肝機能を調べる検査はいくつか存在しますが、今回の話題である肝コロイドシンチグラフィもそのひとつです。
どんな検査でどんな病気に行われるのかまとめてみたいと思います。
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使用する放射線医薬品とは?
この検査では、主に以下の2つの放射線医薬品が使用されます。
・⁹⁹mTc-phytate(フチン酸)
・⁹⁹mTcースズコロイド(Sn-colloid)
この放射線医薬品の特徴は、コロイドと呼ばれる状態の薬品であるということです。
コロイドとは、身近なものでいえば、牛乳やチーズ、煙や雲がそうなのですが、少しだけ順序よく説明したいと思います。
液体の中に他の物質がとけて均一な混合物をつくることを溶解といい、できた混合物を溶液といいます。
たとえば食塩や砂糖を水に溶解させると、水の中に食塩や砂糖がばらばらの分子やイオンなどの小さな粒となり、水の中に均一に混ざってしまうため、眼で見て確認することができなくなります。水にとけている粒の大きさはとても小さく、1 nm 以下です。
ただ、別のある物質を水などに混ぜた時に、同様に肉眼で見ただけでは確認できないけれども、食塩や砂糖の溶液中の粒よりも大きい粒子となって、均一に分散することがあります。
このような状態をコロイドといいます。そして、分散している粒子をコロイド粒子というのです。コロイド粒子の大きさは、おおよそ、直径 1 ~ 100 nm 程度で、先ほどの分子やイオンよりも少し大きいのが特徴です。
つまり、今回の検査で使用される放射性医薬品は分子やイオンよりも少し大きく、流れにくい液体によって作られているのだと理解していただけば大丈夫です。
そして、そんな薬品を放射性コロイドと呼びます。
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放射性医薬品の集積機序とは?
放射性コロイドを用いた今回の検査では、肝実質細胞の15%を占める網内系細胞であるクッパー細胞の異物貪食能を利用した検査です。
肝臓は、胃や腸などといった消化管から送られてくる有害物質や異物を処理する臓器であり、その時に働く細胞の一つがクッパー細胞です。
このような有害物質や異物を処理するのは肝臓が主役を張る役割なのですが、実は、このような貪食細胞をもつのは、何も肝臓だけに限った話ではありません。
その他に、貪食細胞は脾臓や骨髄にも含まれ、肝臓と同様に異物処理という仕事を行っており、肝障害が起こっている場合には、脾臓や骨髄が補うような働きを行います。
また、コロイド粒子サイズによっても処理が行われる臓器が異なります。粒子サイズが大きいと脾臓へ、粒子サイズが小さいと肝臓への取り込みが大きくなります。
この異物貪食能をもつのは正常な細胞であるということが前提です。
そのため、がん細胞など異常な細胞では、この異物を取り込み処理するという機能を有していないのです。
よって、放射性コロイドを用いた摂取率を調べることで肝機能が高いのか低いのか、はたまた部位よって偏りがないのかを判断することができることになります。
ちなみに肝硬変が進んだ場合には、相対的に肝臓の左葉が大きく、右葉が小さく、脾臓が腫大するという傾向が見られます。
今回の検査で使用される2種類の薬品は、それぞれ違った特徴を持っています。
○⁹⁹mTc-phytate(フチン酸)は、薬剤そのものはコロイド粒子ではないが、静脈内に投与すると血清中のカルシウムを取り込み200nm~10000nm径のコロイド粒子を形成する。
○⁹⁹mTcースズコロイド(Sn-colloid)の粒子径は400nm~5000nmで、⁹⁹mTc-phytate(フチン酸)に比べ粒子径が大きいため脾臓の描出能が高い。
検査方法とは?
・前処置
教科書によっては、前処置の必要性はないとされています。
ただ、実際には、食事による肝血流量の増加の影響を避けるため、4~6時間程度の絶食が望ましいようです。
・検査開始時間
この検査の場合、放射線医薬品の静脈投与から少しだけ時間を置きます。
具体的な時間としては、投与後15~30分ほどです。
・撮像方法
心臓および肝臓が視野内に含まれるように、前面、後面、左右側面の4方向のプラナー撮像。必要に応じて、SPECT撮像。
・適応疾患
慢性肝炎、肝硬変、びまん性肝疾患
正常と異常とは?
・正常例
肝臓は明瞭に描出され、脾臓には少しだけの集積が見られます。なお、骨髄にかんしてはほとんど描出されないことがほとんどです。
また、投与された医薬品は腎臓から排泄されるため淡く描出される。⁹⁹mTcースズコロイド(Sn-colloid)では、⁹⁹mTc-phytate(フチン酸)に比べ、脾臓の集積が少しだけ多くなる。
・異常例
肝硬変の場合、肝右葉の萎縮、左葉の腫大が見られる。また、脾臓と骨髄の集積亢進が見られる。