乳がんの罹患率が多くなってきた現在では、マンモグラフィ検査への注目も高くなっているのではないでしょうか。
そこで、今回はマンモグラフィ検査の役割についてまとめてみたいと思います。
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そもそも、マンモグラフィ検査とは?
マンモグラフィ検査とは、X線を使った乳房専用の画像検査です。専用の画像装置に乳房をのせ、圧迫筒で上下から圧迫し、乳房を押し伸ばした状態で撮影を行います。
撮影自体にかかる時間は1秒に満たない程度ですが、乳房が圧迫される時間は数秒程度あるため、痛みからか受診者は実際の時間より長く感じるかもしれません。
また、撮影は上下方向(CC)、内外斜位方向(MLO)と2方向で行うことが一般的です。そのため、片方の乳房でも2回圧迫され撮影することになります。
さらに、マンモグラフィは左右の画像を見比べて、病気なのか判断します。必ずといっていいほど、両方の乳房を撮影することになるでしょう。
もしあなたが、「右側だけしこりを感じるから、右だけ検査してほしい…』と思われていても、片方だけでは、病気の有無に関する判断が困難になるため、自ずと左側も撮影することになります。
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マンモグラフィ検査で見つかる病気とは?
マンモグラフィで見つける病気というか異常は、主に乳房内の『石灰化』と呼ばれるものです。石灰化とは、カルシウムの塊のようなもので、画像には白く写りこんできます。
「石灰化ががんと関係があるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、実は、大アリなんです!!
どういうことか。
実は、乳がんは石灰化を伴い成長することがあるからです。代表的なものとして、壊死型石灰化が挙げられます。乳がんができると、乳管内に癌が増殖し栄養状態が悪くなります。そして栄養状態が悪い細胞が壊死を起こし石灰化も起こすのです。
といっても、石灰化があるイコール乳がんといえるわけではありません。
乳房内にできる石灰化の95%が良性石灰化(原因として、乳腺症、線維腺腫、嚢胞など)と言われるものであるため、がんとは無関係です。
しかし、乳がんが石灰化を伴う病気である以上、マンモグラフィで写る石灰化は無視できない存在であるといえます。
マンモグラフィでは、
➀乳がん
➁乳腺線維腺腫(良性腫瘍
➂乳腺症
など代表的な病気の検出が可能と言われていますが、一番に注目されやすいのは石灰化の有無といえるかもしれません。
求めらる診断とは?
といっても、石灰化の有無だけが求められる診断とは言えません。マンモグラフィでは、以下の4つ項目を診断し、乳がんが疑われるのかどうか判断し、他の検査の必要性まで判断することになります。
➀存在診断
病気があるのか?これ一点を評価する診断です。画像に病気が疑われるものを写せているのかどうかというのが重要です。よって、撮影する診療放射線技師の腕が試される場面といえます。
➁部位
疑わしい所見が、乳房のどの部位にあるのかを指摘します。部位に関する取り決めは、乳がん取扱い規約によって決まっており、それに準じるのが一般的です。
むしろ、勝手に決めたものを誰かに伝えても誤解を生じることになるため、覚えるのが需要です。内外斜位撮影(MLO)と頭尾撮影(CC)の部位名を下に紹介します。
ⅰ.MLOの場合・・・
乳房を上から3等分して
上のL、中央のM、下のLとなる。
また、乳房から2㎝の範囲をSと呼ぶ。
ⅱ.CCの場合・・・
乳房を2等分して
上のO、下のIとなる。
乳房から2㎝の範囲をSと呼ぶのはMLO時と同様。
➂鑑別診断
画像を見て、以下の5つの項目からどれに該当するのか判断する段階。カテゴリー判定と言われるものです。
カテゴリー1 異常なし
カテゴリー2 良性
カテゴリー3 良性と思われるが、癌を否定できない
カテゴリー4 癌の疑い
カテゴリー5 まず癌である
ここで、カテゴリー3以上である場合には、超音波検査やMRIといった他の検査が必要であると判断されます。
➃性状診断
がんが疑わしい場合、その組織型まで判断できると最適です。組織型は、まず大きく上皮性腫瘍または非上皮性腫瘍のどちらなのか判断されます。
乳がんの多くは上皮性腫瘍です。がんが乳管の内側に留まっているか、外側まで広がっているのかで浸潤がんと非浸潤がんを区別します。
浸潤がんが最も多くその中でも乳頭腺管がん、充実腺管がん、硬がんの3つが多い。
その他は特殊型として分類される。
上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍では治療法の違いがありますが、乳がんの多くを占める上皮性腫瘍であれば組織型によって治療方針は変わることはほとんどありません。
マンモグラフィだけで、ここまで判断するのは難しい場合もありますが、組織型によって画像所見にも変化があると言われています。
石灰化が発見できない場合とは?
定期的にマンモグラフィを受けていたのに関わらず、進行した乳がんが発見された。そんな話を聞いた方もいるのではないでしょうか。
乳がんは石灰化を伴う病気で、マンモグラフィは石灰化を見つけるのが得意な検査であるはずが、なぜこのようなことが起こったのでしょうか。
キーワードとなるのが「乳腺濃度」です。乳腺濃度とは、乳腺組織が乳房内にどれだけ存在するのか割合のことです。
そして、乳腺濃度が高い場合に石灰化を発見できないというケースが起こるのです。
それは、なぜか。乳房は脂肪と乳腺組織で構成されており、画像では脂肪は黒く、乳腺組織は白く写ります。
脂肪が多い乳房の場合、乳房が全体的に黒く写るため、白い石灰化が合った場合、指摘するのは比較的容易であるといえます。
一方、乳腺濃度の高い乳房の場合、乳房全体が白く写ってしまうため、石灰化があっても乳腺組織に隠されてしまい、病変に気づきにくくなってしまうのです。
もっと率直にいうと、乳腺濃度が高い人は、マンモグラフィを受けても乳がんを発見できないとまでいえるかもしれません。
乳腺濃度は若年者や日本人のようなアジア人が高いと言われており、若い日本人はマンモグラフィに向かないということになります。ただ、年齢とともに乳腺組織は脂肪へと変化するため、高年齢になるほど問題がなくなるともいえます。
そのため、マンモグラフィによる検診の対象が40歳以上と言われているのですが、40歳でも乳腺濃度が高い人は珍しくはないため、マンモグラフィを受けたら自分の乳腺濃度がどの程度なのか聞くことが重要となります。
乳腺濃度が高い方は、超音波検査またはMRI検査を別に受けることで乳がんの発見率が高くなると報告もあるため、他の検査で代替えすることも考える必要があります。
長所と短所とは?
最後にマンモグラフィの長所と短所を少しだけまとめたいと思います。
・長所
➀画像に客観性がある。
➁石灰化が見やすい。
➂カテゴリー判定が浸透しているため、施設間でのブレが少ない。
➃装置への精度管理への意識が高いため検査の質が保たれている。
・短所
➀X線吸収差の少ない2つものの描出能が低い
白く写る環境で別の白いものが写っていても発見しにくい。
(乳腺濃度が高い乳房の場合など)
➁撮影時に乳房のポジショニングが難しく、技術差が出やすい。