%e9%80%8f%e8%a6%96%e8%a3%85%e7%bd%ae%e3%81%a8%e8%a2%ab%e3%81%b0%e3%81%8f%e7%b7%9a%e9%87%8f%e6%b8%ac%e5%ae%9a%e3%81%ae%e9%96%a2%e4%bf%82%e3%81%a8%e3%81%af%ef%bc%9f-2

透視装置と被ばく線量測定の関係とは?

IVR(Interventional Radiology)はX線透視撮影下、体内にカテーテルを挿入し、検査や治療を行う技術です。

 

外科的(手術など身体を切る)手技を必要としないので、比較的患者さんへの負担が軽い手技として普及されています。

 

 

ですが、IVR手技の難易度が高いほど、透視時間(X線の使用時間)の長くなってしまい、被ばく線量の増加が問題となることもありrます。

 

最近の装置では、以前に比べて被ばく線量を少なくする技術も多いので、X線の使用時間が短ければ影響を心配する機会も減っているかもしれません。

 

ただ、それでも放射線を使用する以上、被ばく線量がどの程度なのか把握かつ脱毛や皮膚潰瘍といった確定的影響を事前に防ぐことも重要となっているのです。

 

そこで今回は、透視装置を使用した際の被ばく線量の測定方法についてまとめてみたいと思います。

スポンサーリンク

被ばく線量測定の2つの方法とは?

水のように目で見て、どの程度の量が放出され、どの程度濡れてしまったのか判断できればいいのですが、残念なことに放射線は目で見ることができません。

 

なので、線量測定には必ず線量計が必要です。

 

ただ、困ったことに線量計には『全ての放射線を測定できる』万能なものはないのです。

 

いろいろな種類があり、種類によって測定方法も違ってくるので、今回の話題になっているような透視装置での線量測定でも測定方法によって使用される線量計が変わってきます。

 

では、今回の透視装置の線量管理において、どんな線量計がどのように使用され、どのように線量測定を行っているのか。

 

というのが、気になるかもしれませんが、線量計や測定方法の話からその入り口を開けてしまうと、二転三転としてややこしいので、測定方法から話を進めていきたいと思います。

 

実は、測定方法の話は簡単です。

 

なぜなら、代表的な測定方法に関しては次の2種類しかないからです。

 

それが、以下の2種類になります。

➀直接法

検出器を患者さんなど、測定対象に直にくっつけて計測する方法。

検出器が置いてある部位の被ばく線量を実測値をもって測定するため、直接法。

 

②間接法

装置の出力されたX線量などから被ばく線量を推定する方法。

出力値から被ばく線量を計算から導くため、実測値ではない。故に間接法。

 

となります。

 

ここからの話は検出器によって特性が変わってくるので、次の章でまとめていきたいと思います。

スポンサーリンク

直接法の利点と欠点とは?

直接法で使用される検出器として代表的なものは、TLD(Thermo
Luminescence Dosimeter:熱ルミネセンス線量計)素子、 蛍光ガラス線量計、SDM(Skin Dose Monitor)、PSD(Patient Skin Dosimeter)などがあげられます。

 

まず、TLD素子や蛍光ガラス線量計は、その内部に受けた放射線量をため込み、読み込み作業を行うことで、測定を行うものです。

 

この2つは、複数の部位を同時に測定できること、後方散乱などの要因も含んだ測定値が得られることから、得られた値の有用性が最も高い検出器であるといえます。(最も正確な値が得られる検出器とかんがえてもいいかもしれません。)

 

しかし、問題もあります。

 

それは、被ばく線量の測定値をリアルタイムに、つまりIVRの手技中に確認できないということです。

 

この2つの検出器は、どうしても専用の読み込み装置よる作業が必要になります。つまり、測定値を得るには一定以上の時間が必要になってしますのです。

 

「正確な被ばく線量がわかるならいいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、何事も予防が大事なのです。

 

測定値を読み取ってみたら、『皮膚に影響がでるかもっ?!』なんてことを言うことになったら本末転倒です。未然に放射線による影響を防ぐという目的からは外れることになってしまいます。

 

なので、この2つの検出器は、研究など正確な値が求められる際に使用されることのほうが多いかもしれません。

 

では、直接法が出来る検出器のなかには、リアルタイムに被ばく線量を把握できるものがないのか。

 

ということで、次にあげれるのが、SDMやPSDの2つになります。

 

この2つは患者さんの皮膚面に直接的に検出器部分を置き、モニター部分で逐一、被ばく線量を把握できるため、測定値に注意して、影響がでるような被ばく線量になったらX線の使用を止めるといったリアルタイム性に優れていました。

 

「これならいいじゃん」と思い、使用した施設も多かったのではないでしょうか。

 

ですが、実はこの2つにも問題があったのです。

 

SDMは放射線を検出するセンサ部分が1つしかないため、皮膚被ばくが最も高くなる部位に設置する必要があるのですが、事前にどの部位が最大値を示すのかを把握するのは困難でありました。特に、IVRなど多方向からX線による透視・撮影が行われる環境では、より困難であったと思われます。

 

そのため、被ばく線量が過小評価になってしまうと胃ことも考えられます。

 

