in-phaseとout-of-phaseの原理は、MR検査のディクソン法なる撮影の原理になっているもので、化学シフトと大きく関わったものなのですが、少しわかりにくいのが難点です。
そこで、今回は化学シフトを含めつつin-phaseとout-of-phaseについてまとめてみたいと思います。
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少しだけ化学シフトに関して・・・
復習をしたいと思います。
水と脂肪中のプロトンは、異なる周波数で歳差運動をしています。1.5Tでの違いは、約222Hzほどです。
そのことが原因で、ある場所で歳差運動周波数が、予想していたプロトンの周波数が違う場合、信号の位置は本来の位置と違う場所に割り当てられてしまいます。この信号の位置がプロトンの歳差運動周波数が原因で移動する(シフト)してしまうことを、化学シフトといいます。
下の図のように、箱の中に水と脂肪の混合物が入ったものを考えてみましょう。混合物の周りに波、他の組織が詰められています。
周波数エンコーディング傾斜磁場が印加されている間に信号を測定すると、ボクセル内の脂肪信号は水を含む本来の信号の位置から変位してしまい、ズレた場所に描出されることになります。
これは、脂肪信号は水に比べて低い周波数を持つため、画素ごとに割り振られた低い周波数方向から装置側で誤認してしまうために起こる現象です。
化学シフトは装置性能や撮影するパロメーターにも影響される側面を持っており、以下の場合、化学シフトをより増強させることになります。
・化学シフトを増加させる因子とは?
➀磁場強度の増加
水と脂肪の歳差運動周波数の差は3.5ppmです。それを踏まえ、以下のように計算すると、
・1.5Tの場合
ω=γB₀=42.6MHz×1.5T=63.68MHz
63.68MHz×3.5ppm=約222Hz
・3.0Tの場合
ω=γB₀=42.6MHz×3.0T=127.8MHz
127.8MHz×3.5ppm=約448Hz
となり、3.0Tと1.5Tを比べると、磁場強度が2倍になれば、歳差運動周波数の差も2倍になっています。水と脂肪の歳差運動周波数の差が磁場強度に依存して大きくなっているのです。これは、結果として化学シフトを増強させることになります。磁場強度が強くなるほど化学シフトはより顕著に現れるのです。
➁バンド幅を狭くする
バンド幅は画素に割り当てる周波数幅に関係しています。バンド幅が広い場合は、1画素あたりに表現できる周波数幅は広くなり、化学シフトが起こりにくいくなりますが、画像の鮮鋭度は低下します。
一方で、バンド幅を狭くすると1画素あたりで表現できる周波数幅が狭くなり、本来の位置では、表せない周波数は別の位置に描出されることになり、化学シフトが起こりやすくなります。
➂画素サイズを小さくする
画素を小さくするほど、画素に割り振られる周波数は小さくなります。結果として、水と脂肪プロトンの歳差運動周波数差は、多くの画素をまたがってカバーされるため、化学シフトは顕著に現れることになります。
反対に画素を大きくするほど、各画素に割り当てられる周波数幅は広くなり化学シフトの影響は小さくなります。
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in-phaseとout-of-phaseとは?
ここまで、化学シフトを復習したところで、このあたりから本題に違づいていきたいと思います。
水と脂肪プロトン間の歳差運動周波数の差は、1.5Tの磁場強度下では222Hzです。このことをもっと、具体的に考えると、水プロトンが脂肪プロトンより、1秒あたりに222回多く歳差運動を行っているということになります。
脂肪と水プロトンの歳差運動が同じ方向を向いて始まると仮定してみましょう。水プロトンが1回転分だけ多く回転するために必要な時間は、1秒を222で割った値である4.5ミリ秒です。
つまり、スタートから4.5ミリ秒後には、水と脂肪のプロトンは同じ方向を向いてはいますが、水プロトンは脂肪プロトンに比べて1回転だけ多く回転していることになります。いわば、周回遅れのようなものです。
さらに、4.5ミリ秒の半分にあたる2.25ミリ秒たてば、水プロトンは脂肪よりも半周多くしていることになります。水と脂肪プロトンは反対方向を向いている状態になります。
角度的には逆位相(out-of-phase)になります。
逆位相になると、脂肪と水プロトンの磁気モーメントは、お互いに打消しあうので、ボクセル内に横磁化はなくなり、信号もなくなることになります。
このような同じボクセル内の水と脂肪の混合状態は、臓器とそれを取り囲む脂肪の間の境界に沿って生じます。そのため水と脂肪のプロトンが逆位相となると、組織を囲い込む暗い枠線となって現れることになるのです。
この効果は、境界効果や位相キャンセルアーチファクトと呼ばれており、悪影響となっていることが多いです。
その反面、水と脂肪プロトンの位相差利用した撮影である”同位相”と”逆位相”の画像作成は、診断に有用となる場合があります。
それが、in-phaseとout-of-phase画像です。
・in-phase
in-phaseとは、水と脂肪プロトンが同じ方向を向いているときに撮影した画像です。
この場合、水と脂肪の信号が加算されることになるので、信号強度が増加した画像を描出することが可能です。
in-phase信号強度=水の信号強度+脂肪の信号強度
・out-of-phase
out-of-phaseとは、水と脂肪プロトンが逆方向を向いているときに撮影した画像です。
この場合、水と脂肪の信号強度は減産的効果を示し、組織の境界に暗い線のある画像となります。
out-of-phase信号強度=水の信号強度ー脂肪の信号強度
・in-phaseとout-of-phaseの利用法とは?
もし同相と逆位相画像の間で、病変の信号が低下した場合、病変部には脂肪が含まれていると判断することができるように、病変の質を評価できる点が大きな利点です。
病変に脂肪が含まれているのか含まれていないかでも、結構大きく変わる場合もあるのです。
さらに、同相と逆位相画像信号を加算または減算することによって、水または脂肪のみの画像を算出することができます。
(in-phase信号強度)+(out-of-phase信号強度)=(水の信号強度+脂肪の信号強度
)+(水の信号強度ー脂肪の信号強度)=2倍の水の信号強度
(in-phase信号強度)ー(out-of-phase信号強度)=(水の信号強度+脂肪の信号強度
)ー(水の信号強度ー脂肪の信号強度)=2倍の脂肪の信号強度
つまり、同相と逆位相の両方の画像を撮影することから、コンピュータ処理を行うことで、水の量で信号値が決まる画像、脂肪量で信号値が決まる画像を得ることが可能となり、より詳細な情報を得ることが可能となっているのです。
そして、この撮影がディクソン法と呼ばれています。