これまで、CT画像再構成と言えばFBP(filter back projection)法でしたが、最近は逐次近似再構成法が通常の使用ともなってきています。逐次近似再構成法は、元々あった、原理であったのですが計算に時間がかかるためにFBP法主流であったのです。
ただ、この二つの違いは何なのか。逐次近似法の利点や欠点とはどういったものがあるかなど理解しきれていない方も多のではないでしょうか。
個人的には、その原因にはFBP法も逐次近似法もなんやら複雑な計算があるためだと考えていますが。
そこで、今回はそういった難しい計算を向きにその二つの違いをまとめてみたいと思います。
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フォワードプロジェクションとバックプロジェクションとは?
CT再構成の基本はフォワードプロジェクションとバックプロジェクションの二つです。
なので、今後の話を理解しやすくするためにこの二つから説明したいと思います。
まず、フォワードプロジェクトとはなにか?
フォワードプロジェクションとは、いわば普段のレントゲン撮影のようなものです。X線照射方向から見た投影データであり、そのデータから画像を作り、そこから体内になにがあったのかというのを判断することができます。
一方、バックプロジェクションとは、フォワードプロジェクションとは逆の手順を言います。つまり、得られた投影データを逆再生するようなもので、画像状態からもとの状態へと再現することになります。
この話は長くなるほどわかりにくくなるので、図で簡単なイメージを掴むことが一番かもしれません。ので、さっそく、参考図を下に載せたいと思います。
ここで、もうひとつだけ理解していただきたいことがあるとすれば、バックプロジェクションにおける問題点です。
フォワードプロジェクションは、対象を通過したときの2次元の情報を得ることができれば、その役割を果たしたことになります。
しかし、バックプロジェクションの場合はそうはいきません。1枚のレントゲン画像は2次元の情報しかもっていないため、その画像に含まれる奥行というのは正確ではありません。
よって、1方向のフォワードプロジェクションによって得られたデータからバックプロジェクションによる物質の再現を行おうとしても、奥行きがわからないため正確なものはできないのです。3次元の情報をもつ断層像を逆投影によりつくるためには、3次元方向からの投影データが必要になるのです。
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FBP法とは?
では、CT画像再構成法であるFBP法とはどういったものか、ここから説明したいと思います。
基本は、フォワードプロジェクションからのバックプロジェクションです。
CTの再構成では、まず、体内のデータを得るため、フォワードプロジェクションによる投影データの取得を行います。もちろん、先ほどの正面からの投影データだけでは、普段のレントゲン画像が得られるだけなので、今度は、360°全方向からの投影データを取得していきます。
この時に、得られるのがサイノグラムという投影データの集合体であり、CT撮影によって得られた純粋な『生データ』です。
サイノグラムは、X線管球の位置とフォワードプロジェクションによるデータをひとつに表したもので、CT一回分の投影データを持っているということになります。
しかし、このサイノグラムの状態ではどんなデータを得てなにを表しているのかというはわかりません。
そこで、このデータをバックプロジェクションによって逆再生してやることで、元々の構造を再現してあげるのです。
すると、輪切りのCT画像が得られることになります。(ここまでの過程を逆投影法といいます。)
しかし、ここで問題が発生します。
どういうわけか、バックプロジェクションによって得られる輪切り画像はどうしてもボケてしまうのです。この理由には、投影データには、機械的な様々な要因が重なるからなのですが、少し難しくなるのでここでは飛ばしてしまいましょう。
とにかく、ここまでで覚えてほしいことは、投影データをそのまま逆投影しても得られる画像はボケてしまい、とても有効な画像であるとは言えないということです。
では、どうするのか。
その対策として、使用されるのが、画像フィルター(画像再構成関数)です。この場合、主に行われるのは、鮮鋭化処理であり画像の輪郭をはっきりとさせボケのない画像を得ることを可能にしています。
この逆投影した画像はボケてしまうというのは事前にわかっていることなので、そのボケを解消するのが目的であらかじめ、画像再構成時に一連の作業に含めて行ってしまうのをFBP法(filter back projection:フィルター逆投影法)となります。
・FBP法の利点とは?
画像再構成時間が短いことです。
再構成時に行う計算が比較的少ないため、短時間で断層画像を得ることができます。
そのため、画像を確認しながら検査を進めることができこと、または、救急患者のように時間的に切迫している場合でも行うことが可能といえます。
・FBP法の欠点とは?
FBP法における問題点は、画像フィルター(再構成関数)の問題です。
単純な逆投影法では、再構成された画像はボケてしまうため、欠かせない存在であるといえます。
ただ、その一方で、画像フィルターが行う処理が鮮鋭化であることに注意が必要になるのです。
鮮鋭化という画像処理は、画像の輪郭をはっきりとさせるといったようなエッジ部分を強調させることで、画像に含まれるボケをなくすことが出来ますが、それと同時に鮮鋭化を強めるほどに画像ノイズも増加してしまうのです。
エッジの強い画像は小さな骨折を見分けることが出来る反面、ノイズが多いため小さな濃度差しかない病気を発見しにくくしてしまいます。
そのため、実際の撮影では、撮影部位によって、画像フィルターを使い分けが必要であり、骨なら骨用の腹部の軟部組織であればそれ専用のを選択することが可能になっています。(GEのHEAD,standaredやTOSHIBAのFC03,FC13,FC80など撮影毎に設定しているあれのことです。)
一見、便利に感じるかもしれませんが、統一された画像フィルター使用できないという欠点をこういう言葉で隠されているにすぎないのです。
なので、ある程度知識が不可欠になり、使用者によって差が生まれてしまうため欠点ともいえるのです。
逐次近似再構成法とは?
