放射線治療では、腫瘍の種類や位置によって照射法を変化させています。
一般的に、外部照射と言われる方法でも、1方向または2方向から照射するのか、また、照射する方向すら異なってくるのです。
今回は、外部照射法・固定照射の種類についてまとめてみたいと思います。
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固定照射法とは?
放射線ビームを照射中に動かすことなく固定して行う方法です。
おそらく、最も一般的に考えられている手法になると思われます。
1方向からの照射を「1門照射」、2方向からの照射を「2門照射」、多方向からの照射を「多門照射」と呼ばれており、照射を行う方向が多くなると、標的となる腫瘍に線量が集中し、回転照射に近い線量分布になるのが特徴です。
腫瘍の種類にもよりますが、多門照射を行うことで正常組織への影響を最小限に留めることを可能にしているのです。
では、具体的にどのような使い分けがされているのか、以下にまとめていきたいと思います。
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1門照射
1門照射は比較的浅在性の病巣に行われる手法です。
病巣が体表近くに存在しているため、病巣から最も近い1方向からだけ照射する方が都合が良い場合に行われるのです。
使用される放射線は、電子線または3~6MVのX線であり、正常な深部組織にまで放射線が届かないような配慮がされています。
ただ、それでもX線は透過性が高く深部まで届きやすくかつ、最も治療効果を発揮するにはある程度の深さが必要となる(ビルドアップ効果のため)放射線です。
そのため、X線を使用する場合治療範囲が表面を含む場合には、表面線量の低下を防止するためにボーラスという線量補正の器具を使用します。
それでも、ビームに沿って標的以外(標的より深い位置にある)の正常組織が照射されることは避けようがありません。
正常組織の耐用線量には常に注意が必要です。
※1門照射の適応
胸壁腫瘍、皮膚がん、脊椎骨などの骨転移の疼痛緩和など
2門照射
2門照射は方向の組み合わせによって呼び方が異なるため一つ一つまとめます。
・対向2門照射
体軸の中心付近に存在する病巣にたいして、対向する2つの照射野から照射する方法です。
この照射法は照射内の線量分布は入射面から射出面までほぼ均等なのが特徴です。
そのため、
➀腫瘍範囲が厳密に設定できないようなとき
➁標的部位が治療日ごとに移動しやすい
という2つの症例が適応になります。
具体的には・・・
※適用
食道がん、喉頭がん、咽頭がん、子宮頸がん、縦隔腫瘍(肺炎を避ける必要あり)、全脳照射など
・直交2門照射
2つの照射野が90°前後で交差する照射法であり、偏在性病巣に使用されます。ただ、そのままだと線量分布に偏りがでるため、楔フィルタやボーラスを必要とします。
※適応
上顎がん、脳腫瘍、偏在性の肺がんなど
・接線照射
体表面に対して接戦方向から対向2門照射する方法で、体表に近い偏在性の病巣を対象に行われます。
もっと具体的にいうと、腫瘍領域が体表に広く存在しており、かつ、深部への照射をさけたくなるような臓器の存在がある場合に行われます。その中でも、乳がんが最も代表的な適応です。
乳房の温存療法後の放射線治療では、普通の対向2門照射のような照射を行うとその延長線上にある肺にまで照射が行われることになります。
それでは、放射性肺炎を起こしやすくなってしまうので、肺を保護するため胸壁照射が理想的な照射として言われています。ただ、体表に偏在する病巣に対しては体表近くが高線量域になってしまうので、ウェッジフィルタを使用し線量分布を均等にする工夫が必要です。
※適応
乳がん、胸壁腫瘍、肋骨転移など
・分割照射
ここでいう分割とは、照射回数のことではなく、ビームの分割を言います。
どういうことか。
この照射法では、1つの照射野の中央に遮蔽用ブロックを置き、2つの照射野に分割するのです。ビーム束を割るようなイメージです。
この照射法は、子宮頸がんの密封小線源に併用が主であり、直腸障害を予防するために中央遮蔽を行って、このような照射になってしまうのです。
多門照射
2門も多門に含まれるのでは?と思うかもしれませんが、多門照射とは、3門以上の多方向から放射線を集中させる照射法を言います。
この照射法の主な目的は以下の2つです。
➀体中心にある標的に可能な限り線量を集中させる
➁重要な正常臓器をさける
線量分布は門数・線質・各照射野の中心軸方向・照射野の形と大木さ・ウェッジフィルタなどで変化するため、計画が難しくなります。門数が多くなるほど回転照射に近い線量分布になっていきます。
※適応
頭頸部がん、肺がん、食道がん、膵がん、膀胱がん、前立腺がんなど