核医学検査は、他の放射線画像検査と異なり体内に放射性医薬品を注射して、体内から放出される放射線を捉えて画像化します。
つまり、体内から放出されてくる放射線を検出するための機器が必要になるのです。これが、ガンマカメラと呼ばれるものです。
今回はカンマカメラについてまとめてみたいと思います。
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ガンマカメラとは?
ガンマカメラはシンチレーションカメラとも呼ばれ、放射性同位元素(RI)の体内分布を画像化する装置です。
ガンマ線の光子一個一個のカメラへの入射位置とエネルギーを測定します。
基本的にガンマカメラは平面画像を撮像しますが、ガンマカメラを回転させ多方向から撮影した平面画像から、コンピュータで再構成し断面のRI分布を画像化するのが、SPECT装置です。
全身を撮像するときは、ガンマカメラ(または寝台)をスライドさせながら撮像します。同時に前面と後面の全身画像が撮像できます。
ここで、画像化するまでの順序を簡単に示すと・・・
➀被写体の体内にRIを投与する。
➁装置の寝台に寝る。
➂ガンマカメラに放射線が入射する
➃放射線を光に変換する。
➄光の発光位置を2次元画像メモリに記録して画像化する。
基本構造として、コリメータ、シンチレータ、光電子増倍管、波高分析回路、位置演算回路の5つが揃ってガンマカメラと呼ばれます。と、言葉だけではわかりにくいので、ガンマカメラの構造の図を載せてみます。
ここからは、構成するものについて一つ一つ見ていきましょう。
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コリメータとは?
体内に投与された、放射性医薬品(RI)は、四方八方へと放射線を放出します。そのため、検出器に入射する放射線も、まっすぐに入射するものもあれば、斜めからのものもあるのです。
これに対し何も対策をしなかった場合、検出器に入射した放射線は、どの方向の、どの部位からでてきたものなのか判断することが出来ないのです。
そこで、コリメータが必要になります。
コリメータとは、小さい穴が多数開いた鉛またはタングステン製の板のことで、特定の方向からの放射線のみを通過させて、検出器に指向性を持たせる役割を持ちます。
つまり、検出器に入射する放射線を選別することで、どこからどれだけの量の放射線が出ているのかということを明確にする働きをもつのです。散乱線除去にも効果を持ちます。
ただ、コリメータはその厚さ及び隔壁厚により空間分解能や感度が変化するため、使用する放射性核種の種類や検査目的に応じて適切に選択する必要があります。その分類は、主にエネルギー、分解能/感度、形状によって分けられます。
・エネルギーによる分類
➀低エネルギー用(160keV以下)
➁中エネルギー用(300keV以下)
➂高エネルギー用(300keV以上)
➃超高エネルギー用/PET用(500keV以上)
・分解能/感度による分類
➀汎用型
➁高分解能型
➂超高分解能型
➃高感度型
・形状による分類
➀パラレルホール(平行多孔)コリメータ
➁ファンビーム
➂多焦点ファンビーム
➃ピンホール
➄マルチピンホール
この一つ一つに関しては、また別の機会にまとめたいと思いますが・・・最も多く、一般的に使用されるのはパラレルホール(平行多孔)コリメータであり、分解能と感度は相反する関係にあり、分解能が高ければ感度が低く、感度が高ければ分解能が低くなる特徴を持ちます。
なので、コリメータだけの観点でいえば、
分解能が上げるためには・・・
➀近接撮影
➁コリメータの厚さを厚くする
➂コリメータの穴の大きさを小さくする
感度を上げるためには・・・
➀コリメータの厚さを薄くする
➁コリメータの穴の大きさを大きくする
簡単に考えるのであれば、入射するガンマ線をより選別して通すものほど、分解能は高く、どんなガンマ線でも通すものほど感度が高くなります。(一概には言いきれませんが・・・基本的にはこんなものです。)
シンチレータとは?
コリメータを通過してきたガンマ線を光に変換するものです。ガンマカメラではガンマ線から直接、電気信号に変換することはできません。そのため、まず光に変換する必要があるのです。
コリメータを通過したガンマ線がシンチレータの分子構造を励起し、励起されたエネルギーを光として放出することで発光します。
そんなシンチレータに求められることは、4つです。
➀シンチレータは発光効率がよい
発光効率が良いほど、入射したガンマ線に応じて光に変換しやすい。
つまり、感度が高くなる。発光効率を上げるために、タリウム(Tl)を不純物として混入してあることが多いです。
➁発光の減衰時間が短い
シンチレータには次々とガンマ線が入射してきます。しかし、シンチレータが前のガンマ線によって発光したままであると、次に入射してきたガンマ線を検出することができません。結果、ガンマ線の検出能力が低下し、分解能の低下も引き起こします。
そのため、シンチレータはすぐに発光して、発光した光はすぐに消える方が都合がよくなるのです。
➂発光のスペクトルが一定
同じエネルギーのガンマ線が入射しても、そのたびに発光の仕方が変わってしまっては、その後検出する信号に安定性をなくします。
➃透明度が高いこと
透明度が高いほど、光の波長を正確にとらえることが可能になります。
そんなシンチレータは、様々なのもので作られていますが、NaI(ヨウ化ナトリウム)結晶で作られている場合、管理には一定の注意が必要になります。
どんなことかというと、
➀潮解性がある。
※潮解性とは、物質が空気中の水(気体)をとりこんで水溶液となる性質のこと。
➁急激な温度変化で割れることがある。
他のシンチレータ
・BGO(Bi₄Ge₃O₁₂)
・GSO(Gd₂SiO₅)
・LSO(Lu₂(SiO₄)O)
・CsI
●シンチレータの観点で見た、分解能と感度の関係
・エネルギーが一定の場合
シンチレータが厚いほどガンマ線が通過する間に発光する機会が多く、感度は高くなります。
ただ、厚くなりすぎると発光した光を自分で吸収してしまい、感度の低下を起こし、分解能も低下させます。
・シンチレータ厚が一定の場合
エネルギーが高いほど、入射したガンマ線は減衰しきれず、発光を起こしにくくなります。結果、感度は低くなります。
逆に、エネルギーが低いほど感度は高くなります。
光電子増倍管とは?
シンチレータで発した光は、まだ弱く、電気信号でもないため画像を作成することができません。
そこで、光電子増倍管で光を光電子に変換し、さらに増幅させた状態で陽極へと送ります。
光電子増倍管の一本は2~3インチほどで、シンチレータ全体をカバーするのに60本程度必要です。
光電子増倍管の役割はそれだけではありません。
どの光電子増倍管からどれだけの信号が出力されたかによって、シンチレータ面のどの位置にガンマ線が入射し、発光したのかを計算し、位置を同定する役割も持っているのです。
その計算方法には、抵抗マトリクス方式、遅延電線方式などが用いれています。
波高分析器とは?
目的とした核種のエネルギーピークを中心に収集ウインドウ設定し、ウインドウ間のエネルギーをもったパルスだけを取り込むものです。
言うならば、選別屋さんといったところです。(専門的な言い方をすれば、エネルギー弁別を行う場所です。)
ガンマカメラでは、画像を作成するうえで必要となるのは、投与した放射線医薬品が発するガンマ線の純粋な情報です。
ガンマ線から二次的に発生した、散乱線などは画像の精度を下げる不要なものです。
それを、はじく、「いらないよー」といって、散乱線からの信号を受け取らない役割を持ちます。
また、複数核種を同時収集する場合には、核種ごとの情報を捉える役割を果たしています。
最近では、パルス波高ををデジタル変換して分析する方法が主流のようです。