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【放射線計測】気体の電離計測と印加電圧の関係とは?

被ばくに関心が高まる前から、放射線を計測することはとても重要とされていました。

 

どんな種類の放射線がどのくらいの強度であって、その量は多いのか少ないのかなど正確に計測することは、放射線を扱う上で避けられない内容であるからです。

 

しかし、その全てに対応する放射線検出器とは存在しないため、現在、使用されている検出器には得意、不得意があることになります。そのため、各種の放射線測定器の特性を理解し、状況に応じた使い分けが必要になります。

 

そこで、今回は気体電離を利用した検出器の収集電荷と印加電圧の関係をまとめてみたいとお見ます。

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ガス入り測定器とは?

放射線を計測する一つがガス入りの測定器です。

 

ただ、その種類やら、どういう使い分けがされているのかを知る前に、ガス入りの放射線計測器がどのように放射線を計測するという原理を知っているとなお良いので、最初にそこからまとめてみたいと思います。

 

では、ガス入りの測定器はどのように放射線を計測することができているのか。

 

それは、放射線による電離作用を利用した方法です。

 

どういうことか。

 

実は、放射線そのものは直接的に計測することはできません、計測には必ずワンクッションが必要となるのです。

 

そのワンクッションとなるのが放射線の相互作用であり、今回でいう電離作用を指すことになります。

 

では、その電離作用とはいったいなんなのか。

 

放射線は物体に自信がもつエネルギーを与える作用をもっています。その結果、起こるのが励起やら電離作用であるのですが、電離作用とは放射線が原子や分子にエネルギーを与えた場合に起こる相互作用です。

 

電離作用については、詳しく解説しませんが簡単に考えると放射線が原子や分子にエネルギーを与えた時に、電子や陽電子を新たに生成することをいいます。

 

つまり、放射線を気体中に存在する原子や分子に衝突させることで、プラスとマイナスの電気を帯びた粒子を生成することができることになります。

 

そして、ガス入りの測定器はこの電離作用によって生成される電子と陽電子を利用した測定法なのです。

 

どのように利用するのか。

 

それは、電子(マイナス)と陽電子(プラス)を集め、電流を流す手段として利用し、その電流の大きさから放射線量を計測するという方法で利用することになります。

 

さらに、ここからはもっと具体的に測定器がどのように放射線から電流を作り、その放射線量を測定を行うのかまとめて行きたいと思います。

 

ガス入りの測定器の構造は、意外とシンプルなものです。

 

その測定に使用するのは、小学生で習うような電気回路です。

 

豆電球をつけるために、電球に線をつけ電池に繋げるといった感じの基本的な回路を思い出してみてください。

 

放射線計測器も基本的な構造は同じなのです。

 

計測器も電圧をかける電池があり、電球の代わりに電位計など数値を示すものがあるだけになります。

 

でも、ひとつだけ異なるポイントがあります。

 

それは、電球をつける場合は回路に途切れというものはなく、電池から電球まで一つの円になるように繋がりますが、放射線計測器の場合、回路の途中が途切れ、その途切れた部分をガスの入った容器に入れ、その回路の途切れた部分には、プラス側とマイナス側といった役割を分けた電極を有している点です。

 

と、言葉だけで表してもイメージしにくいので、下に簡単な図を示したいと思います。

では、具体的にこの機器がどのようにして放射線計測を行うのか上の内容を含めて説明した行きたいと思います。

 

この電離を利用した放射線計測器のキモは何といっても回路の途切れになって、ガス入りの容器に入っている電極の部分です。

 

この部分に放射線が入射すると、ガスとの相互作用が起こり、電離が起こります。この電離によって、電子と陽電子(電子イオン対)が生成されることになり、この電子対がどのくらいの量と強度を持っているかがわかれば、間接的にしろ放射線を計測できることになります。

 

では、どうやって発生した電子対を集め、測定するのか。

 