さらに、センサ部分に毒性の強いカドミウム蛍光体が使用されていたことなどもあり、現在では製造もないようです。

 

では、PSDのほうはどうか。

 

PSDはシリコン半導体検出器を使用しているため、SDMのような毒性があるということはありませんでしたが、センサ部分と信号を送るケーブル部分がX線像に明瞭に写り込んでしまうため診断や治療に邪魔になってしまうということがあったようです。

 

結果として、2つとも現実的には使用しにくいということになります。

 

つまり、直接法は現状では使用が難しいことになるようです。

  利点 欠点
TLD素子 ・複数の位置に置いて、後方散乱を含んだ測定値が得られる。
・値の有用性が高い
・読み込み作業が煩雑で時間がかかる
・リアルタイム性に欠ける
蛍光ガラス線量計 ・複数の位置に置いて、後方散乱を含んだ測定値が得られる。
・値の有用性が高い
・読み込み作業が煩雑で時間がかかる
・リアルタイム性に欠ける
SDM(Skin Dose Moniter) ・積算線量がリアルタイムにわかる。
・簡便
・精度が高い
・多方向から透視撮影において最も高い皮膚線量値となる部位への設定が難しい。
・過小評価になりやすい
PSD(Patient Skin Dosimeter) ・積算線量がリアルタイムにわかる。
・簡便
・精度が高い
・X線画像に明瞭に写り込むため手技に邪魔になる。
 

間接法の利点と欠点とは?

上でも説明しましたが、間接法とは装置から出力されたX線量から皮膚面に受けるであろう被ばく線量を推定する方法ですが、実は間接法にも種類があります。

 

それが、NDD(Non Dosimeter Dosimetry)表面線量簡易換算法と面積線量計を使用した方法の2つです。

 

NDD表面線量簡易換算法とは、決まった計算式に装置の透視撮影条件(管電圧やmAs値など)と焦点皮膚間距離などを代入し、計算によって皮膚被ばく線量を推定する方法です。

 

この方法の利点は、簡易的な計算式で被ばく線量で管理できるということです。

 

ただ、その一方で計算にまで辿り着くまでが難しいという問題があります。

 

どういうことか。

 

まず、この計算が成り立つ前提として、X線装置による出力が表示された値通りであるように、徹底管理されている必要があります。

 

さらに、IVR時に使用される透視撮影条件とは自動的な制御機構がはいっており、刻々と適正な出力値になるように変化しているのです。

 

そのため、計算式に代入する値も刻々と変化することになり、計算を何回、行えば線量値が得られるのかということにも繋がることになるのです。

 

また、計算で線量管理を行うということは、これもまたリアルタイム性には優れているとは言えない測定法ということなります。

 

では、もう一方の面積線量計を使用した方法とはどうでしょうか。

 

面積線量計とは、装置の出力側に備え付けられている電離箱式の線量計です。

 

出力側に備え付けられているといってもX線画像に描出もされないため、こういうのがあるんだということを知らなけらば、認識されないことが多いのかもしれません。

 

面積線量計では、刻々と変化するX線透視撮影条件を反映し、累積の出力されたX線量を装置上で把握することができます。

 

そのため、患者さんに触れることなく簡便、かつ、リアルタイムに被ばく線量を知ることができ、現在の主流に近く実用的な方法の一つです。

 

ただ、そんな面積線量計にも問題があります。

 

それは、面積線量計が表示する線量値とは、面積線量であるということです。

 

面積線量とは何か。

 

ということになるかもしれませんが、実に単純です。

 

面積線量=線量 ✖ 面積

 

です。

 

この面積線量ではどのような問題が起こるのかですが、それは線量値と面積の掛け算で求められる性質にあります。

 

その一例として、「線量値が低いけど照射された面積が広い」場合と、「照射された面積が狭いけど線量値が高い」場合です。

 

この場合、照射された線量が少なければ放射線による影響はでにくいと判断できるのですが、照射された面積が広いために過大に評価されてしまう。

 

また、照射された面積が狭くても線量が大きければその部分では放射線の影響は先ほどよりは大きくなります。つまり、過小評価になるかもしれないのです。

 

なのに、この二つの場合は同等の評価がされることがあるというのが面積線量における落とし穴とも呼べる欠点になります。

 

面積線量計は、簡便でリアルタイム性に優れているの一方で、実測値には敵わない性質があり、そのため、IVRにおける被ばく線量管理は現在でも議論が重ねられるところであるのです。

  利点 欠点
NDD表面線量簡易換算法 ・簡便な計算式で求められる。 ・X線出力が管理された装置による透視撮影条件と焦点皮膚間距離が必要。
・刻々と変化する透視撮影条件に対応しづらい
・リアルタイム性に劣る
面積線量 ・患者さんに触れることなく簡便に測定できる。
・リアルタイム性に優れている。
 
・照射面積と線量の積で表されるため、正確な値ではない。

線量と面積線量の違いとは?

最後に線量測定と面積線量の違いを参考程度にすこしだけ表にまとめていきたいと思います。

  利点 欠点
線量測定 ・照射線に関わらず、強度わかり管理に向いている。 ・距離に依存する
面積線量 ・距離に依存しない。
・焦点皮膚間距離の変化に対応できる。
・照射野と線量の積で表現されるため、正確な値ではない。