食道や胃、小腸、大腸と呼ばれる消化管は通常、ぜん動と呼ばれる生理的運動で収縮と拡張を繰り返し、食べたものを運んでいきます。
つまり、ぜん動運動は消化や吸収に欠かせないものであり、病気などでその運動機能が悪くなれば栄養状態が悪くなることにもなるのです。ただ、バリウム検査や内視鏡検査など消化管の検査を行う場合には話は別です。
動いているものよりも止まっているもののほうが簡単かつ正確に見ることができるように、病気を見つける、治療するとなったときには消化管のぜん動運動は止まっていた方が良いのです。
そこで、使われるのが抗コリン剤と呼ばれる、消化管のぜん動運動を抑える薬です。いまや、より良い消化管検査を行うとなったら、絶対に使用を考える薬ですが、いったいどういったもので、どういう時に使用することができないのかまとめてみたいと思います。
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抗コリン剤とは?
消化管が痙攣を起こしたり、運動機能が亢進しているのは、副交感神経が良く働いているのが原因です。抗コリン剤は、アセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合するのを阻害する働きを持ちます。
これを、抗コリン作用と呼びますが、この作用によって、副交感神経を働きを抑制することができます。
結果、胃や腸といった痙攣や運動機能を抑えることができます。
つまり、普段、無意識に行われているぜん動運動も抑えることができるのです。
消化管検査で使用される抗コリン剤はブスコパンと呼ばれるものです。
ブスコパンは、正確な検査を行うため胃や腸のぜん動運動を一時的に抑制する目的で、バリウム検査や内視鏡検査では前処置として使用されるのです。他には、胃腸の過度な痙攣からくる痛みを抑えるために使用されることもあります。
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ブスコパンの副作用
ブスコパンは消化管の検査に有用ですが、使用上の注意というか副作用というのがあります。
その症状として言われているのが、
・口の渇き
・便秘
・頭痛、頭が重い感じ
・目のかすみ
・尿が出にくい
・心動悸
全て薬が効いている間の一時的な症状ですが、男性の場合、尿閉の症状が強い場合は前立腺の病気も疑われるため、早めに診てもらうといいでしょう。
また、消化管検査後も目のかすみが取れないケースは多々あります。
車を運転して病院に向かうことはやめるべきです。
面倒でも、電車やバス、タクシーなど公共のもので来院する必要があります。
ブスコパンが使えない場合
上記の症状は、使用後に絶対に起こるような避けられないことであり、使用を止めることの要因となりません。
しかし、ブスコパンの作用によって既往の病気を悪化させる原因となる場合があり、使用することができません。
その代表的なものは5つです。
・禁忌例
・出血性大腸炎
腸管出血性大腸菌(O157等)や赤痢菌等の重篤な細菌性下痢患者では、症状の悪化、治療期間の延長をきたすおそれがある。
・緑内障
緑内障は、眼圧が高くなり、視野が欠けてくる目の病気。
一般的には、目のなかの房水が増大し 眼圧が上昇、視神経を圧迫することで発症。
抗コリン剤には、瞳を開くとともに 房水の出口をふさぎ、その排出を阻害する作用があるので、さらに眼圧を上昇させてしまう。つまり、症状の悪化をまねく。
・前立腺肥大症による排尿障害
膀胱の排出力を弱めるとともに、尿道を細く収縮し、尿の出を悪くする作用がある。
普段以上に、尿が出にくくなる。
・重篤な心疾患
心拍数を増加させ、症状を悪化させるおそれがある。不整脈などを起こしやすくなる。
・麻痺性イレウス
麻痺性イレウスとは腸の動きが悪くなることで腸からの排泄ができなくなる病気です。
抗コリン剤では、消化管運動を抑制してしまうので、症状を悪化させるおそれがある。
グルカゴンとは?
ブスコパンが使用できない場合に代用されるのがグルカゴンという薬です。
グルカゴンは、消化管の平滑筋細胞に直接作用し蠕動運動を抑制すると報告されており、褐色細胞腫例に投与禁忌である以外にとくに問題となる副作用も少ないのが特徴です。
ただ、ブスコパンといった抗コリン剤に比べ、消化管の動きを抑える働きは弱く短いと言われているおり、検査中に薬の効果が切れてしまったということが十分にありえてしまうのです。
また、グルカゴンは血糖値を上げる作用があるため、糖尿病の患者さん相手には、慎重になる必要あります。