放射線治療法の一つである、術中照射とはその名の通り、外科的手術中に行われる放射線照射法です。では、いったいどんな場合に行われ、どんな種類の腫瘍を対象とされているのでしょうか。
今回は、術中照射に関することをまとめてみたいと思います。
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術中照射とは?
別名で開創照射とも呼ばれ、手術で標的(腫瘍あるいはがん細胞が残存したと思われる部位)を露出し、直接的に放射線を照射する方法です。
そのため、放射線治療の特権と思われがちである、切らずに治すことができるという治療からは少しかけ離れたものかもしれません。
標的部位を露出する以外にも術中照射は通常の照射法とは少し異なります。
通常の放射線治療は、事前にシミュレーターを使用し腫瘍の存在する部位や大きさによって照射する角度や回数(基本10回以上)、その期間など綿密な計画が必要です。
ですが、術中照射では、シミュレータを使用しません。
なぜなら、外科的手段により開腹した状態で、直視下に病巣の位置・大きさを確実に把握したうえで、1度の大量の放射線を照射するためです。
腫瘍やがん細胞を直接見て照射するために外す心配がなく、シミュレーターの必要性がないともいえます。
さらに、術中照射では放射線に弱い臓器を手術操作でさけてから照射できるのも利点の一つです。
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使用される放射線の種類とは?
電子線が基本です。
電子線の飛程は、エネルギーにより一定でそれ以上の深部には到達しないという性質を持ちます。そのため、表在性腫瘍など身体の表面近くにある腫瘍への照射にとって都合の良い放射線です。
同様に術中照射も標的を露出して行うため、普段は体内深く(中心部)に存在する腫瘍でも、開腹後は放射線治療の観点では表在性腫瘍と同じ位置付けとなると考えられ、電子線による照射が最も適しているといえることになるのです。
電子線照射のため、照射には照射筒(別称:ツーブス、コーン)が使用され、病巣背面の正常組織の線量を減らす目的でボーラス(放射線の届く深さを調節するもので、この場合は生理食塩水を含ませたガーゼなど)を使用することもあります。
適応となる腫瘍とは?
術中照射の適応となる腫瘍の基本は、放射線の感受性が低い腫瘍、または、腫瘍近くに放射線感受性の高い、重要な臓器が存在する場合です。
つまり、普通の体外照射による治療だけでは効果得られにくい腫瘍、または、体外照射では腫瘍を治療する前に他の正常組織への影響が大きいときに行われることになります。
その例として教科書的ではありますが・・・
➀脳腫瘍
➁胃がん
➂膵臓癌
➃膀胱がん
➄前立腺がん
➅胆道がん
➆直腸がん
が挙げられることになりますが、最も主たる適応は難治性の膵臓がんと言われています。
ただ、例外として骨肉腫が挙げられ、骨肉腫に関しては高エネルギーX線が照射されることがあるようです。
投与線量とは?
15~30Gyです。
ただ、腸管が入るときには15~20Gy、あまり入らないときには25Gy、ほとんど入らず外照射の予定がないときには30Gyとなるようです。