最近、MRI専門の書物をはじめ、新聞や雑誌でもf-MRIという単語を見かける機会が多くなっているように感じます。
そのためか、f-MRIは脳機能を画像化することができるということを知っている方は多いのではないでしょうか。
しかし、どうやったら脳機能をMRIで画像化しているのか?
なぜ、脳機能を知ることが出来るのか?
という、疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は機能的MRI、つまりf-MRIについてまとめていきたいと思います。
スポンサーリンク
f-MRIとは?
f-MRIとはFunctional MRIの略で、機能的MRIという意味です。
つまり、その名の通り、MRIを使用した機能的画像を撮像する技術のこといいます。
ただ、機能的画像といっても体の全ての機能を画像化するわけではありません。
現在では、主に脳の様子を画像化することだけにこの言葉が使用されているのが一般的であるといえます。
では、どうやって脳機能を画像化しているのか。
それは、脳活動による脳血液の微小灌流が変化することを検出することで行われています。と、難しくいっても理解しにくいと思うので、活動している脳は血液が増加しているので、その血液の増加の影響を画像化して表していると思っていただくの近道かもしれません。
そのため、f-MRIでは最低でも2回の撮影が必要です。
脳の血液量が増加しているのかどうかわかるためには、まず被験者の安静時(何も考えていない時)の基準となる脳血流状態を表した画像が必要です。そして次に、被験者に(親指を動かす、計算をするなど)課題してもらいながら、また撮像します。
すると、2番目に撮像した画像は、課題をこなしながら撮像しているので、課題をこなすのに使用した脳の部位の血流が増えていることになります。
そこで、2番目の画像から1番目の画像を引くと、その間に信号が変化した領域だけが残ることになります。その信号が変化した領域が、2回目の課題をこなすのに活動していた脳領域と判断することができるのです。
スポンサーリンク
脳機能と脳血流の関係とは?
では、なぜ活動する脳の微小な血流状態を画像化し手表すことが出来るのか。
それを理解するためにも、脳の活動と脳血流の生理学の勉強が必要です。
人が活動するには酸素とは欠かせない存在です。酸素がなければ、息もできず、酸素を身体の中に送り込むこともできなくなるからです。
それは、人の体を構成する脳も同様です。
脳も活動するためには、酸素を必要としているのです。
そして、酸素を脳まで運んでいるのは血液になります。もっと正確にいうと血液中に含まれるヘモグロビンに酸素は結合して運ばれていることになります。この酸素を多く含んだ血液を動脈血と言い、ヘモグロビンに酸素が結合している状態をオキシヘモグロビン(酸素化ヘモグロビン)と呼びます。
脳に運ばれた酸素は、一度にすべてということではありませんが、脳が活動する度に脳組織によって消費されることになります。
その結果、生まれるのがデオキシヘモグロビン(脱酸素化ヘモグロビン)です。
そのため、脳の組織から離れていく静脈血では、オキシヘモグロビンの量は減少し、デオキシヘモグロビンが多くなっていくことになるのです。
脳が活動するためには酸素が必要となりますが、その活動量が増えるほど消費する酸素量も多くなります。そのため、ある領域の脳活動が増えるとその領域での酸素の需要が高まり、需要を満たすために微小循環が増加することになるのです。
こうやって、体は十分な酸素を流入させて使えるようにしているのです。さらに、脳は重要な臓器であるため、実際に必要な分量以上に微小循環を増やすことになります。
そして、この微小循環の増加(酸素供給量の増加)が少し興味深い結果をもたらします。
どのような結果か。
微小循環が増えるほどに脳にはオキシヘモグロビン(酸素化ヘモグロビン)の量も増えることになりますが、脳には必要以上の循環から非常に多くのオキシヘモグロビンが運ばれてくることになります。
しかし、実際に消費する酸素量は増加量に比べ少ない量で済むため、消費される酸素量は安静時に比べ”相対的に”少なくなるのです。
その結果、静脈側でのオキシヘモグロビンの量が増え、デオキシヘモグロビンの量が減ることになってしまうことになります。
つまり、需要以上の供給が行われるために、在庫が増えているような状態になってしまうのです。
脳血流とf-MRIの関係とは?
では、この脳活動と脳血流の関係がどうf-MRIと関係しているのか。
ここで、重要なのは、脳が活動することでその活動に必要な酸素以上に酸素がオキシヘモグロビンとなって供給されること。そのために、デオキシヘモグロビンの量が減少するということです。
なぜか。
それは、デオキシヘモグロビンとオキシヘモグロビンでは、磁気特性が異なるためです。
オキシヘモグロビン(酸素化ヘモグロビン)の磁気特性は、反磁性(内部の磁場の方向が外部磁場と逆となる)、デオキシヘモグロビン(脱酸素化ヘモグロビン)は常磁性(内部の磁場が外部磁場と同じ向きなる)となります。
つまり、デオキシヘモグロビンが大きければ、外部磁場に平行に小さな磁場を内部に形成し、それが外部磁場に加わることで、さらに磁場を高め、結果、この局所的に形成された磁場が、磁場の不均一を引き起こすことになります。
デオキシヘモグロビンが多ければ多いほど磁場の不均一性は増加することになるのです。
さらに、磁場の不均一はプロトン位相の分散を起こしやすくするため、横磁化をより加速させて減衰させることになり、結果、MR信号は小さくなってしまうのです。
そこで、思い出すのが活動している脳のオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの量の関係です。
活動している脳の領域はデオキシヘモグロビンの量が少なくなります。デオキシヘモグロビン濃度が低いと、生じる磁場の不均一も小さくなることになり、この領域で起こる横磁化の減衰は遅くなります。つまり、信号は強く表れることになるのです。
この信号が血中酸素濃度に依存している状態をボールド効果(blood oxygen level dependent)と呼びます。
f-MRIを撮像するためには?
脳が活動している領域では、微小循環が増加し、高い信号が得られることになります。
安静時に撮像された画像を、課題を実行中に撮像された脳の活動部位が高信号となっているときに撮像された画像から引き算すると、活動し血流が増えた領域だけが残ることになります。
そして、元の画像に活動している領域を合わせて色付けすることでf-MRI画像のできあがりとなるのです。
ただ、f-MRIに利用されるボールド効果とは持続時間が短いのを忘れてはいけません。
そのため、ボールド効果を画像に反映させるためには、高速化された撮像法が必須となります。また、ボールド効果は磁場の不均一性に影響されたT2*効果であることも考える必要があります。
よって、ボールド効果を撮像するためには、速く、T2*効果に鋭敏なEPIシーケンスのような最適なものとして使用されることが多くなるのです。