お腹、特に肝臓や膵臓の検査というのは、これまで人間ドックで一般的だった超音波検査だけでは不安に感じる方が多く、追加の検査を求める方も多くなってきました。
これには、スティーブ・ジョブズさんが膵臓がんの末期でなくなったことで、 「やはり膵臓がんは見つけにくく、症状が現れてときには遅いんだ」という認識による不安が社会的に広まったからと思われます。
そこで、(というか、検査自体は以前からあったのですが)人間ドックでは超音波検査に加えて、MRI検査も受けるという方が多くなったのではないでしょうか?!
正確にいうとお腹のMRI検査というと種類は様々なのですが、人間ドックで行われることが最も多いのがMRCPと呼ばれる検査です。
では、このMRCPとはどんな検査なのかというのをまとめてみたいと思います。
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MRCP検査とは?
MRCP(Magnetic Resonance Cholangio Pancreatography)とは、MRI装置で胆のう・胆管・膵管を同時に描出する検査のことです。
どんな画像が得られるかというと・・・以下のようなものになります。
この検査の特徴は、非侵襲的に、造影剤を使わずに撮影できることです。
また、閉塞性病変でも、閉塞性の中枢や末梢側のどちらでも情報を入手する事ができ、かつ、色々な方向や厚さの画像を得ることができます。
そのため、日帰りの人間ドックでもできるような気軽さがある上に、超音波検査に加えて受けることで、より詳細な情報を得ることが出来る検査なのです。
ちなみに・・・
胆石などの病気が見つかると下のような陰性像が見られます。
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ERCPとは?
このMRCP検査とよく比較されるのがERCP(Endoscopic Retrograde CholangioPancreatography:内視鏡的逆行性胆管膵管造影)です。
MRIがまだ、頭部専用装置のような頃には、胆管・膵管の検査はこのERCP検査で行われていました。
ERCPは、 口から十二指腸まで内視鏡(胃カメラ)を入れ、その先端から胆管・膵管の中にカテーテル(細い管)を挿入し、 カテーテルから造影剤を入れて、胆管や膵管のX線写真を様々な角度から撮影する検査です。
内視鏡の挿入が前提にある検査のため、「内視鏡を飲みたくない!」と考える方には、「最悪」の一言でしょう。
ちなみに、この検査の特徴をあげると1回の検査で、内視鏡的所見、胆肝像、膵管像など各種の情報を得ることができ、また膵臓や胆道系に隣接したほかの臓器の病変も指摘できることです。
さらに、最大の利点としては検査のあとに治療処置を行えることにあります。
欠点としては、画像描出能に優れていますが、侵襲的検査であり検査後に急性膵炎を起こす可能性があるということです。
ただ、この検査も早期の膵臓がん、胆嚢がん、胆管がん、慢性膵炎の障害レベルなど、精度の高い画像を得られますので、膵臓や胆道疾患の疑い、原因不明の上腹部の腫瘤などがある場合には欠かせない検査といえます。
それでも、病気が有無が不明の時点では、行う検査ではないといえるので、人間ドックといった検診で行われることは決してありません。
そのため、人間ドックのような病気がないことを確認するような場では、同等の診断能をもちかつ、痛くも痒くもないMRCPが行われるのです。
MRCPの検査方法とは?
では、MRCPがどのように行われる検査なのか説明していきたいと思います。
➀検査前にMRI用経口消化管造影剤を飲む。(約200ml)
『ん?結局、造影剤を使うじゃないか?!』と思われるかもしれせんね。
ただ、この造影剤は注射して、血管内に投与するような造影剤ではありませんし、消化管造影剤で有名なバリウムのようなものでもありません。
例えるなら、水が一番近い存在です。
色も透明ですし、味も少し甘く感じる程度です。
では、この造影剤にはどんな効果があるのか?
それは、胃や十二指腸からの影響を少なくし、胆管・膵管の描出を良好にするためです。
MRCPは、水分を強調し、水分のあるところが白く造影されます。
そのため消化液によって胆道・膵管も白く写りますが、胃や十二指腸内にある消化液も白く描出されてしまいます。
結果、胆管・膵管を観察したいのに胃や十二指腸と重なってしまうため診断の妨げとなってしまうのです。
MRCPの際にこの造影剤を飲むことで、胃・十二指腸を黒く造影(これを「陰性造影」といいます)し、白く造影される胆道・膵管が明瞭に描出できるようになるのです。
普通の造影剤は見たい部位に入れますが、この造影剤の効果は逆です。見たくないものに入れて本当に見たいところの邪魔になるものを消すのが目的となるのです。
ただ、この造影剤を絶対に飲まないと検査ができないというわけではないため、人間ドックなどでは飲まずに行うこともあるようです。
と、説明が長くなりましたが、検査手順に戻りたいと思います。
➁MRIの検査台に寝る。
➂何度も息を止めながら、画像を撮影する。
の簡単にあげると3工程ほどです。
それでも全体で、約20分はかかる検査のため、多少の疲労感はあるでしょう。
検査場の注意点!!
この検査はMRI装置で行うため高い磁場環境で行われます。
そのため、MRI検査室に入室出来ない方は受けることができません。
その一例としてペースメーカーを付けている人、人工内耳の人、目に金属がある人、また、頭部の動脈瘤のクリッピングや、血管ステントなどの金属を体内にある場合も検査を受けられない場合があります。
また、ヘアピンなどの金属や、カード類の磁気記憶媒体、時計や携帯電話などの電子機器、補聴器、義歯、エレキバン、金属付の下着も検査前に事前に外し、ロッカーに預ける必要があります。
妊娠している可能性がある場合も避けたほうが良いでしょう。
そして、この検査は胆のう・胆管・膵管を見る検査です。検査前に食事をしてしまうと、胆のうから胆汁の排泄が促されてしまい、十分な検査を行うことができないことがあります。
検査の3時間以内の飲食は絶対やめましょう!!
他には、MRI装置内は、狭い空間のため、閉所恐怖症の方には辛いかもしれません。
事前に相談するといいでしょう。
MRCPとERCPを比較した利点と欠点
検査名 | 利点 | 欠点 |
---|---|---|
MRCP | ・非侵襲的(造影剤不要)
・炎症の急性期や手術後でも検査可能。 ・閉塞性病変でも、閉塞部の中枢、抹消側の両方の画像が得られる。 ・多方向から観察できる。 ・様々な厚さの画像情報が得られる。 |
・空間分解能・時間分解能に限界がある。(X線像に比べてボケる)
・腹水合併症の場合、明瞭な画像が得られない。 ・MRI室に入室出来ない人は検査できない。 |
ERCP | ・1回の検査で、内視鏡的所見、胆肝像、膵管像の情報を得ることができる。
・膵臓や胆道系に隣接したほかの臓器の病変も指摘できる。 ・画像描出能に優れている。 ・胆汁や膵液を直接採取できる。 ・病気が疑われる場合には、細胞診を追加で可能。 ・検査のあとに治療処置を行える。 |
・MRIに比べて侵襲性が高い。
・手術後や炎症所見がある場合には慎重を要する。 ・偶発症が起こる可能性がある。 【偶発症の種類】 |