X線写真を撮影するうえで管電圧の他に設定する値として、管電流とX線の照射時間があります。
管電圧はX線強度に直結していましたが、管電流や照射時間はX線量に関係する因子であるため、別に考える必要があります。
今回は、管電流と照射時間の関係性についてまとめてみたいと思います。
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管電流値とは?
管電流値とは、X線管内でフィラメントから発生する電子の量です。
X線管内では、電子を発生させるフィラメントとターゲットと呼ばれる金属で構成されています。
フィラメントからターゲットまで、電子を飛ばし、衝突させることでX線を発生させますが、この飛ばした電子の数や量に比例して、流れる電気の量が管電流値の大きさになります。(こんな言い方をすると、専門家の方から怒られそうですが・・・)
なので、フィラメントから多くの電子が発生した場合には、管電流値は大きくなり、逆にフィラメントから発生する電子が少なければ、管電流値は少ないことになり、管電流値が大きいほど発生するX線量は増加します。
一般的に、X線管における管電流の単位はmA(ミリアンペア)で、レントゲン写真では最大でも約320mA、CT装置では、機器メーカーにもよりますが、500~700mA程度が主流になっています。
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照射時間とは?
照射時間は、難しく考える必要がありません。
そのまま、時間を表したもので、単位は秒の意味を持つsecondの(S)で表現します。
では、なんの時間を表したものなのか?
これは、管電流を流した時間、言い換えれば、X線管に負荷をかけ続けれた時間、またはX線を発生させ続けた時間を表しています。
なので、照射時間が長ければ、それだけ、X線管には長時間、負荷をかけ続けていることになり、結果、その時間だけX線を照射し続けていることになります。
現在は、AEC(自動露出)機構による制御が入っている装置がほとんどのため、照射時間はその都度、自動で変更していることがほとんどです。
mAs値とは?
管電流値(mA)と照射時間(s)をかけたものをmAs値と言います。
mAs値=mA × s
管電流値と照射時間は、どちらもX線の発生量に関係する値です。
そのため、mAs値が多くなるほど、X線量が大きくなり、被ばく線量も増加することになります。
もちろん、X線量が多くなれば、レントゲン写真の濃度は黒くなりやすくなるため、体格に応じた値を選択する必要があります。
では、X線量を調節するのは管電流値か照射時間のどちらでもよいのか?
実際の撮影では、同じX線量を照射するにも状況に応じた値の調節が必要です。
例えば、10mAs相当のX線量が必要な撮影があったとしましょう。
これには、様々な組み合わせが考えられます。
・10mAs=200mA×0.05s
・10mAs=100mA×0.1s
などなどです。
上の例で考えてみると、管電流200mAでは0.05秒の照射時間で済んだものが、100mAでは、0.1秒と2倍の時間がかかっていることになります。
「これくらい、大した時間ではないから大丈夫」
と言われれば、その通りの場合もあるのですが、実際の病院の検査ではそうではない場合もあります。
分かりやすい例としては、子どもの検査です。
子ども、特にまだ言葉を理解していないような年齢の子の場合、「息を止めて」や「動かないで」といっても聞いてくれるわけはありません。
それどろこか、検査中は好き勝手に動くし、泣き始めてたりもします。
このような場合は、安全に検査を行うために、数人で押さえながら検査をすることになるのですが、それでも、呼吸が荒くなっていたり、ふとした瞬間に動いてしまったりもしまい、結果、撮影像がブレてしまうということが起こり得るのです。
この対策として、照射時間を短縮し、一枚の撮影時間を短くすることでブレの少ない画像を撮影することが可能となるのです。
もちろん、必要なX線量を照射するためには管電流も相当量必要になりますが、様々な工夫が必要になるのです。