透視画像とリカーシブフィルタの関係とは?

X線透視装置では、線量不足を補うためにリカーシブフィルタというものが使用されています。

 

ただ、リカーシブフィルタについて学校で学んだ覚えがある方は意外と少ないのではないでしょうか。実際、私自身、調べる機会がなければ学校で学んだのどうかさえ覚えていなかったほどです。

 

それでも、リカーシブフィルタは透視画像に欠かせない(新しい技術もでてきていますが)ものとなっていますので、最低限の知識を持っているとより理解が深まると思われます。

 

そこで、今回はリカーシブフィルタについて簡単にまとめていきたいと思います。

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透過画像の復習

先に透視画像と言いましたが、そもそも透視画像とはどういったものなのか簡単にまとめていきたいと思います。

 

透視画像とは、少ないX線量を使って、レントゲン画像を動画として取得する方法です。ほぼリアルタイムに観察が可能であるため、IVR(InterVentional Radiology)といったように治療や検査に使用されます。

 

撮影画像は、画像読み取り装置により処置が必要なことから撮影してから画像を見るまでにタイムラグが必ず生じますが、透視画像はそれがないこと、少ない線量でレントゲン画像を確認できることが最大の利点といえます。

 

その一方で、透視画像は撮影画像に比べてX線量が極端に少ないために画像にはノイズが多く観察しにくいという欠点があります。

 

そのために、撮影画像では観察できるような軽微な変化が透視画像では観察できないということもあり得ることになります。

 

X線画像の原理上、ノイズの影響を減らすためには、X線量を増やすことが簡単な方法でありますが、透視装置を使用した治療では被ばく線量の増加が問題になりやすくなってしまいます。

 

そこで、X線量を増やすことなく画像処理の技術でノイズを減らす技術の一つがリカーシブフィルタです。

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リカーシブフィルタとは?

リカーシブフィルタとは、ノイズ低減し、X線量が少ない透視画像であっても観察しやすくする技術です。

 

では、どうやって透視画像からノイズを低減しているのか。

 

少し理解しやすくするためにリカーシブフィルタの言葉の意味から考えてみたいと思います。(すぐに終わります。)

 

そもそも、【recursive(リカーシブ)】とは、

【繰り返して用いられる,〔数学・コンピュータ〕帰納的な, 再帰的な】

 

といった意味があり、言葉から直接考えるとリカーシブフィルタとは、何かを繰り返し利用したフィルタということになります。

 

では、リカーシブフィルタの場合、何を繰り返し利用しているのでしょうか。

 

それは、現在写っている透視画像よりも少し前(一つ前)の透視画像です。つまり、過去の透視画像となります。

 

過去の透視画像を現在の透視画像に足し合わせることで、ノイズ量を減らし、画像を観察しやすくしているのです。

 

 

例えるなら、料理の味から食材や調味料を言い当てるようなものかもしれません。確かに、料理を食べ、どんな食材や調味料が使用されできているのかわかるものもあります。

 

ただ、完成された料理の味は様々な食材と調味料が複合されできているため、全ての食材や調味料を言い当てようとしてもとても困難です。完成された味をノイズというと失礼ではありますが、言い当てる側からしてみれば複雑なものほど騙されやすく、情報のノイズによって勘違いすることだってあり得るはずです。

 

ですが、料理が完成する前、調理の段階から見ていたらどうでしょう。どんな食材や調味料がどの程度しようされているのか言い当てるのが簡単になるはずです。

 

調理をどの段階から見るかによって、情報量は異なりますが、完成されたものだけを見るよりも、確実に情報は増えることになります。

 

X線による透視画像も同様に、現在の情報に過去の情報を付け加えることで情報量は多くなり、結果、画像のノイズを減らすことが可能となるのです。

 

さらに、食材を言い当てるので考えると、食材が並んでいる状態から見ていたのか、調理の途中から見ていたのか、完成された状態だけを見たのかによって難易度が変わるように(初期から見ているほど食材を当てるのは容易になる)。

 

リカーシブフィルタもその処理強度を強めるほど(過去の画像の度合いを大きくするほど)にノイズ低減の効果がある特徴を持ちます。

リカーシブフィルタの欠点とは?

リカーシブフィルタはX線量の少ない透視画像であっても、ノイズ量を減らすことができる優れた技術です。

 

一方で、避けられない欠点もあります。

 

それは、過去画像を利用している弊害といえるかもしれません。

 

どういうことか。

 

透視画像は、ある程度連続して表示されることが特徴で、その間には検査や治療行為が進んでいる(変化している)ことになります。

 

もちろん連続して使用していれば、その度に透視画像は切り替わり続け、リアルタイムにその変化を表示することになるのです。

 

もっと細かく言うと、現在の透視画像は次の瞬間には過去の透視画像となり、そのまた現在の画像はすぐに過去の画像へと切り替わり、その間、表示される画像には変化が生まれていることになるのです。

 

と、ここでリカーシブフィルタとはどういったものなのか、もう一度、考えたいと思います。

 

リカーシブフィルタとは、現在の透視画像に過去の透視画像を加算することで、ノイズ量を減らす技術です。

 

ということは、リカーシブフィルタによる処理が行われ続けることになり、現在の画像には過去の画像による加算が入り、次に表示される画像の加算には現在の画像が使用されることになりますが、それは、過去の画像による加算が含まれる画像であることになります。

 

つまり、リカーシブフィルタによる処理が入り続ける限り、現在の画像は常に過去の画像、そのまた前の過去の画像による影響を受けることになります。

 

この影響は、透視画像に動きの残像(ボケ)となって現れることになり、動きが速い(過去と現在の画像間の違いが大きい)ほど強く表れることになるのです。

 

また、この影響はリカーシブフィルタによる処理強度を上げた場合とフレームレート(30f/s➡15f/sなど)を低く設定するほどに影響がでやすくなります。

 

処理強度を強めることは、過去画像の度合いを大きくすることです。下の図のように、強度を高めるほどに過去の画像による影響は、残り続けやすくなり、画像にボケをもたらすことになります。

また、フレームレートを低く設定することは、透視画像が切り替わるタイミングを遅らせることになります。

 

人がよそ見をしていて突然の変化に驚くように、透視画像が間引かれるほどにその変化は敏感に画像にボケとなって現れてしまうのです。