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Gd造影剤で絶対に避けなければならないNSFとは?

MRI造影剤として、主にGd造影剤が使用されています。ただ、やはり、どんなものにも副作用なる怖いものが存在します。

 

そして、Gd造影剤で最も避けなければならないと言われているものが、NSFと言われるものです。今回は、Gd造影剤とNSFについてまとめてみたいと思います。

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Gd造影剤の復習

MRI造影剤には、Gd造影剤が使用されています。

 

Gd造影剤は、プロトンの緩和時間の短縮効果を持ち、T1強調画像において信号強度を高めるのが特徴です。ただ、造影剤に使用されているGdイオンが実は問題なのです。

 

なぜなら、Gdは重金属であり、人体にとって毒である上に投与された後も体外に排泄されることがないからです。

 

では、なぜGdが造影剤に使用されているのでしょうか。

 

それは、常磁性体の中でGdが最もプロトン緩和時間を短縮効果をもち、MRI画像の信号強度に強い影響をもたらすことが出来たからです。しかし、先ほども言いましたが、Gdは人体にとって毒であるためそのまま使用することはできません。(検査で使用する薬剤は、治療に使用される薬剤以上に安全性が求められるのです。)

 

そこで、Gdを人体に影響がでないように包みこんでしまおうと考えたのです。

 

この包み込む技術のことをキレート化と言います。キレート化によって、本来、人体にとって毒であるはずのGdは人体に影響を与えることなく、体外に尿として排泄される薬剤にすることができたのです。

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キレート化が外れてしまうと・・・

キレート化によって、Gd造影剤は体内に投与された後も、尿として排泄されるようになり、人体に影響を与えることなく体外に出ていくことになります。

 

具体的には、投与後2時間で60%以上、6時間後までには80%以上、24時間までには90~99.3%が尿中に排泄されると言われています。ただ、これは腎機能が正常な方への投与の場合に限ります。つまり、腎機能に障害を持つ場合は、投与された造影剤の排泄が遅れることがあるのです。

 

それでも、Gd造影剤はキレート化によって人体に無害化されているのだから、ある程度排泄が遅れても大丈夫なのではないか。

 

と、思う方もいるかもしれませんが、違います。投与されたGd造影剤が体内に長時間残留してしまうと、キレートが外れてしまっているのではないかと懸念があるのです。

 

そして、キレートから外れたGdが皮膚などに沈着し、NSFという病気をもたらしているのではないかと言われています。(詳細な機序はまだ不明ですが、これが最も有力説)

NSFとは?

NSFとは、Nephrogenic Systemic Fibrosisの略であり、訳すと腎性全身性繊維症といいます。

 

NSFは、重症腎障害患者、特に透析患者で皮膚の腫脹や発赤が急性ないし亜急性に発症し、進行すると皮膚の硬化や関節の拘縮を生じてしまい、高度の身体障害をもたらす言われる恐ろしい病気です。

NSFになると・・・

NSFの発症と腎障害が密接に関わることが知られており、報告されているNSF患者さんは全て、腎障害、その多くは血液透析あるいは腹膜透析の方と言われています。

 

NSFになると、疼痛や搔痒感を伴う、四肢の皮膚腫脹、発赤、硬化として比較的急性に発症します。足など下肢から始まることが多く、通常は左右対称性ですが、左右差を認めることもあるようです。

 

皮膚病変は数カ月間進行し、体幹部へ伸展することはありますが、頸部や顔面にまで侵されることはないようです。

 

皮膚の硬化が進行すると四肢関節の拘縮を生じます。手首の屈折は不能となり、手指は固定されるようです。

 

膝などでは屈曲や進展は困難となり、足関節は伸展位にて固定されることが多いため、行動が制限されてしまいます。

出典:www.kawamuranaika.jp-

NSFの治療には?

 

様々な治療が試みられているのですが、有効性が確立された治療法はまだないようです。そのため、発症を予防することが唯一の策と言われています。

 

NSFの危険因子とは?

ただ、Gd造影剤だけがNSFの発症に関わっているわけではありません。NSFの発症における考えられている危険因子をまとめます。

 

➀腎機能障害

➁Gd造影剤の投与、特に多い累積投与量

➂炎症性誘発性疾患

➃高カルシウム・高リン血症

➄エリスロポエチンの大量投与

➅代謝性アシドーシス

➆甲状腺機能低下

 

Gd造影剤によるNSFを防ぐには?

先ほども言いましたが、NSFの治療法はまだありません。そのため、発症を予防することが最も効果的です。

 

では、Gd造影剤よるNSFを防ぐ方法とはどういったものなのでしょうか。方法は主に2つで、気を付ければ防ぐことが出来るものといえます。。

 

➀診断に不可欠と考えられる場合にのみ使用する。
造影剤は、人体にとっては異物も同然であり、排泄には少なからず人体に負荷をかけることになります。そのため、使用にはそれだけの理由が必要となるのです。

 

➁腎機能障害を持つ患者さんには投与しない。

Gd造影剤は、そのほとんどを尿として排泄します。腎機能がとても重要です。よって、以下に該当する場合は造影剤の投与を避け、他の検査で代替できるか考慮することが推奨されています。

 

➀長期透析が行われている終末期腎障害

➁透析を行っておらず、GFRが30ml/min/1.73m²未満の慢性腎不全

➂急性腎不全
 急性腎不全の場合は、腎機能が安定していないので、eGFRによる評価は行うべきではない。

➃すでにNSFと診断されている場合