放射線治療では、ビームの進行方向の吸収線量だけではなく、進行方向と垂直方向(横方向)の線量も重要となり、QA・QCにも関わってきます。
新規装置の導入時や定期的な測定にも必要です。今回は、その指標となるOCRとOCRの図から求められる平坦度についてまとめてみたいと思います。
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OCRとは?
OCR(off-center ratio)とは軸外線量比のことで、同一深部における中心軸の線量と中心軸外の線量の比のことです。
別称では、OAR(off-axis ratio)ともいいます。
OCRはビーム中心軸の線量Dを基準としたビーム中心軸に垂直方向にx離れた位置における線量の割合です。なので、式で表すと以下のようになります。
OCRはとておも重要な因子の一つです。
というもの、治療に使用する放射線ビームは一本の線上ではなく、ある幅を持ったビームであるからです。そのため、照射の中心地点と比べて、同等の線量をどの程度幅を持って照射されているかによって、照射を行える腫瘍の体積や正常組織への防護を考えることができるためです。
では、どうやってOCRは測定されるのか。
PDDは、線量計をビーム中心軸の進行方向、つまり水中の深さを変えて測定を行っていました。
一方、OCRでは、線量計の設置されている深さを変えずに、横方向に移動させながら測定を行います。
図で比較すると・・・・
となるのですが・・・
ここで、多くの人が思うではないでしょうか?
なにをって?!
測定の時、線量計をいちいち動かすのめんどくさいし、そんなに毎回同じように測定できるのか?!と。。。
なので、最近ではOCR測定特化した線量計が存在しています。どんなのかというと、線量計が連なっているような形をしたものです。
上の図のように、線量を測定できる箇所が多く一定間隔で配置されていれば、わざわざ線量計を照射ごとに動かす必要がなくなるのです。
ちなみに、PDD測定には使用できません。X線の深度が深くなるほど、線量計にX線が吸収されてしまい、正確な測定が行えないからです。そうやって、求められたOCR曲線が以下のようになります。
X:ビーム軸からの距離
L:ビーム軸から照射野端までの距離
X/L=0:ビーム軸上
X/L=1:照射野端
上の図では、照射野端での線量は、中心軸に比べ、50%程度の線量になっています。
このOCR曲線とPDD曲線を組み合わせることで、深さと横の線量がわかり、任意の点での吸収線量を計算できるようになるのです。
そんなOCRの特徴を以下に挙げていきたいと思います。
・OCRの特徴
➀照射野に比例してOCRは広がりを見せるが、照射野端の傾きはほぼ変わらない。
➁測定深が深くなるにつれてビームの広がりが大きくなり、結果、照射野も広がる。
そうすると、照射野端の傾きが緩やかになり方の部分尾線量が相対的に少なくなる。
➂エネルギーによって平坦度が異なる。
エネルギーが高くなるほど、平坦度がよくなる。
➃ウェッジフィルターを使用した場合、薄いほうが相対的に線量が高くなる。
測定深が深くなるほど、ウェッジフィルターの効果が緩やかになる。
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平坦度とは?
平坦度とは、
照射野内の最大吸収線量と最小吸収線量との比の最大値をを求め、百分率(%)で表したものです。
その式は
この式で誤解されやすいのは、OCR曲線に描かれている最大線量と最小線量の比でなく、あくまで照射野内の線量同士の比であるということです。そのため、OCR曲線でいうと下の図で示すプラトー領域が主です。
半影の影響を受ける範囲は含まれません。(半影の影響を含むと平坦度は一気に悪くなる)純粋な照射野内の線量同市で評価することが重要なのです。
この平坦度は、X線および電子線の照射野内の放射線強度の均一さを表す指標として利用されています。平坦度は照射野が大きくなるほど、線量にバラつきが出やすいため悪くなる傾向にあります。
平坦度が悪いということは、照射野に含まれる病巣への照射線量にバラつきが生じやすくなってしまうということです。そのため、平坦度の測定は、6カ月~毎年ごとに行い、適切な照射が行えるのかどうかチェックが欠かせません。
ちなみに許容範囲はX線と電子線では異なります。
・X線の場合
照射野30㎝×30㎝までは106%以内
照射野30㎝×30㎝以上は110%以内
・電子線の場合
90%深部量百分率点と表面における幾何学的照射野の端との距離が15mm以内