MRI検査の最大の弱点は、一枚の画像を得るのにとても時間がかかることです。
また、レントゲンやCTのようなX線を照射したところだけは、すぐに画像化できるシーケンスとは異なり、MRIでは、撮像中に止めてしまうとそれまで作られようとしていた画像も一から作りなおすことになります。
そのため、「すぐに検査画像が見たい」という要望には叶えにくい検査であったというのが一般的でした。
しかし、現在はちがいます。実は、1秒で1枚を撮影できるような方法が存在しているのです。
その方法がシングルショットと呼ばれる方法です。
今回はシングルショットとそれに関連する水強調画像についてまとめてみたいと思います。
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シングルショットとは?
シングルショットとは、1回のRF励起パルス中に、全てのk空間を埋めて画像化してしまおうと方法です。
そのため、なんども90°RFパルスを使用するスピンエコー法やフリップ角を使用するグラディエントエコーシーケンスよりも断然と速く画像を得ることが出来ます。
そのスピードは、1秒で1枚得られるほどです。通常のスピンエコー法や高速スピンエコー法では、2分以上かけて20枚とか、撮れるほどなので、その差は大きいといえるでしょう。
RFパルスによる励起を一回しか行わないためにシングルショットです。
では、シングルショットとはどうやって1回のRF励起パルス中にk空間を埋めているのでしょうか。
実は、シングルショットの最大の特徴は、このk空間の埋める方法に特徴があるのです。
スピンエコー法や高速スピンエコー法、グラディエントエコーシーケンスでは、共通してk空間を埋めるため、実際にエコー信号得て行っていました。つまり、全て現実で得られたエコー信号で作られた画像であったのです。
しかし、シングルショットの場合はちがいます。どう違うのかというと、実際に得られたエコー信号で埋めているk空間とは、半分ほどしかないのです。
実際には、半分よりも少し多い程度ではありますが、k空間の約半分ほどしかエコー信号を得て、埋めるということを行っていません。つまり、エコーシーケンスが終わった時点では、もう半分は空欄状態なのです。
ここで、疑問が起こる人もいるでしょう。
『k空間には半分しか信号が埋まっていないのに画像を作ることができるのかと。』
実際、k空間の中心部分が埋まってさえすれば、画像自体はできるといえます。(k空間の中心部分は画像コントラスト、外側は空間分解能を担っているため、空間内に信号が埋まっていれば、画像は作れはするのです。)
が、それは診断に有効な画像とは言えないようなボケた画像です。
では、どうしているのか。
これを解決するには、実際に埋められるk空間の信号がどういったものかというを復習する必要があります。
k空間に埋められる信号は中心に近いものほど強度の高く、外側にいくほど低いものでした。そして、もう一つ忘れてはいけないことは、中心行を境に上下で鏡面状態になっているということです。
つまり、k空間に埋められるエコー信号は、上下で対称になっており、ほぼ同じ信号が埋まっているということです。
シングルショットとは、この性質を最大限に利用しているといえます。
シングルショットの場合、実際に得られたエコー信号で埋めるのは上半分です。そして、下半分は、上半分の鏡像データを使って埋めていくのです。(k空間を鏡像データで埋める方法は、パーシャル(部分)フーリエ法またはハーフフーリエ法と呼ばれています。)
そうすることで、k空間を埋める時間は大幅に短縮されることになります。
シングルショットとはどういうことをやっているのかというを、もう一度まとめると
➀RF励起パルスの印加
➁位相エンコーディング傾斜磁場を変化させながら、k空間の半分にあたるエコーを信号を、この励起中に得る。
➂もう半分は、先ほど得た半分の信号の鏡像データを使って埋める
➃フーリエ変換にて、MR画像のできあがり
となります。
k空間の性質をわかっているとわかりやすいのではないしょうか。こう見ると、意外と単純のように感じます。
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シングルショットのコントラストとは?
実は、シングルショットのコントラストは選ぶことができません。
基本的にT₂強調のようなコントラストとなります。(T₂強度を変化させることはできます)
それはなぜか。
全てデータをシングルショット後に取得すれば、それ以上のデータを取集するために繰り返しRFパルスが印加されることはありません。
そのためシングルショットにはTRという概念がないのです。
TRとは、RF励起パルスが繰り返される時間をいうため、繰り返されるものがないシングルショットにはTRがないのです。
スピンエコー法では、画像コントラストをTRを変更することで変えることができていました。実際、TRを調整することで、T₁強調を強めたり弱めたりした画像を作ることができます。
しかし、シングルショットではTRがないので、画像にはT₁コントラストがないことなるのです。
そのため、T₂コントラストの強度を変更するという方法だけが使われるのが、シングルショットとなります。
シングルショットと水強調画像の関係とは?
シングルショットの代表的な画像例がMRCP(MR膵胆管造影)やMRU(MR尿路造影)です。
シングルショットシーケンスを使うと、k空間内の画像コントラストを決定するラインは、横緩和によってほんの少しだけ影響を受けた信号で埋められています。初期のエコーはT₂減衰曲線の初期の地点で測定されていることになるので、横磁化の差というのはまだ大きくない状態です。
しかしここで、かなり遅く出てきたエコー信号がまだ十分な強度を持っていると仮定します。これを収集し、k空間の中央ラインに置くと、よりT₂コントラストが強調された画像が出来上がるのです。
この画像は、液体が画像にはっきりと現れるため、強い水強調画像と呼ばれたりもしています。