それは、この計測器を構成する回路に電圧をかけ、ガスの容器になる電極に電界を発生させることで行います。

 

回路に電圧をかけると、ガス内の電極にはそれぞれ陰極(マイナス)と陽極(プラス)の性質を持つことになります。それにより、磁石と同じように陰極(マイナス)には陽電子(プラス)、陽極(プラス)には電子(マイナス)が引き寄せられるのです。

 

すると、普段は回路が途切れているため、電池に繋いでも電流を流さない回路でも、放射線の電離さようによって、一時的に回路が繋がった状態になり、回路に電流が流れるようになるのです。

 

その電流値を数値として表すことで、放射線の量や強度、種類を知ることができるようになります。

正確には、計測器には抵抗を介して、電圧をパルスとして取り出して計測したりもあるので、全ての説明にはなりませんが、基本的にはこんな感じです。

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収集電荷と印加電圧の関係とは?

ガス入りの放射線計測器では、放射線の電離作用とガス容器内にある電極にかかる電圧の大きさよって、収集できる放射線の特性が変化するため、収集電荷と印加電圧の関係を知っておく必要があります。

 

回路にかける電圧によって、放射線の計測に使用する機器の名前も異なるので、結構、重要な内容なので、ぜひ知っておくとよいでしょう。

 

下の図は、荷電粒子1個が入射した時に発生する、電子と陽電子対の数を陽極の電圧の関係で表わしています。(簡略化されてますが・・・)

この図を見てみると、6つの領域に分割されているのがわかります。

 

それぞれを簡単に下にまとめていきます。

 

領域Ⅰ:再結合領域

電圧が低く、電界強度が低いために、放射線の電離作用によって生じた電子と陽電子がそれぞれの電極に到達するまえに再結合してしまう割合が大きい領域です。(電子と陽電子はマイナスとプラスの関係があるので、引き合いやすいのです)

つまり、放射線計測のしにくい領域です。

 

領域Ⅱ:電離領域

領域Ⅰのような電子と陽電子が再結合して損失するようなことは、ほとんど無視できる領域です。入射放射線で生じた電荷のほとんど電極に収集することが可能です。この領域での収集電荷は電圧変化に無関係で一定となっています。

電離箱と名のつく線量計がこれにあたります。

 

領域Ⅲ:比例領域

放射線の電離によって生じた電子は、容器内のガスと衝突しながら陽極に達することになります。この時に、電圧を大きくかけ強い電界を作ることで陽極に引っ張られる電子の加速は大きくなり、自ずとエネルギーも大きくなります。

結果、更なる気体を電離させるという2次電離を引き起こし、入射した放射線が起こした電離で生じた電荷量よりも大きな電荷量が生じることになります。

この電荷の増幅率は印加電圧と気体の種類に関与するため同一気体では、1次電荷量に比例することになり、電荷量に応じて出力される値も変化します。

よって、この領域での測定は放射線の識別およびエネルギーの測定が可能となります。

比例計数管がこれにあたります。

 

領域Ⅳ:境界領域

比例領域よりも高い電圧がかかった領域であり、電界を増すにしたがい電圧と電荷量に非線形の効果が起こる領域。

結果として、出力値にも放射線との相関性がわかりにくい領域であるため、計測にも向きにくい。

 

領域Ⅴ:GM領域

電圧が非常に大きく、電界強度が非常に強い状態。電界強度が強いため、電極に引き付ける力も強くなり、電子に起こる加速も大きくなる。比例領域よりも加速が大きいため、例え1つの電子イオン対だけでも2次電子をなだれ的におこし、電荷量が非常に大きくなる領域。

そのため、放射線の種類や量に関係なく大きく出力値を得られやすいため、弱い放射線も計測しやすい。(β線など)

GM計数管などがこれにあたる。

 

領域Ⅵ:連続放電領域

この領域では、1つの電離が回路の連続放電を引き起こし、電流が流れた状態になってしまいやすくなる。

そのため、測定器としての機能を得ることはできない。