MR撮像時間は位相エンコーディングのステップ数にかなり依存いています。位相方向の画素数を大きくするほどに、撮像時間は長くなっていくのです。
そんな撮像時間を短縮する1つの方法に、位相エンコーディングステップ数を減らす方法があり、パラレルイメージング法がそれに該当するのです。
そこで、今回はパラレルイメージング法についてまとめてみたいと思います。
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パラレルイメージング法とは?
複数のコイルを使用し、位相エンコーディングステップ数の信号を得て、画像化する方法です。
例えるなら、1人で建物を建てるのではなく、2人や3人など複数で建物を建てるようなものです。みなそれぞれ、同じ効率で仕事行えるのであれば、人数が増えるにつれて、それだけ完成までの時間を短縮することができます。
MRも同様に、複数のコイルがそれぞれに作業を行い、信号を収集することでコイルが増えるにつれて、k空間を埋めるのに必要な信号を埋める時間を短縮することが可能となるのです。
では、具体的にはどのようなことを行っているのか。
そもそも、受信コイルとはとは、身体から出る信号を拾っているので、コイルの設計によって、その部位からいかに良い信号を拾えるのかが決まることになります。表面コイルを使用した場合では、コイル直径の半分の距離まで信号を拾うことが可能です。
しかし、どのようなコイルであっても、コイルから遠く離れた部位からの信号を拾うことは苦手としており、距離が離れるにつれ弱くなった信号を得るのがやっとであり、最悪の場合、全く検出できないということもあり得ることになります。
これは、よくコイル感度と表現され、コイルに近い信号ほど感度よく信号を検出することが可能で、遠くなるほど感度が悪くなってしまうのです。
コイルの感受性とは、コイル直径に比例しており、コイルの大きさが十分であれば、一つの大きなコイルでも広い領域を撮像することも可能です。
ただ、ここまでの話で想像できるかもしれませんが、一つの大きなコイルを使用して広く深い領域を撮像することは得策とは言えません。
なぜなら、コイルから離れた部位からの信号は弱いものまたは検出できないかもしれませんし、1つのコイルでk空間(位相エンコーディングステップ数)分の信号を得て埋めるには時間がかかるからです。
そこで、1つの大きなコイルを使用する代わりに、2つの小さいコイルを使用することを考えてみましょう。
2つコイルを撮像領域の前後に配置することで、前面領域は前面のコイルが後面領域は後面に配置したコイルで得ることができます。大きな1つのコイルを前面に配置しただけでは、領域すべてを撮像できるが、後面から出てくる信号は弱い信号として収集するしかなかったのですが、前後に1つずつ配置することで、より近いほうのコイルで均等に信号を収集することが可能になります。
結果的に、コイルまでに信号を低下することなく、強い信号を得ることが出来るのです。
2つのコイルを配置することで、時間短縮も可能だといいました。どういうことかは、ここからお話したいと思います。
例えば、256×256のイメージマトリックス画像が必要な場合、1つの大きなコイルで撮像した場合、256行分のMR信号を1つのコイルで得る必要があります。そのため、撮像時間で表すと、256×TR×Nexとなります。
一方で、2つのコイルで撮像した場合は、1つのコイルで128行分の信号をそれぞれ収集すれば、その後足せ合わせすることで、画像再構成に必要な256行分の信号を得ることが可能です。そのため、撮像時間で表すと、128×TR×Nexとなります。
つまり、2つのコイルでそれぞれ信号を収集すれば、1つのコイルで収集した場合に比べ、半分の時間で同じ量の信号を得ることができることになります。
重要なのは、2つのコイルが、全く同じ時間にデータを平行して収集しているということです。これは、それぞれのコイルが、各々のコンピュータと個別のラインを持つためにできる技術であることを頭の片隅にいれておくといいでしょう。
パラレルイメージング法について改め簡単にまとめると以下のようになります。
➀複数コイルを使用した撮像法である。
➁コイル数の増加により、信号収集効率が上がり撮像時間も短縮できる。
最近の装置では、8チャンネルや12チャンネルなど多くのコイルが配置されているコイルが使用されていますが、これらのコイルだからこそ撮像時間が短くなっていること、また、このような多チャンネルに対応したMR装置が開発されているからこそ、現実的な撮像時間で検査を行えることができているのです。
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パラレルイメージング法の利点と欠点とは?
ここからは、パラレルイメージング法の利点と欠点について触れていきたいと思います。
・利点
➀検査時間の短縮。(しつこいようですが・・・)
パラレルイメージング法の最大の利点です。撮像スピードが上がり、検査を受ける上での負担を減らすことが可能です。
➁モーションアーチファクトの減少。(動きによるアーチファクトの減少)
人の臓器では、胃や腸など意識的に動きを止めることができないものもあります。撮像の高速化はそのような臓器の動きによる影響を減らすことができ、アーチファクトの減少につなげることが出来ます。
➂決められた時間に多数の撮像が可能。
➃傾斜磁場への負担の減少。
傾斜磁場の強度は、撮像の高速化を阻む要因になっていました。しかし、パラレルイメージング法では、強い傾斜磁場を必要しないため、装置負荷が軽く、撮像制限がかかりにくくなります。
➄磁化率の影響の減少。
磁化率は、局所的な磁場の不均一を表します。これらはプロトンが異なる歳差運動周波数で雲合する原因となり、異なる組織間でプロトンが逆位相になるほど、信号の低下を起こすことになります。これは、長時間、信号を収集すれば、位相エラーが蓄積し、より顕著になって現れることになるが、信号を収集時間を短縮できれば、影響を減らすことも可能です。
➅SAR制限が問題になりにくい。
スピンエコー法により画像データを取集する場合、得るエコー数が減らすことができるということは、180°RFパルス数を減らすことと同義となります。180°パルスの減少は組織へのエネルギー付与を減らすことにもなるのです。
・欠点
➀SN比の減少。
スライス間隔が小さい場合、スライス毎の磁場の干渉によりSN比が減少するという欠点があります。そのため、撮影にはスライス間隔を一定以上あけるなどの対策が必要です。
また、1.5T(テスラ)や3.0T(テスラ)といったような高磁場を発生させる装置を使用するなど、十分な信号が得られる条件下での使用が適しています。