放射線治療を行う上で、重要なのは放射線によって細胞や組織がどのような反応を示すのかということです。
放射線が照射されて、何も反応がないということは、人の細胞や組織である以上、ほぼないことですが、治療が行われる過程で細胞や組織がどういったことを起こしているのでしょうか?
今回は、英単語がRで始まることから4Rと呼ばれる、放射線治療における細胞・組織の重要な反応の4つをまとめてみたいと思います。放射線治療では、これらの4因子によって分割照射が行われているので、ぜひとも知っておきたいところです。
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再酸素化‐reoxygenation‐
細胞に含まれる酸素状態は、放射線治療ではとても重要な意味を成しています。
どういうことか?
それは、細胞の酸素状態によって、放射線に対する感受性(放射線によって受ける影響の大きさ)が異なってくるためであり、その関係は以下の通りです。
酸素分圧が高い⇒放射線感受性が高い
酸素分圧が低い⇒放射線感受性が低い
※酸素の有無による細胞や組織の放射線増感効果の割合を酸素増感比-oxgen enhancement ratio;OER-という。
細胞は酸素存在下では無酸素下よりも細胞の放射線感受性が高くなるという前提があることになります。
しかし、腫瘍の中心部となる壊死領域では、血行が悪く、血液中からの酸素供給が少なく、感受性が著しく低下しており、元々から腫瘍細胞には、酸素をあまり含まない、低酸素細胞が含まれてしまっているのです。
「ということは、放射線治療は効果がないのか?」と思うかもしれませんが、そうではありません!!
なぜなら、腫瘍細胞に放射線を照射すると、再酸素化という現象が起こるからです。
再酸素化とは、放射線が照射されると腫瘍細胞など低酸素状態の細胞が酸素に富んでくることをいいます。
つまり、低酸素細胞であろうと、治療時に放射線を照射すれば、次第に酸素に富んだ細胞へと変化させることができるというこです。
そして、酸素が多く含まれる細胞へ変化させた後に、再度、放射線による治療を行うことで腫瘍細胞を治療することが出来るようになるのです。
この一連のプロセスを以下に示すと・・・・
➀腫瘍細胞に放射線を照射する。
➁腫瘍細胞の毛細血管近くにある酸素分圧の高い細胞が不活性化し死滅する
➂低酸素状態にあった細胞まで酸素が到達するようになる
➃照射時には低感受性であったものが次の照射時には高感受性に変わる
そして、分割照射を行うと、この過程が繰り返されて、腫瘍が消失することになります。
一方で、正常な細胞は低酸素状態がないため、再酸素化は起こらないのが特徴です。
細胞の若さや分裂頻度などによって、感受性が異なります。
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再分布‐redistribution‐
放射線感受性は細胞周期によっても影響を受けます。
が、照射の範囲に含まれる腫瘍細胞の全てが足並みを揃えて同じ細胞周期にいるということはありません。
そのため、放射線治療を受けた腫瘍細胞のなかでも感受性が高い周期にある細胞(G₁期後半~S期前半、G₂期後半~M期)が影響を受けて消失することになります。
ただ、その一方で、感受性が高い周期にある細胞が生き残ることになってしまいます。
が、しかし、ここでも放射線の影響により次の照射による治療への準備が行われることになります。
それが、再分布です。
再分布とは、分割照射をすることにより、1回の照射で生き残ったS期の細胞が他の感受性の高い細胞周期に移行していく現象のことです。
つまり、1度目の照射で生き残った、腫瘍細胞も次の照射時には、感受性が高い細胞周期に移行し、2度目の照射によって、照射による治療効果が現れることになるのです。
この細胞周期の移行は、細胞周期の同調とも呼ばれます。
この一連の流れを以下に示すと・・・
➀1回目の照射で、感受性の高い周期にある細胞が死ぬ
➁感受性の低い周期に合った細胞(S期後半など)が残る
➂細胞周期の同調が起こる(同じ周期の細胞が揃う)
➃これらの細胞が、周期を回って、感受性の高い周期にきたときに照射を行う(効果を増大できる)
回復-repair-
分割照射では、照射と照射の間に時間があくために、SLD回復と呼ばれる回復現象が起こります。
SLD回復とは、亜致死損傷からの回復(repair og sublethal damage:SLDR)のことです。
そして、亜致死損傷とは、照射直後から時間経過とともに回復できるような損傷のことです。
受けた傷は、時間が解決してくれるということでしょうか。
このSLD回復は、正常組織・腫瘍組織ともに見られる現象ですが、正常組織のほうが回復が起こりやすいのが特徴です。
そのため、照射から時間が経ちすぎてしまうと正常組織も腫瘍組織も回復してしまうのですが、この時間を適切におくと、正常組織は回復したけど、腫瘍組織は回復しきれていないという時期に、次の照射を行うことができます。
すると、傷が治らないうちに無理をすると、傷が広がってしまうように、放射線による損傷が治らないうちに次の照射が行われることで、腫瘍組織にさらなる大きな損傷を与えることが出来るのです。
この現象を利用して、分割照射を行うことで正常組織への影響、受ける障害を軽減する効果を得られるのです。
再増殖・再構築-repopulation-
放射線治療を行っていく過程で必ず起こるのが細胞の致死現象です。
ですが、その死んだ細胞はそのまま留まるということはありません。
正常組織でも腫瘍組織でも、死んで脱落した細胞の量を補うために、増殖し新たな自分の仲間を増やそうとします。
これが再増殖です。
この時、正常細胞より腫瘍細胞のほうが増殖スピードが速かった場合には、放射線治療による効果は低いことになってしまいますが、そこは安心してください。
なぜなら、一般的には正常組織は腫瘍組織よりも早く再増殖が始まり、その速度も速いためです。