X線の質とは、X線が発生するときの焦点サイズによって影響を受けます。
小焦点や大焦点など、発生するX線量によってサイズを変化させますが、なぜ焦点サイズが変わり、画質にまで影響を与えるのか知るのは重要です。
ということで、今回はX線管の焦点サイズについてまとめてみたいと思います。
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焦点サイズとは?
X線管内では、陰極から発生させた電子を陽極に衝突させることでX線を発生させています。
ただ、電子というと小さく、数も少なく、衝突するときも粒子が衝突するわけですから、点状の衝突跡を思い浮かべるかもしれませんが、これが勘違いのもとになります。
陰極から発生する電子の数というのは、それはもう、とてつもない数があり、それが、バラバラに飛んでいくので、陽極に衝突した電子はある程度の面積を持っていることになるため、点ではなく面として表現することが正しいのです。
そして、陽極上において電子が当たる範囲が焦点であり、実焦点と呼びます。
なぜ、焦点をわざわざ実焦点と呼ぶのか?
それは、X線の発生に関する焦点には、もう一つの種類があるからです。
そのもう一つの焦点が、実効焦点です。
X線管では、発生させたX線を正方形かつ一定の方向に照射できるように陽極が12~20°の範囲で傾いて設置されています。
そのため、電子が実際に衝突した面積(実焦点)とは別に照射されるX線束側からみた正方形をしている焦点を実効焦点と呼んでいるのです。
そして、一般的には言われる焦点サイズとは、実効焦点のことを指しています。
混乱しないように、ちょってだけ、整理しましょう。
焦点には、実焦点と実効焦点があります。
●実焦点とは・・・
熱電子が陽極面で衝突する際につくる点。陰極側から見ると長方形をしている。
●実効焦点とは・・・
X線束側から見た点であり正方形をしている。
この実効焦点の大きさがX線管の焦点サイズと呼ばれている。
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実焦点とX線量の関係とは?
焦点の大きさは、X線の発生量に大きく関わってきます。
なぜなら、X線を多量に発生させようとすればするほど、焦点にかかる負荷は大きくなり、実焦点は大きくなるという性質を持っているためです。
では、なぜ、実焦点が大きくなるほど、大線量を出すことができるのでしょうか。
これは、個人的には、逆から考えたほうが覚えやすいと思いますので、そのように説明したいと思います。
多くのX線を発生させようと思えば、それだけ大きな管電流を陰極にかけて、多くの電子を発生させ、陽極に衝突させる必要があります。
しかし、良く考えてみたください。
例えば、磁石のN極とN極やS極とS極を近づけても反発してくっつかないばかりか、一定の距離以上近づくことはありません。磁石はN極とS極、つまり+(プラス)とー(マイナス)が引き合ってくっつくのはみなが知っている内容です。
実は、これ、電子でも同じなのです。
電子はマイナスの電荷を持っております。
そのため、プラスの電荷を持つ陽極に引き付けられて結果的に衝突しX線を発生します。
ただ、衝突するまでの進んでいる空間内では、電子同士が反発しあいながら、一定の距離を保ちつつ進むことになります。
それは、陰極から発生する電子が多ければ多いほど、顕著であり、発生元が同じ大きさでも、発生したとたんに電子同士が反発しあい、横に広がり一定の距離を保ちながら、陽極へと引き付けられていくのです。
つまり、少ない電子量から少ないX線量を発生させるのに必要な陽極との衝突面積は小さくて済みますが、多くのX線量を得るためには、多くの電子が必要になるためにそれだけ電子同士が一定の距離を保つことになるため、結果的に衝突する面積は大きくなってしまうことになるのです。
よって、
・大線量⇒大焦点
・小線量⇒小焦点
という関係が成り立つのです。
X線が発生した後から焦点の大きさを考えるのではなく、発生する前から考える必要があるのです。
焦点サイズはどんなときに変化するの?
では、焦点サイズはどんなときにその大きさを変化させるのでしょうか。
・陽極(ターゲット)の角度を変えた場合
常に同じ実焦点であればターゲットアングルを小さくすることで、実効焦点を小さくすることができます。
すなわち焦点サイズを縮小することが可能なのです。
しかし、角度が小さくなると有効照射野も小さくなるため、撮影距離によっては撮影できる範囲が狭くなってしまいます。
・陰極の大きさを変えた場合
これは、逆に焦点サイズを変化させない場合ですが、ついでに・・・。
常に同じ実効焦点を得る場合、ターゲットアングルを小さくすると実焦点の焦点面積を大きくすることができます。
X線管への負荷はこの実焦点の単位面積に依存するため、実焦点の面積に比例して負荷を増大でき、小さな実効焦点においても大きい管電流を印加することが可能となるのです。
画質への影響とは?
ここで、少しだけ思うことがあります。
それは、焦点サイズが画質へ影響を与えなければ、別に実焦点が大きくなろうと、実効焦点サイズが大きくなろうと関係ないのではないかと。
そう思えたらどんなに楽なことか・・・。
でも、やはりというか、当然というべきかそうはなりません。
焦点サイズとは、画質に影響を及ぼしてしまうのです。
では、どんな影響か。
それは、画像のボケと拡大の発生による、鮮鋭性の低下です。
X線が被写体に対しどの部位でも垂直に入射するような関係であれば、画像上にはボケも拡大も起こらず、実物大に描出されることになります。
しかし、実際のX線は焦点と呼ばれるほどの点や面から放射状に発生していることになります。
ここで、焦点が小さな点であるほど、被写体は拡大して描出されますが、ボケは発生しません。
では、ある大きさの焦点から発生する場合ではどうか。焦点の両側から発生するX線も考えると、透過像の辺縁に半影となる帯を形成することになる。
つまり、焦点がある長さを有することによりボケが発生してしまうのです。
こんな性質を持っているため、例え点状のものを撮影したとしても、レントゲン画像では、絶対に点として表現されることはありません。
このボケ(半影)は焦点サイズにほぼ比例する関係にあるのです。
なので、焦点サイズが小さいほうが鮮鋭性の高い画像を得られることになり、小さなものを見るためには、小焦点サイズでの撮影が理想と言われているのです。
が、そもそものX線量が少なければ、画像として成り立たないこともあるので、このトレードオフの関係を理解して、利益の多い選択が必要となってしまうのが現実です。
ただ、人の目で判断できるボケとは、0.3mm以上と言われているので、それまでの画質の劣化はあったとしても劣化とは言えないのかもしれません。