放射線治療は、現在では一般的になりましたが、以前は特殊な治療法の一つでした。その放射治療の中でも、さらに特殊な治療として上がるのが全身照射と全皮膚照射の二つです。
今回はこの二つについてまとめてみたいと思います。
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全身照射とは?
その名の通り、患者さんの全身を照射する治療法です。
英語だとTotal Body Irradiationということから、TBIと略されることもあります。
ただ、全身に放射線を照射されるとなると、抵抗がありそうなものです。全身照射が必要な病気とはなんなのでしょうか。
それは、白血病です。
全身照射は白血病の方に対して行われる治療法なのです。
白血病は「血液のがん」とも呼ばれる病気です。
治療法には、抗がん剤治療を中心とした化学療法と輸血や感染症対策などの支持療法に加え、難治例では骨髄移植や臍帯血移植などの移植治療も行われます。
と、ここで疑問に思われることがあります。
白血病のどの場面で放射線治療、しかも全身照射が行われるのでしょうか。
・全身照射の目的とは?
目的は主に2つあります。
1つ目は白血病細胞の根絶です。
白血病の病気の根幹となる部位は骨髄(つまり全身の骨の中)です。そのため、全身に病気の根幹があることになります。
そのため、放射線で白血病細胞を倒そうとすると、必然的に全身に照射する必要があるのです。白血病細胞の根絶のためには、抗がん剤治療も併用されることになりますが。。。
2つ目は免疫抑制です。
難治性の白血病の場合、その治療法の一つとして骨髄移植が挙げられます。ただ、移植治療の場合、懸念されるのが宿主対移植片病(host versus graft disease:HVGD)と呼ばれるものです。
この宿主対移植片病(host versus graft disease:HVGD)とは?
移植した細胞に対し、患者さん(宿主)の免疫細胞が反応し、拒絶してしまうような状態のことです。
これでは、せっかく移植を行っても、期待される治療効果が現れません。
その対策として、行われるのが全身照射による骨髄細胞への攻撃になります。骨髄細胞を放射線で攻撃し、その動きを弱め拒絶反応を起こすことを防いでいるのです。
・使用される放射線とは?
高エネルギーX線またはγ線
全身に均等に線量を与え、不要な部分の過照射を避けるのがポイントです。そのため、放射線感受性が高く、放射線による障害がでやすい、肺、頭頸部、下肢、目などの部位を補償する必要があります。
補償材には、鉛、低融点合金、アクリル、ゲルなどが用いられ、肺や水晶体の遮へいが特に重要です。ちなみに、肺の線量は8Gy以下にすべきとの意見もあります。
・照射される線量とは?
全身に照射されるだけあって総線量は他の局所照射に比べ低いのが特徴です。
総線量12Gyを3~4日の6回に分けて照射するのが一般的です。なので、一日に2回照射する計算になります。
では、この線量を全身に照射されても平気なのでしょうか。(一般的に行われているので平気だろと思えればいいのですが・・・)
そこで、30日以内に集団の50%が死亡する線量を示す人間の致死線量LD50/30の線量と比べると人間の場合の全身被ばくでは5Gyと言われています。
すると、12Gyは5Gyに比べて多く、それだけでは確実に危機に瀕するほどの線量となります。
それでも行うのはなぜか。
それは骨髄移植を行うためです。
TBIは白血病患者の骨髄を一時的に完全に破壊するために行います。その後、骨髄移植を行い、ドナーによる提供された骨髄が生着し正常な血球を産出することで、骨髄死を起らないようにしています。
・全身照射の線量率とは?
全身に照射するだけあって、影響が出にくい低線量率で照射されることが一般的です。
具体的な値だと
5~10cGy/分
と言われており、1回の照射時間は30分~1時間かけて行われることになります。
・全身照射の照射法とは?
主に方法は3つです。
➀longSSD法
3m以上の長い、SSD(線源表面間距離)をとって照射する方法。X線は放射状に進むため、距離を長くするほど、照射される範囲が広くなる性質を利用している。
固定照射法の一つ。
➁ムービングビーム法
線源を水平に移動する方法。
狭い範囲の照射を、数回に分けて線源側を動かしながら行う。運動照射法。
➂寝台移動法
患者さんを水平移動させて照射する方法。
運動照射法。
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全皮膚照射
全皮膚照射は菌状息肉腫(皮膚T細胞性リンパ腫の1つ:皮膚がんの1種)の際に行われる治療法です。
先ほどの全身照射と違い今回の目的は皮膚への照射が目的のため透過性が高いX線やγ線は使用されません。その代わりに使用されるのが、2~6MeV程度の高エネルギー電子線です。
電子線はエネルギーによって、飛程が決まっており潜在性のがんへの照射に向いている放射線です。電子線を使用することにより、患者さんは皮膚表面のみが照射されるため、全身状態に著名な変化を起こさずに済むのです。
ただ、皮膚には前後左右とあるため、全身を均等に照射するためあらゆる方向(通常4~8方向)から照射する必要があります。