放射線治療では、日々照射を行うにあたり、計画された照射が行われているのかが重要となります。
計画された照射が行われていないということは、事前の治療計画に逆らうも同然であり、その場合の治療効果や正常組織の障害・副作用に大きな影響を及ぼすことになります。そこで、実際の照射が治療計画通り行われているのかどうか確認を行うために治療装置を用いてX線画像を撮影を行うのです。
それがLGです。
今回はそのLGについてまとめてみたいと思います。
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LGとは?
LG:linac graphy(リニアックグラム)とは、実際に治療する装置(治療ビーム)を用いて、撮影されたX線画像のことです。
場合によっては、port film(ポートフィルム)、portal graphy(ポータルグラフィ)と呼ばれることもありますが、LG(リニアックグラムまたはリニアックグラフィ)と呼ばれることが一般的です。
このX線画像が撮影される目的は、治療計画通り照射が行われているのかを確認することです。
どうやって行うかはとても単純であり、撮影された画像と治療計画時に撮影された位置決め写真(DRR)とを比較することで行われます。そして、比べた時に画像の照射野の位置にズレがなければ、計画通り照射が行われていることになります。
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いつ撮影するの?
では、どういったタイミングでLGは撮影されうのでしょうか?
これには、主に3つのタイミングが存在します。
・3つのタイミング
➀治療開始時
LGは治療照射が行われる度に撮影されるわけではありません。
そのため、『最初が肝心』と言われるように、最初から間違った照射が行われると次回に確認を行うまで間違ったままの照射が行われることになってしまいます。
➁照射範囲の等変更時
治療の進み方によっては、照射野が変更される場合があり、その場合もLG撮影のタイミングになります。
➂定期的に
行う周期は施設間でもバラつきがあるようですが、照射野の確認を定期的に行い、照射精度の確認を行う必要があります。(1週間で1回行うところもあるようです。)
または、患者さんの状態の変化(体重の減少、病巣の変化など)や照射を行う放射線技師による要因(患者設定手順の変更、担当者変更など)も考慮されることがあるようです。なので、放射線治療に携わる技師は、頻繁に変わることがないように配慮されていることもあると聞くこともあります。
撮影方法とは?
一般的には、2重曝射という、その名の通り2回曝射を行う撮影法です。
2回の曝射の違いは照射野です。
照射野に絞りを入れた曝射と照射野を全開した状態での曝射を行うことで、照射野内と照射野周辺部位に黒化度の差ができ、治療時の照射野を画像上に再現されます。
治療装置を用いた撮影ではありますが、治療時ビームとは異なる点があります。
それは、被ばく線量です。
LG撮影に使用される線量は、数cGy程度であり、一回の治療に照射される放射線量に比べ低い数値です。それでも、通常のレントゲン撮影に比べ、線量は少ないとは言えません。
これは、装置が治療用の装置であるためであり、低出力の撮影には向かないためです。それでも、LGは治療時の照射野を撮影時にも再現できるため、どうしても必要な撮影といえます。
LGの撮影システムとは?
撮影システムには、3種類あります。といっても、フィルム側が時代とともに変化しているといってもいいかもしれません。
どういうことか。
増感紙-フィルム法からCR法とEPID(電子ポータルイメージング装置)のフラットパネル法に移行し、良好な画質による評価がされるようになってきているのです。
それぞれ、どんなものか少しだけまとめてみたいと思います。
・増感紙-フィルム法
普通のレントゲンとは異なり、LG撮影時には金属板が挟まります。どんな金属かというと、鉛です。
それを金属蛍光増感紙(Pb:鉛+CaWO₄:タングステン酸カルシウム)と呼びます。
被写体を透過した光子によって鉛箔で発生した飛程の短い二次電子がCaWO₄増感紙によって光に変換されフィルムを感光し像を作っています。
通常のレントゲンではX線をそのまま増感紙で可視光に変換し被写体像を形成していたので、二次電子を利用するLGとは異なった感光法です。
・CRを利用
現在、最も主流であると思われる方法です。
これは、フィルムの代わりにIP(imaging plate;輝尽蛍光体)を用いて、デジタル処理により画像を得る方法です。といっても、CR法でも増感紙-フィルム法と同様に金属板を挟み、二次電子を利用しています。
その流れを簡単に示すと、
被写体を透過した光子によって、銅から発生した飛程の短い二次電子が直接IPに作用し、さらにIPの後方に配置されている鉛箔からの二次電子も利用しIPに作用しています。
そうすることで増感紙-フィルム法に比べ、コントラストが増強されるのです。その他にもCRを使用することで、増感紙-フィルム法にはなかった特徴が生まれました。
・CR法の特徴
➀デジタル画像処理によって、コントラストの高い画像を得られる。
➁保存が容易になる。PACS化に即応できる。
➂IPの持つ広いダイナミックレンジによって1cGyから約10cGyまでの線量域で画像が得られる。フィルムでは、線量による像への影響が大きく、線量が過多であると、二次電子を利用していても、黒くなりすぎることがあるのです。
➃電子線照射による画像も得られる。
・EPID(electronic portal imaging device)
これは、FPD(フラットパネルディテクタ)を利用した方法で、最も新しいシステムです。これまでに比べ、最も簡易的撮影を行うことが可能です。
どういう方法か。
線束に対向した位置に検出器を置き、リアルタイムもしくは準リアルタイムで画像が得られるシステムです。つまり、治療用ビームを照射時(治療中)に位置確認を行うことができるのです。
なぜ、このようなことができるのかというと、
撮影に人体を透過してきた治療ビームを利用しているためです。治療用ビームであれ、全てのビームが人体内に吸収されているわけではありません。
必ず、人体を透過しているビームが存在しています。
それを利用し、撮影を行っているのが、このシステムなのです。
治療中であれ、確認できることは大きなメリットであり、治療計画時の画像と治療中のライブ画像を照合しながら治療を行うことができるため、誤った照射が行わるリスクが極端に減少すると考えられます。
このシステムの特徴をまとめると・・・
・利点
➀カセッテ装着、現像処理の必要がない。
➁リアルタイムに照射野の確認ができる。
照射野の大きな違い、遮蔽ブロック設置の誤り、マルチリーフコリメータ(MLC)の開閉確認などの照合が可能。
➂照合写真の記録・保存・検索が容易。
➃デジタル画像であるため、画像処理・解析が可能。
➄撮影と処理による時間・マンパワーが少なく済む。
➅照射中に患者さんが動いた場合に気づける。
➆治療台上での患者固定と照射野皮膚マークに基づいて行われる照射野設定のズレの補正に有用
・欠点
➀画質はLG(増感紙⁻フィルム法やCR法)に劣る。
➁高価である。
LGの画像について
LGは、散乱線による形成された画像です。軟部組織と骨との濃度差は小さいが、それでも肺・空気層などの低密度物質と軟部組織・骨とのコントラストは明瞭で、主に、それらの密度差のみが強調された像です。
なので、通常のレントゲン画像よりもコントラストも分解能も悪い画像であるといえます。
そのため、LGには撮影部位によって、得意・不得意といったことがでており、
胸部・頭部では、空気層と軟部組織の密度、すなわち濃度差を利用して比較的良好な画像を得ることが可能です。
ですが、腹部撮影では、軟部組織と骨組織の差がほとんどなく、判読が困難となることがあるようです。