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インビボ診断用の放射線医薬品とは?

インビボ診断用放射線医薬品は、人体に投与される薬剤のことで核医学検査に使用されます。

 

特定の臓器や組織に集まることを利用して臓器の形態や機能を評価するために使うものです。

 

そのため、使う医薬品は、様々な条件をクリアしたものでなくてはなりません。

 

ということで、今回はインビボ診断用放射線医薬品の条件と核種の種類についてまとめてみたいと思います。

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物理的条件とは?

物理的条件とは、放射性医薬品から放出される放射線の種類やそのエネルギー、半減期を指します。

・放射線の種類

核医学検査では、他の検査とは異なり体内に放射線を注射し、体外に出てきた放射線を検出することで行う検査です。
そのため、体内に投与した薬剤から放出される放射線は体外に出てこられるだけの物質透過性を持つ必要があうのです。

 

では、どんな放射線なら透過性が強いのか。

 

それは、X線やγ線です。

 

X線やγ線は電荷を持たないため透過力が高いのが特徴です。

 

よって、軌道電子捕獲(EC)、核異性体転移(IT)、陽電子(β⁺)崩壊のいずれかを起こす核種が選択されることになります。

ECやITなどの核種は1本の光子(X線やγ線)を放出するのでシングルフォトン放出核種、陽電子崩壊核種は陽電子放出核種といいます。
一方で、他の放射線、電荷を持つ粒子(荷電粒子)であるα線やβ⁻線はダメなのでしょうか。

 

残念ながらダメです!!

 

なぜなら、α線やβ⁻線は、透過力が弱く体外で検出するのが困難のためです。

 

また、体内での被ばくの影響がX線やγ線に比べて大きいことも特徴にあるため、検査に使用されることはありません。

検査と言うよりは、放射線治療に適しているといえます。

 

そして、X線はX線管から発する者なので、放射性医薬品から発するのは自然とγ線のみとなります。

・放射線のエネルギー

ただ、X線やγ線ならなんでも良い!・・・というわけではありません。

 

薬品から放出されるエネルギーが低い場合、X線やγ線の透過力は低下してしまい、体内で吸収されてしまいます。

 

すると、体外にある検出器では、十分な量の放射線を計測することができません。

 

その結果、ただ被ばくさせることになってしまいます。

 

これを避けるためには、体内から体外まで出てくるだけのエネルギーを持つX線やγ線である必要があるのです。

 

では、具体的にどの程度のエネルギーを持つ必要があるのか?

 

検出器の特性なども考慮に入れると、100~200keVと言われてます。

 

ここで注意が必要です。

 

エネルギーが高すぎる場合、それだけ透過力を持つことになるため、検出器すら透過しやすくなります。そのような放射線は、厚いシンチレータでなければ、検出器の感度が低下し、また、不要な放射線を除去などを行うコリメーションもしづらくなるので、検査精度を低下させる要因となってしまうことがあるのです。

また、インビボ診断用放射性医薬品として適しているのは、一本のγ線を放出し、エネルギーも単一ものです。

複数のγ線エネルギーを持つ核種は適しません。

 

・半減期

半減期とは、簡単に考えると、放射線の量が半分になる時間のことです。

 

ということは、使用する放射性医薬品の半減期が長ければ、投与された医薬品からの放射線被ばくが増大することと、環境への影響を考える必要があり、望ましくありません。

 

また、極端に短い場合には、薬を作ってから施設に届けるまでの間や、検査を開始するまで間、検査中など、あらゆる時間で減衰を起こすことなります。

 

すると、経時的に放射能が変化してしまい、検査上、不都合になってしまいます。

 

では、どの程度の半減期を持つ核種を選択すればよいのでしょうか。

 

一般的には、検査終了までの時間の0.7倍程度が適当であると言われています。

 

ただ、ここでも注意が必要です。

 

ここでいう半減期とは、核種が固有にもつ半減期である、物理学的半減期ではなく有効半減期であるということです。

 

体内に投与された放射性医薬品の有効性や影響は、有効半減期で評価されます。

 

有効半減期とは、放射性核種の重量が物理的崩壊によって半減するまでの時間(物理学的半減期)と、体内に投与された物質が生理機能や代謝によって体外に排泄されて半減されるまでの時間(生物学的半減期)を加味したものです。

 

その関係は以下の式で示されます。

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生物的条件とは?

核医学検査とは、放射性医薬品の放射能を利用して、特定の臓器の形態や機能・代謝を調べる検査です。

 

もし全身に均一に分布するような医薬品であると、検査の必要ない部位の集積が邪魔になったり、必要な放射性医薬品の量が検査したい部位に集積しないことになるので、あまり適しないといえます。

 

よって、投与される放射性医薬品は、その化合物の特徴に応じて特定の臓器、組織に特異的に摂取されるように作られています。

 

この摂取のメカニズムを集積機序または集積原理と呼びますが、その種類は様々です。

 

簡単に上げると・・・

➀コンパートメント局在

➁拡散

➂能動輸送

➃毛細血管塞栓

➄化学吸着

➅レセプタ・トランスポータ

➆免疫過程

などがありますが、詳しくは別の機会にしたいと思います。

副作用は?

放射性医薬品に含まれる化合物の物質量はごく微量です。

 

そのため、副作用の発生率は0.5%未満と他の薬剤に比べても低いほうに入ります。

 

もし起こるとしたら、注射の際に生じる血管迷走神経反応と言われています。

 

※迷走神経反射とは・・・
ストレス,強い疼痛,排泄,腹部内臓疾患などによる刺激が迷走神経求心枝を介して,脳幹血管運動中枢を刺激し,心拍数の低下や血管拡張による血圧低下などをきたす生理的反応。

迷走神経反射 日本救急医学会・医学用語解説集より引用

 

ちなみに、最も副作用頻度が高い放射性医薬品は¹³¹I-adosterolと言われています。

 

その原因は、エタノールによるものだそうです。

放射線被ばくは?

当然ですが、放射性医薬品は放射線を発する薬品です。

 

そのため、投与されると自然と被ばくをすることになります。

 

その投与量は、検査内容や患者さんの体重によっても異なりますが、0.3~10mSv程度と言われており、放射線障害の危険性はないと考えられています。

 

ただ、妊娠中や授乳中の患者さんには投与しないことが望ましいと言われており、授乳中にどうしても検査を行う場合には、⁶⁷Ga、²⁰¹Tl、¹³¹Iでは少なくても2週間、99mTcO₄⁻では3日間、99mTc化合物では12時間を目安として授乳を中止する必要があると言われています。