好な画像を得られ、かつ、任意の方向から観察・撮影ができるため描出範囲が広く、患者さんの負担も少ない。が、検出器を患者さんに密着させないと画質が著しく低下し、それに伴い上の空間が狭くなるため手技がやりにくい時が出てくる装置である。

医療人の被ばく線量の違いがでる理由

透視装置のオーバーチューブ型とアンダーチューブ型によるX線を検査台の上から照射するのか、下から照射するのかの違いで医療人の被ばく線量が大きく変わってきます。

 

なぜ、上からと下からの違いだけで被ばく線量に違いがでるのでしょうか。

 

この答えは「散乱線」という概念にあります。

 

身体をX線が透過する際には必ず散乱線が発生します。
散乱線とは、X線が骨や臓器にあたり二次的にX線を発生することで、様々な方向に飛んでいきます。

 

そのため、散乱線が原因で、患者さんは検査目的以外の部位にも放射線があたり被ばくすることになります。

 

散乱線の影響は患者さんだけにではなく、検査や治療にあたる医師や技師などの医療従事者も影響を受けます。

 

散乱線が飛んでいく向きがオーバーチューブ型とアンダーチューブ型では異なることが、被ばく線量に差が出る原因です。
下に、オーバーチューブ型とアンダーチューブ型の散乱線の飛ぶ向きを矢印で示します。

オーバーチューブ型では散乱線は上向きに飛んでいくため、従事者の手や目など身体の上半身は被ばくを受けます。また、オーバーチューブ型の場合、上からX線を照射するため、従事者は装置から漏れた漏えい線からの被ばくを頭頸部に受けることになります。首や水晶体を守るためには、プロテクターの他に防護メガネや首専用のネックプロテクターを身に付けて被ばくを抑える必要があります。

 

一方、アンダーチューブ型は散乱線の向きは下側を向いており、被ばくしても足のほうしか被ばくしないことになります。また、下方向に向かう散乱線は鉛エプロンによって防護することも可能です。さらに、手や目への放射線被ばくは、X線が患者さんを通過しある程度弱まった後なので、オーバーチューブ型に比べて被ばく量が少なくなります。

 

 

アンダーチューブ型の装置の場合は、従事者は患者さんの身体も防護に考慮していることになります。患者さんは、診療に必要なX線を照射する必要があり、ある程度の被ばくを伴うことになりますが、装置の発展によって被ばくは抑えられる傾向にあります。

 

ただ、オーバーチューブ型はアンダーチューブ型に比べ、従事者の手および頭頸部の被ばくが10倍以上と言われており、多くの患者さんにX線を使う仕事をしている従事者たちは、被ばくには人一倍敏感になってしまうものです。