肺は、空気をどの程度取り込めて、吐きだせるのかの呼吸に関する換気機能と血流機能の2つの機能が重要となる臓器です。
そして、それを調べる検査として行われるのが肺シンチグラフィですが、換気機能と血流血流機能の両方をいっぺんに評価することはできません。
どうしても、別々の検査を行う必要があるのです。
今回はその肺シンチグラフィについてまとめたいと思います。
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肺血流シンチグラフィとは?
エコノミー症候群で一気に知られた肺動脈の血栓塞栓症など、肺動脈の血流障害を調べる検査です。
肺の血流が低下している、また血流がなくなっているなど、評価することが可能です。
・使う放射性医薬品とは?
99mTcーMAA(テクネチウム大凝集人血清アルブミン) 静脈注射
・集積原理
肺の中は無数の毛細血管が通っています。
その毛細血管の内径よりも大きい粒子(MAA)を注射して、右心系から肺動脈を経て肺胞壁の毛細血管に到達させると、注射した放射性医薬品の粒子は、毛細血管の内径よりも大きいので、一時的な塞栓を生じさせます。
この粒子の肺内分布は肺血流量に比例するという性質があるので、粒子の分布を観察することで肺血流状態を把握することができるのです。
『肺の毛細血管を塞栓させた状態にする』
というと、血管を一時的に詰まらせるわけですから不安になる方もいるかもしれません。
でも、安心してください。
通常の投与量では、その留まる量は全肺胞の0.1%程度にすぎないのです。
さらに、検査後には、次第に分解され肺から消失していくので危険はないのです。(と、考えられているというのが正確ですが・・・)
・検査手順
検査前の準備にあたる前処置はありません。
➀腕から99mTc-MAA(テクネシウム・大凝集アルブミン)を注入。
➁検査用の寝台に仰向けに寝る。
➂静脈注射の数分後に前後左右の4方向から撮像。必要があれば、斜めからも撮像。
➃3次元的情報を得るため、SPECT(断層像)の撮像。
検査時間は15~20分程度です。
・正常と異常
肺血流シンチグラムでは、血管が閉塞したり狭くなっていると、その部分には放射性医薬品が分布されないのが特徴です。
なので、画像上では、血流が少ないところでは、薄い像、血栓によって血管が詰まっている場合には欠損像として、描出されます。
必要に応じて、肺換気シンチグラムを追加して行い、血流情報と対比することがあります。
肺換気シンチグラフィでは、正常な像として描出されるのに、肺血流では異常として描出されることがあります。胸部エックス線検査などの結果と組み合わせて診断されることもあります。
※診断に使われる病気
・急性肺塞栓症
肺換気シンチグラフィでは正常、肺血流シンチグラフィでは欠損像。という換気・血流ミスマッチと呼ばれる像が見られる。
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
肺区域に一致しない多発性の血流欠損を認める場合がある。
血流が保たれているのに、換気機能が低下している(逆ミスマッチ)が見られることがある。
・肺高血圧症
塞栓症と同様に肺血流シンチグラフィでは欠損、換気シンチグラフィでは正常という換気・血流ミスマッチが見られる。
・右ー左シャント
通常描出されない肺以外の臓器が見られた場合に疑われる。
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肺換気シンチグラフィとは?
肺気腫や慢性気管支炎など呼吸機能に異常が疑われる場合に行われます。
・使う放射性医薬品
教科書的には、3種類あります。
・81mKrガス
・133Xeガス
・99mTcガス
ただ、施設によって使用するものが異なり、Tcガスを使用されているところは少ないでしょう。
・集積原理
133Xeや81mKrは不活性ガスという水に溶けにくい性質をもっています。
ガスを吸入すると、肺換気能に従って肺に分布します。
呼気中に排泄されるため肺の換気能を検査することができます。
133Xeの物理的半減期は5.2日と比較的長く、1回で吸入相、平衡相、洗い出し相という呼吸の一連の画像を一気に得ることが出来ます。
一方、81mKrの物理的半減期は13秒と短いです。そのため、検査中は持続的に吸入する必要があり、結果、安静呼吸時の換気分布を検査できます。
99mTcガスは専用のテク根ガス発生装置で生成され、99mTcを炭素の超微粒子に標識したもの。正常の場合では、肺胞内に分布し換気分布に反映させます。
・検査手順
前処置:必要なし
➀検査台に寝る。
➁ガス吸入用のマスクを着用。
➂マスクから出てくるガスを吸ったり吐いたりする。
➃ガスを吸入すると同時に経時的情報を得る。
・81mKrガスの場合
半減期が短いため持続吸入(常にガスが出ている状態)で検査を行う。
前後左右からの撮像とSPECT像(断層像)を撮像する。
・133Xeガスの場合
後面像を撮像。
なぜ、後面像なのかというと、Xeガスが空気よりも重いガスのためです。
検査中は、仰向けで寝ているため、吸入されたガスは背中側に集まりやすいことになります。
1回目の吸入相の分布は換気分布を示し、閉鎖回路内で平衡時における分布は肺容量分布を表します。
その後、肺の133Xeガスを室内の空気で洗い出しながら連続収集して、洗い出し分布と洗い出し曲線を作成する。
・99mTcガスの場合
数回の深吸入後または持続吸入によって撮像する。
前後左右からの撮像とSPECT像(断層像)を撮像する。
検査時間は20分前後といったところです。
・正常と異常
換気の異常とそれらの障害の程度を左右別々に、さらに局所について知ることができるのが特徴です。
正常の場合は、両方の肺にほぼ均等に放射性医薬品が分布しているのが観察されます。
分布が薄い場合や欠損している場合、洗い出し像で取り込んだガスの排泄が悪いと病気を疑われることになります。
※診断に使われる病気
・閉塞性肺疾患などのびまん性肺疾患の換気能評価
・肺塞栓症の診断
換気・血流ミスマッチ
・気腫性嚢胞や気道閉塞部位の診断
・肺手術後の機能評価
血流と換気像の見分け方とは?
最後に、血流シンチと換気シンチの画像はとても似ているので、
「見分け方がわからない!!」
と言う方のために、違いについて述べておきたいと思います。
画像上だけですが・・・。
一番の見分け方としては、気管支です。
換気シンチでは、呼吸によって放射性医薬品の取り込みと排泄を行っています。
ということは、気管には、放射性医薬品が常にといってもいいくらい存在していることになるのです。
なので、換気シンチグラフィの画像には気管が描出されていることになります。
一方、血流シンチグラフィでは、血管内にのみ薬が存在するので、気管が描出されることはありません。