「尿が逆流することがあるの?」
「尿が逆流するとはどういうこと?」
と思うかもしれませんが、実際に起こることがあり、特に子供発熱に関係する病気です。
子どもの突然の発熱には、課税がいも発疹やはしか、水疱瘡などがありますが、発熱の原因の5~10%は尿路感染によるものとされています。
尿路感染とは、おしっこに細菌が侵入するために起こるものですが、細菌の多くは尿道(尿の出口)から侵入し、膀胱内に入ります。
侵入した細菌が膀胱内に留まっていれば、膀胱炎になるだけで、発熱もなく、治療も比較的に楽に行うことができます。
しかし、細菌が尿管や腎臓まで侵入してしまうと、腎盂腎炎や腎障害を引き起こす恐れがあるため、注意が必要です。
この、原因となる病気の一つが、膀胱尿管逆流症と言われているものです。
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膀胱尿管逆流症とは?
本来、腎臓から作られた尿は、『腎臓⇒尿管⇒膀胱⇒尿道』の順に一方通行で流れて排出されます。正常な尿菅の出口には逆流防止の弁がついており、膀胱に溜まった尿が尿管および腎臓へと流れることはありません。
しかし、尿管校の異常で膀胱の尿が腎臓へと逆流することがあり、これを膀胱尿管逆流症といいます。
膀胱尿管逆流症は、尿路に細菌が入りこむ尿路感染症をきっかけに発見されることが多く、治療しないと腎臓に障害が起こることもあります。
この病気は小児の1%(100人に1人)に認められると言われており、意外と多いようです。
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膀胱尿管逆流症になると?
発熱や元気がなくなるといった目に見える症状を観察されます。それ以外にも、その本人は排尿時に痛みを感じたり、腹痛を訴えることがあるようです。
尿の逆流が腎臓まで達している場合には高熱にもなり、腎盂腎炎を引き起こしている恐れがあり、これが原因で腎機能障害になることもあるようです。
診断の決め手になる検査!!
ということで、尿が逆流する様子を確認し、膀胱尿管逆流症の診断の決め手となる検査を紹介します。
それが、逆行性排尿時膀胱尿道造影です!!
この検査は尿道からカテーテルを入れて、膀胱内に造影剤を溜めてから排尿時の瞬間のレントゲンを撮影するもので、リアルタイム透視画像を見ながら行います。
もっと具体的に手順を含めて紹介いたします。
・検査手順
1.レントゲン透視装置に仰向けに寝る。
0~1歳児は専用の固定器具に寝てもらうとより安全に検査を行うことが出来ます。
それ以上になると、抵抗されると検査自体が困難なケースが多いです。
2.尿道から細いチューブを膀胱内に挿入する。(ゼリーの麻酔を使います。)
3.チューブを入れたら、腎臓・尿管・膀胱のレントゲン(KUB撮影)を撮影する。
4.チューブから薄めた造影剤を膀胱内へ点滴で入れていく。
5.膀胱内に造影剤が溜まる様子を確認する。
6.少し尿意(初期尿意)を感じるところで、レントゲンを撮影する。
7.さらに膀胱内に造影剤を溜める。
8.おしっこが我慢できなくなるまで造影剤が溜まったら、レントゲンを撮影する。
9.ここで造影剤の滴下を止める。
10.排尿時撮影の準備に入り、その間は排尿を我慢する。
11.排尿時のレントゲン撮影を行う。
12.排尿終了後に、残尿の状況をレントゲン撮影する。
13.逆流がなければ、終了。逆流が合った場合は、3~5分後にもう一度レントゲンを撮影して終了になります。
この検査中に限らず、尿が逆流する瞬間は大きく分けて二つあります。
それは、膀胱内に造影剤を溜めている最中と排尿時です。
これは、おしっこをしていない時としているときと言い代えることができますが、もっと具体的に言うと、腹圧がかかっていない時(お腹に力を入れていない)と腹圧がかかっている時(お腹に力を入れている)です。
その二つのどちらかはたまたどちらも逆流するかによって、普段どういった時に尿の逆流を起こしているのか判別することができるのです。
まさに、この検査の大きな利点は、尿が逆流する瞬間をレントゲン上でリアルタイムに観察できること、排尿時に膀胱に溜まった造影剤を全て出せているのか出せていないのかを調べることが出来る点にあるといえるでしょう。
この他に超音波検査や核医学検査(アイソトープ検査)が行われますが、腎臓の形や機能の異常の有無を調べることが主な目的になります。この二つの検査では、尿の逆流が起こっているのか、はたまたどんな時に逆流してしまっているのか判断することはできません。
そのため、この逆行性排尿時膀胱尿道造影検査による診断が重要視されることになります。
この検査における被ばく線量は検査時間に応じて異なります。
ある程度年齢を重ねて、自分でコントロールできる子であれば、レントゲンを出している時間は短く、被ばくも少ないです。
しかし、検査室でおしっこすることは、家のトイレとは大きく環境が異なることや人に見られている羞恥心から、上手く排尿できないことも多いため、その場合はレントゲン透視時間が長くなることがあります。
同様に、0~1歳児は、排尿したくなる瞬間を自分で意思表示できたいため、レントゲン透視観察をしながら検査することになり、比較的線量が多くなる傾向になります。
可能であれば、被ばく線量を抑えることができる装置で行うことが望ましい検査かもしれません。が、そのような装置はまだ一般的には導入されていないのが現実です。
治療
逆流の度合いによって、治療が異なります。
逆流のグレードは以下の通りです。
・軽度の膀胱尿管逆流症
保存的治療。具体的には、規則正しい排尿の習慣づけや、導尿訓練、抗生物質内服による尿路感染症再発を予防し腎障害を防ぎつつ逆流の消失を待つことになります。しかし、腎盂腎炎など再発した場合は手術するこもあるようです。
・高度の膀胱尿管逆流症や腎瘢痕形成がある場合
手術療法。手術方法は尿管と膀胱のつなぎ目を補強が主になるようです。膀胱の内側から尿管のつなぎ目をはずして膀胱の壁の中に尿管を埋め込む方法と、膀胱の外側から尿管を膀胱の壁の中に埋め込む方法があります。