放射線治療では、その治療効果を最大に高めるためにどの細胞周期で照射するかが重要となります。
そこで、今回は放射線治療と細胞周期の関係をまとめてみたいと思います。
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細胞周期とは?
細胞の一つ一つは、細胞分裂(母細胞)をしながら、娘細胞と呼ばれる自分の子供にあたるような細胞を生み出します。
さらに、その娘細胞は、再び細胞分裂を行う細胞(母細胞)となって新しい娘細胞を生み出していくのです。母細胞から娘細胞、その娘細胞が母細胞となり、新たな娘細胞となる、この周期を細胞周期と呼びます。
細胞周期はDNA合成前期(G1期)、DNA合成期(S)、分裂前期(G2)、分裂期(M)という一連の過程をいい、その過程を経ることで細胞は増殖します。それぞれ、どのようなことが行われているかは以下のような感じになります。
・G1期⇒
チェックポイントなどの機構によって細胞分裂を進行するかを判断する。
・S期⇒
DNAの複製。
・G2期⇒
細胞が分裂するための準備
・M期⇒
細胞分裂の開始
では、細胞は周期のどこかにいて常に増殖しているのか。実は、細胞にも休止期間にあたる部分が存在ます。
それが、G0期です。G0期では、細胞増殖の調節を考え、多くの細胞が周期から逸脱し、分裂行為を停止させています。そして、体内に存在する細胞のほとんどはG0期に留まっており、増殖を停止しており、臓器が過剰に多くなりすぎることを防止しているのです。
しかし、がん細胞は違います。
がん細胞は、G0期にとどまることはせず無制限に増殖を続けるという性質を持っています。このためがん組織が膨らみ続けひずみが生じ、組織が破損してしまうために激しい痛みを生じる原因となっているのです。
がん細胞と正常細胞の違いはG0期があるかないかで分けることができるといえるのかもしれません。ただ、正常な細胞(肝臓や腎臓の細胞、リンパ球など)がG0期にあっても、何らかの刺激を与えることによって、S期に入り、細胞周期を再び周りだすことになります。
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細胞周期と放射線治療の関係とは?
では、細胞周期について知ったところで本題です。
細胞周期と放射線治療にはどのような関係があるのでしょうか。実は、この関係はとても重要です。
なぜなら、細胞が細胞周期のどの期にあるのかによって、放射線による治療効果が異なるからです。細胞は活発に活動しているときほど、放射線による影響を受けやすい環境にいるといえます。
そのため、もっとも活動している分裂期(M期)は最も放射線感受性が高く、治療効果が得られやすいということになります。細胞周期と放射線感受性の関係を表にまとめると以下のようになります。
細胞周期 | 放射線感受性 |
---|---|
M期 | 最も高感受性 |
G1期前半 | 低下 |
G1期後半~S期初期 | 再び上昇 |
S期後半 | 低下 |
G2期~M期 | 高感受性 |
G0期 | 低い ※抗がん剤などに対しても反応が悪い |
上記の関係性を図に示すと以下のように波のように放射線感受性を変化していることになります。