X線画像には様々な画質を劣化させる要因があります。その要因は、装置やフィルムの関係、X線の性質などが関係していますが、代表的な要因の一つとして挙げられるのが、焦点外X線です。
焦点外X線の考え方自体はそれほど難しくはないのですが、とても重要な要因であるので、理解しておくことは重要です。
そこで今回は、焦点外X線についてまとめてみたいと思います。
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焦点外X線とは?
『二次電子が焦点外から発生させるX線のことをいいます。』が、最初からこう言ってもわかりにくいので、発生するまでの順を追ってまとめていきます。
X線とは、陰極から電子(一次電子)を飛ばし、陽極にある金属に衝突することで発生します。この時、陽極に衝突する電子は、それこそ沢山あり、その全てがX線となって発生すれば良いのですが、実際はそうなりません。
なんと、X線を発生させるのはその1%にだけ相当し、その大半が熱となってしますのです。
それだけではありません。
陽極の金属に衝突した電子の中には、跳ね返るように反射、または励起されて金属から飛び出てくるものまで現れてくるのです。この反射、または励起された電子を二次電子といいます。
この発生した二次電子は、金属から飛び出すと、一度、陰極のほうへ向かおうとします。
しかし、陰極と陽極の間には、高圧の電圧がかかっているため、流れに逆走するようなもので、それは道半ばで終わることになります。
この進める距離は、二次電子のエネルギーによって影響され、エネルギーが高いほど陰極側に進み、逆にエネルギーが低いほど陽極側に近い(より陰極から遠い)ところまでしか進むことができません。ただ、道半ばでエネルギーを失った電子はそこで消滅しません。
なぜなら、陰極から陽極へと電子が飛んでいけるように電圧という押し出す力(陽極からみれば、引き寄せる力)がそこには、存在しているからです。
つまり、陽極の金属から発生した二次電子は、一時的に陰極側に進みますが、その途中で進むためのエネルギーを失い、0になります。
が、陰極と陽極の間にかかっている、電圧によって新たな推進力を得て、再び、陽極側へと引き寄せられて、焦点とは別の離れた箇所に衝突することになります。二次電子の厄介なところは、この電子もX線を発生させるだけのエネルギーを持っているところです。
そのため、二次電子が陽極に衝突すると新たなX線を発生することになります。
これが、焦点外X線です!!
一次電子ではなく二次電子が、焦点とは別のところ(焦点外)で発生させるものを焦点外X線と呼ぶのです。焦点外からのX線量は焦点からのそれの 15%にも達することもあります。
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焦点外X線による影響とは?
焦点外X線は、二次電子が電圧によって、再加速されるため、加速する距離が短いため、そのエネルギーは一次電子より低く、発生するX線のエネルギーも低くなります。
これは、X線質や強度の劣化を招くことになります。
さらに、X線の発生元がことなるため、指向性と言う意味でも劣化の原因となるのです。このことによる画像への影響を下にまとめます。
➀画像を不鮮明にする。(ボケる)
➁画像コントラストの低下。
➂画像に寄与しない余分な被爆を増加する。
対策とは?
では、画像に悪影響を与える焦点外X線への対策はあるのでしょうか。現在、主に使用されている対策は一つです。
それは、なるべくX線照射窓に近いところに、調整可能な鉛の絞りやX線に直交するシャッタ-の羽をもつコリメ-タを装着することです。臨床にいると、対策をしている実感が少ないことがほとんどかもしれませんね。