では、逐次近似法とはどういった再構成なのでしょうか。全く違うものと考えている方もいるかもしれませんが、実はやっていることはFBP法と途中まで一緒です。
どういうことか順序を追って説明していきましょう。
まず、逐次近似再構成であってもフォワードプロジェクションによって被写体の投影データを得ることは同じです。CT撮影を行うので、撮影自体は全く同じなのです。つまり、被写体の周りを1回転することで、3次元の投影データを得ます。
さらに、この後のバックプロジェクション(逆投影)を行うという点では同じです。
1回転分の投影データを逆投影することで断層像を再構成します。
しかし、この時の問題点を皆さん覚えていますか?
そうです。画像フィルターも使用せずに画像再構成すると得られる再構成画像はボケてしまうのです。
そこで、FBP法とは異なる方法でこのボケをなくすことをしていきます。
逐次近似法の場合、逆投影によってボケた再構成画像をさらにフォワードプロジェクションによって、再度、サイノグラムに戻すことします。
この時、得られるサイノグラムが撮影時に得られた『生データ・サイノグラム』と同じであれば良いのですが、実際に得られた画像にはボケの成分が含まれてしまっているので、実際には同じになりません。
そこで、『生データ・サイノグラム』と『画像のフォワードプロジェクションによって得られたサイノグラム』の間で引き算を行います。
その結果、得られるのは再構成時に生まれてしまった、余分な画像ボケの成分になります。
少し整理する意味で式に直すと、
『画像のフォワードプロジェクションによって得られたサイノグラム』ー『生データ・サイノグラム』=【画像再構成時に生まれたボケ】
です。
この余分なボケの成分をサイノグラムから取り除き、再度、画像を再構成を行います。
すると、最初に再構成した画像よりも輪郭がはっきりとした画像を作ることができました。
しかし、ここでもどういうわけか画像はボケてしまいます。
そこで、先ほど同様に、『生データ・サイノグラム』と『画像のフォワードプロジェクションによって得られたサイノグラム』の間で引き算を繰り返し行い、その差から生まれるボケ成分をサイノグラムに補正を加えます。
その後に再構成して出来上がる画像は、2枚目よりもボケのない画像になっています。
それでも、やはりある程度、画像にはボケが生まれてしまうため、何回も何回も回数を重ね、最終的に真の情報を持った画像を作ることを行います。
この一連の再構成法が逐次近似法です。
少し長くなってしまったので、順序を整理しまうと、
➀フォワードプロジェクションによって、360°分のサイノグラム(生データ)の取得。
➁バックプロジェクション(逆投影)によって、断層画像の取得。(しかし、画像はボケている)
➂画像をフォワードプロジェクションによって、再度サイノグラムの取得。
➃➂のサイノグラムと➀のサイノグラムを引き算し、サイノグラムに含まれるボケ成分を抽出。
➄➃で得られたボケ成分をサイノグラムに補正をかける。
➅➄で得られたサイノグラムに逆投影をかけて、断層画像の取得。
➆➁~➅の手順を画像が完成するまで繰り返す。
となります。
少し複雑なようなですが、数値の計算がない状態で考えると少しわかりやすくなるのではないでしょうか。
この一連の流れを図で下に載せたいと思います。
・逐次近似法の利点とは?
逐次近似再構成法では、多くの計算を行うことで被写体の情報(X線の吸収値)を正確に再現できることになっています。
よって、FBP法と比較して以下のような利点があります。
➀空間分解能の向上。
➁低コントラスト分解能の向上。
➂ノイズの低減。
➃被ばく線量の低減。
少ない線量でも、真のCT値を表現できることやノイズが低減できることによって、大幅な被ばく線量低減効果が期待できます。
➄CT値がより忠実になる。
➅ブルーミングアーチファクトの減少。
骨やステントなどの高吸収物質があると、FBP法ではその部分が膨張したように描出されてしまい、細い血管にステントが入っていた場合、血管内腔の評価が難しかったが、CT値が忠実に表現され、空間分解能が向上されることによって、そのようなブルーミングアーチファクトの低減効果が見られる。
➆画像フィルターが不要。
繰り返しの計算によって、真の値を導き出す方法のため、画像再構成関数が不要です。そのため、どの部位を撮影しても同じ線量下であれば、ある程度同じような画質を得ることができます。
・逐次近似法の欠点とは?
逐次近似再構成法の最大の欠点は、何度も再構成をしては戻すということを繰り返すために計算時間が膨大になってしまうことです。そのため、原理自体はずっと昔からあったのに関わらず、最近まで実用的でないほど、時間がかかっていましまた。
どれほどか。参考までですが・・・
FBP法が7~8分で終える再構成を純粋な逐次近似法では、1日近くかけてやっと終えるといった感じです。そこで、逐次近似法を応用した再構成法が多く採用されていました。
最近では、工夫とPCの処理速度の向上によって純粋な逐次近似法を採用した、CT装置も多くなっているようです。