放射線治療における病巣を照射する体積は段階的にいくつかに構成されています。
この体積は照射する範囲を決定するうえでとても重要で治療計画を立てる際にも用いられるため、その定義はICRU50・62で明確に定義されています。
今回はその体積についてまとめてみたいと思います。
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模式図に示すと
以下のような図になり、照射される核種体積の関係は『GTV<CTV<ITV(CTV+IM)<PTV(CTV+IM+SM)<TV<IV』
となるのですが、それぞのどのような定義のもと成り立っているのか一つずつ見ていきます。
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GTVとは?
GTV(gross tumor volume)とは肉眼的腫瘍体積のことです。
病巣であることが明らかに識別でき、触れたり、見たりすることができ、明確にその領域を表示することが可能な範囲および位置を示しています。画像を撮影する側から見ると、画像検査で診断上明確に判断できる範囲とも言えます。
ただ、少し誤解されやすいのは、GTVは原発巣(病巣の本体)だけを指すものと思われることですが、実際には原発巣はもちろんのことリンパ節転移、遠隔転移も表現には含まれているのです。そして、それぞれ以下のように英表現されます。
・原発巣⇒GTV primary
・リンパ節転移⇒GTV nodal
・遠隔転移⇒GTV M
では、ここで疑問となるのはGTVの位置や大きさはどのように決まるのでしょうか?それは、肉眼的に見える範囲であることから、触診や内視鏡などの臨床検査、さらにCT、MRIなど画像検査でも決定することができます。
画像検査の中でも、CTは治療計画に使用されることからも基本はCTとなることが多いようです。
さらに、GTVの領域を正確に捉えることはとても重要です。
その理由は以下の3つです。
➀GTVはTNM分類という病気の進行の具合を判断に用いられるため
➁根治治療を目指す場合には、GTV全体に均一な放射線の照射を行う必要ありGTV内の投与線量が需要となるため
➂治療期間中にGTVの縮小が治療効果を判定するうえで重要視されるため
これらのことからもGTVの決定は放射線治療を行う上で最も基盤となる部分を決めることと同義といえるかもしれません。ただ、手術後の予防的な照射の場合には、腫瘍は手術によって除去された後なので、GTVは設定できないことになります。
CTVとは?
CTV(clinical target volume)とは、臨床標的体積のことです。肉眼的腫瘍体積と顕微鏡的にみて病巣が存在する領域を含む組織体積を足し合わせたものを表しています。
なので、CTV=GTV+その周辺に存在するsub-clinical(無症状や潜在性)な浸潤などを含む体積と表現されます。
この体積は、GTV同様に治療計画前に決定されます。
PTVとは?
PTV(planning target volume)とは、計画的標的体積のことです。すべての位置的変動の影響を考慮してCTVに線量を投与するための幾何学的な概念を示しています。
ここで、最も重要ななのは、位置的変動という言葉です。
では、位置的変動とはどういったものを表すのでしょうか。
放射線の照射を行う際、患者さんは治療装置の台に横になり照射する位置を決定します。が、照射は何日もかけて行われるため、毎回、同じ位置と領域に同じ線量を投与する必要があるのです。
ただ、ここで問題があります。人の体は、意識して動かす部位もあれば、無意識下でも自然と動いている部位があるということです。
そのため、たとえ体外から見て同じ位置と領域に照射を行ったとしても、実は、体内の腫瘍の位置と範囲は少しだけズレていたということが考えられるのです。
そのため、放射線治療ではその動きを考慮して、照射を行う必要があるのです。その定義として、IM(internal margin:内部マージン)とSM(set-up margin:設定マージン)が挙げられます。
・IM(internal margin:内部マージン)
呼吸、膀胱充満度、直腸充満度、嚥下、心拍、腸蠕動などによる生理学的変化を表したものであり、自分の意識では制御できないものを示す。
CTVとIMを合わせるてITV(internal target volume)と呼ぶこともあります。
・SM(set-up margin:設定マージン)
患者さんの位置合わせの不正確さと再現性の欠如を表したもの。または、患者さんの設定の変動、機器の機械的不確実性、線量測定誤差、シミュレータから治療装置への変換設定誤差など。
つまり、人的、機械的要因による誤差範囲を表したもの。
そして、このIMとSMの二つをCTVに足したものがPTVと定義されています。PTV(計画標的体積)=CTV(臨床標的体積)+IM(内部マージン)+SM(設定マージン)PTVの体積は治療計画中に決定します。
TVとは?
TV(treatment volume)とは、治療体積のことです。放射線治療医により、治療の目的を達成するのに最も適当であると選ばれ決定された等線量曲線に囲まれた体積を示します。
90%または95%の等線量曲線で表示された領域です。
治療を行う上で理想的なのは、PTV(計画標的体積)とTV(治療体積)が一致した体積であることです。そうであれば、周りの正常組織に照射されることが防がれることになるのですが、
実際にはTVがPTVの外側まで広がっていることが多いのが現状です。ギリギリの範囲の照射するというのは、病巣に適切な線量が投与されないリスクも高く成るため、このようになるのかもしれません。
このTVは治療計画の結果として、決定されます。
IVとは?
IV(irradiated volume)とは、照射体積のことです。
正常組織の耐容にとって有意だると考えられる線量が照射される体積です。一般的には50%等線量曲線で表された範囲になります。
この体積は、正常組織の障害発生に関連することになるので、正常組織からの観点ではとても重要な体積となります。治療計画の結果として決定される。
リスク臓器とは?
治療計画時は、リスク臓器も投与線量の決定に相当な影響を及ぼすことにあり、とても重要となるので最後にまとめたいと思います。
リスク臓器は、CTV(臨床標的体積)の内部または近傍に存在する放射線感受性が高い正常組織・器官のことです。
具体的にいうと、水晶体や脊髄、小腸など放射線による影響が出やすいものが挙げられます。ただ、脊髄は感受性の高い臓器ではありますが、照射野が小さい場合、限界耐容線量以上に照射されても障害が生じないことが多いと言われているので、脊髄に関しては、照射される範囲まで考慮する必要があります。
このリスク臓器を含めた体積をPRV(planning organ at risk volume)といい、治療期間中の要注意臓器のうごきと全期間中の設定の不確実性を考慮されたものになります。