放射線治療:測定に関する用語ーpart1ー

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今回は、線量測定時に使用される用語に関してまとめてみたいと思います。用語を覚えることは、最低限の領域として認識されているので重要です。といっても、多いので2回にわけたいと思います。

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基準線質

線量計を校正する基準となる線質です。

前もってことわりがない場合は、⁶⁰Coのγ線を指します。

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リファレンス線量計

放射線治療施設は、治療装置の出力測定を行うためのリファレンス線量計、つまり基準となる線量計を必ず備えもつ必要があります。

 

一般的には、リファレンス線量計=ファーマ型(電離箱)線量計を指し、それぞれの施設の基準となる線量計です。そんなリファレンス線量計は、校正の時点から特別です。

 

どういうことか。

 

リファレンス線量計は、産業技術総合研究所の標準線量計あるいは医療用線量標準センターの線量計との比較によって、コバルト校正定数 Nc(あるいは空気カーマ校正定数 Nx)および水吸収線量校正定数を与えられたものを指すからです。

 

つまり、国の基準となるような大きな線量計で決まった調整をしてもらった線量計ということです。(ネット通販で売られているような簡易版ではありません。)なお、電子線の深部量線量半価深R₅₀が4.0gcm⁻²(E₀≦10MeV)

トレーサビリティ

トレーサビリティとは、各施設のリファレンス線量計が、その校正に用いられた上位の線量計をたどると国家標準に行きつくことです。

 

このように、計測器の表す値が国家標準さらに国際標準にたどり着く経路が明らかで、かつ、表記された不確かさで国家標準さらに国際標準の値を反映していることをそれらが国家標準に対してトレーサブルであるといいます。

 

この一連の体系が確立されていることをトレーサビリティというのです。

 

このトレーサビリティが担保されていることが、施設の持つ線量計が、国の持つ線量計と校正が取れているかを判断する材料となります。

ビルドアップキャップ

高エネルギーX線およびγ線の照射線量を測定するとき、線量計の電離空洞内での吸収線量のビルドアップが形成されるように、線量計に密着して十分に厚いキャップを装着する必要があります。

 

その装着するキャップをビルドアップキャップといいます。

チェック用線源

線量計の経時変化、故障の有無など点検に用いる線源のこと。

文字のごとくって感じです。

空中照射線量

自由空間内のある任意の点での照射線量をいいます。

主に⁶⁰Coγ線および3M以下のX線に対して用いられます。

指示値

測定器の読み値(表示計)と線量計に表示されている倍率から得られる値です。

読み値とは・・・

測定器が表示しているままの値のことです。

また

測定値とは・・・

測定器の指示値と、全ての適切な補正係数および校正定数とから算出したある量の真値に対する最良の評価値となります。

コバルト校正定数

⁶⁰Coγ線を照射したときの電離箱線量形の指示値に、温度気圧補正・イオン再結合補正・極性効果補正など必要な補正を施したうえで乾燥空気の照射線量【Ckg⁻¹】を評価するための変換係数を指します。

といっても難しいので、

⁶⁰Coγ線を元に照射線量を評価するのに必要な値だと思ってください。

リニアックX線では、水ファントム中の準標準線量計との感度比較によっても得られ、この時のコバルト校正定数はNc,xと表記されます。

定位放射線照射ビームの測定では、施設間で得られたコバルト校正定数を感度比較によって得ることが一般的。

空中組織吸収線量

自由空間中に置かれた質量Δmの中心での組織吸収線量のことです。

ただし、Δmはこの中心部で吸収線量のビルドアップの形成がちょうど成立する大きさを持つ吸収体の質量とし、組織は水を際します。

主に、⁶⁰Coγ線または数MV以下のX線に対して用いられます。

水吸収線量校正定数

電離箱線量計の指示値に適切な全ての補正を施した後に、この定数を乗じて基準線質Q₀の水吸収線量を直接評価する校正定数。

ちなみに、線量計の読み値に種々の補正係数と水吸収線量校正定数を掛け合わせると、吸収線量を得ることができます。

ただ、この校正定数は電離箱の材質および形状に依存するため電離箱ごとに値が変化します。

水吸収線量校正定数は、コバルト校正定数と校正定数比都の積によって求めることが出来る値です。

そのため、基準線質が⁶⁰Coγ線のときには基準線質Q₀を省略することが可能です。

測定する放射線が基準線質(⁶⁰Coγ線)以外の場合には、水吸収線量校正定数と線質変換係数kQの積によって、線質Q(線質指標)に対する水吸収線量を評価することになります。

校正定数比

水吸収線量校正定数とコバルト校正定数の両校正定数比ND,W/Ncのことです。

放射線治療では、通常、水吸収線量を使用します。

しかし、現時点では、国家標準機関の産業技術総合研究所から放射線治療のために供給される標準線量は、⁶⁰Coγ線の照射線量であるため、そのまま使用することができません。

いずれ、水吸収線量で供給される時が来るのかもしれませんが、それまでの間は、照射線量を評価するコバルト校正定数Ncを直接的に水の吸収線量を評価できる水吸収線量校正定数ND,Wへ変換する校正定数比KD,xが必要となるのです。

よって、この校正定数比は各々の線量計でも異なり、⁶⁰Coγ線に対するCλ(X線用吸収線量変換係数)に相当するものとなります。

温度気圧補正係数

温度および気圧による電離箱内の空気の質量変化に対する補正係数です。

通気性の電離箱で必須です。

極性効果補正係数

集電極電圧の極性の違いにより、線量計の指示値に差が生じる現象。

電離箱空洞内径が6㎜程度の円筒形電離箱線量計ではほとんど問題にならないのですが、平行平板型電離箱線量計では補正が必要となります。(電子線の場合では、各深さで補正が必要)

極性効果の補正はそれぞれの測定で印加電圧の極性を正負に切り替えて、読み値の平均をとります。極性を切り替えた直後は電離箱が不安定な状態になるため、安定するまで15分くらいの時間を置いて測定します。

イオン再結合補正係数

照射により電離箱内にできたイオン対が、再結合によって失われることに対する補正係数です。

主に線量率、電離箱の形状や大きさ、印加電圧に依存します。

イオン再結合補正係数は連続放射線の場合とパルス放射線の場合に分けて考察する必要があり、

具体的には、

リニアック、マイクロトロンのX線および電子線はパルス放射線、⁶⁰Coなどγ線は連続放射線

といった感じです。

さらに。イオン再結合補正係数は深さ毎に求めるため、2点電圧法の1/2電圧法が用いられます。

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