MRAに関連する血流とは?-血行力学について-

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MRIで造影剤を使わずに血管の撮影ができるMRA(MR Angiography)ですが、その撮影は血流状態を画像化しているため、その状態によっては上手く画像化できない部位が出たりもします。

 

そのため、血管の撮影には血流に関する重要な要素について知っておく必要があります。そこで、今回はMRAに影響を与える血流についてまとめてみたいと思います。

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血流速度の求め方とは?

MRAでは、血流の速度によって、信号強度が変化します。そのため、血流速度とはとても重要な要素となっているのです。

 

まず、最初に覚えておきたい、というか、思い出していただきたいのが、小学校で習う(みはじやはじきなど地域によって覚え方は異なるようですが)速さの求め方です。

 

速さ=道のり÷時間

 

道のりはkmやm,cm、時間は時間(h),分(min)、秒(sec)と様々ですが、これが基本なのです。

 

まぁ、言葉で定義すると、速度とは、単位時間あたりにどれくらい進んだのかまたは進めるのかという変位です。そして、これは血流速度でも例外ではなく、1秒に何㎝進むのかというcm/sec単位で表されます。

 

ただ、ここで注意が必要です。

 

それは、血管が管状構造しているということです。なので、小学校で習うような、道のりと時間を直接用いて表現することが出来ないのです。

 

では、どうやったら血流速度を求めることが出来るのか。

 

それは、単位時間あたりに通過した血流量(cm³/sec)と血管の断面積(cm²)を用いた方法です。血管内の、ある特定部位を、ある時間内で通過した血流量は、その量がある程度あれば単位としてcm³/secで表現することが出来ます。

 

そして、血流の平均速度(V)とは、血液量(Q)をその断面積(A)で割った値に等しく、この関係を式で表すと、以下のようになります。

 

速度(V)=血液量(Q)/ 血管の断面積(A)

 

これを単位だけで表すと、

 

(cm/sec) =(cm³/sec) / (cm²)

 

となります。

 

この単位だけの計算式は他の計算にも応用できるので覚えると得です。

 

ちなみに、血流はあくまで平均速度でしか表すことができません。なぜなら、血流速度は同じ血管内でも血管壁に近いほうと中心部を通る血液では、速度が異なることが多いですし、また、心拍周期がどの位相であるのかも影響されてしまうからです。

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実際の血流速度とは?

血流速度は、運動状態、解剖学的位置、および病理学状態に大きく影響を受けます。

 

ただ、基本的な考え方としては、心臓から遠ざかるにつれ、血管の数と総断面積は増加し、血流速度は徐々に低下すると言われています。逆をいえば、心臓から近い血管の速度が大きいということになり、血流の最高速度は上行大動脈に見られます。

 

その速度は、個人差はありますが、正常な場合、175cm/secにくらいになることもあるようです。

 

時速に直すと約6.3km/hといったとこでしょうか。

 

人が歩く速度の平均が約4km/hなのでそれよりも早く血液は流れていることになります。ただ、部位によって異なってくるので、表にしてまとめてみたいと思います。

 

血管 血流速度(cm/sec)
上行大動脈 150~175
大動脈末端~腸骨動脈 100~150
総頚動脈起始部
腕頭動脈
浅大腿動脈
80~120
中・前大脳動脈 40~70
椎骨動脈 30~50
静脈 20以下
動静脈廔 最大400以上

 

この速度に関する知識をもつことは重要です。

 

もし、PC(フェーズコントラスト)MRAを使い、撮影を行う場合、VENC(速度エンコード)によって血管内の信号強度が決まってしまうからです。

粘性とずり応力

流体中における血液要素の摩擦により生じる血流の抵抗を、粘性と呼びます。粘性とは、応力(血液要素と血管壁の摩擦)と速度(血管壁に垂直な速度勾配)の比によって定義されており、貧血の場合には低下し、真血球血症などの状態では上昇します。

 

低粘性状態では、乱血流が頻繁に見られることになります。

 

すり応力とは、血管壁に沿って血流を抑えようと働く力のことです。そのため、血管内腔には速度のズレが生じることになり、血管壁に沿った部分が最も遅く、血管の中心部が最も早くなるのがポピュラーな流れになります。

層状血流

層状血流とは、粘性とずり応力によって生じる、何層もの予測可能な速度分布をもつ血流のことです。

 

これは、血管と平行に層をなし、簡単に言うと、理想的な血流状態といえます。もっと詳しく言えば、理想化された血管状態(まっすぐで分岐がなく、脈動もない血管)で存在し、断面像では放物線のようになることが想定される血流です。

 

ただ、実際の血管では、いくら正常な血管で、層流が保たれているとしても放物線状になることは稀です。

 

その理由は、血管の弾力や拍動があるためです。この状態では血流速度が作る曲線は対称性を保ったまま少し平坦化し、栓流と呼ばれるものになります。

出典:MRI超講義

乱流

乱流は、速度成分がランダムに変動する無秩序の流れのことです。正常な血流速度では、層流が最も多いですが、速度が増して、臨界閾値を超えると乱流が発生するのです。

 

車でも、スピードを出し過ぎても安定して走ることが出来る車と、スピードに耐えきれずにブレてしまい、横の壁に向かってしまうようなことがありますが、そんな感じです。

 

この乱流は、層流に比べて、規則性に乏しいため、血流MR画像で描出困難にすることがあります。

 

つまり、画像上では信号低下を起こす因子となります。

 

少し難しい話になりますが、乱流は流体のレイノルズ数(Re)で表現されます。レイノルズ数は流速と血管サイズを計算に入れた比例係数なので、Reがほぼ同じ血流は特性もほぼ同じになります。

 

ちなみに、レイノルズ数は以下の方程式で求められます。

Re=ρDV/η

ρ:流体の密度(g/cm³)
D:血管の直径(cm)
V:流速(cm/sec)
η:流体の粘性率(Newtons・sec/meter²またはN・s/m²)

 

レイノルズ数が2000を超える場合、血行力学は不安定であることを示し、2500を超える場合には、血管内に乱流が生じていることを示しています。

渦流

渦流もまた、画像では信号低下をもたらします。

 

渦流とは、局部的な、ゆっくりと渦巻いた、あるいは停滞した血流です。渦流はずり応力によって生じる同心性の回転血液群を特徴とし、動脈狭窄域から遠位の部位、および動脈分岐部位に高率で発生します。

 

渦流は、血管狭窄により血流が突然加速し、すばやく減速したときも生じ、狭窄の直後の血圧のわずかな変化によって、血流の主流が血管壁から分離します。

流れの剥離

分岐血管では、壁と主流方向のなす角度が大きい場合、血流が乱れ壁から分離して、剥離領域を作りだします。

 

跳ね返るよう対抗方向に血流が進むような感覚といった感じでしょうか。

 

さらに、血管が広がるにつれて、血流は減速し、血圧が壁に沿った方向の血液はわずかに上昇します。境界層の壁に隣接した血液は血圧工場に沿った移動しなければなりません。

 

これは、最終的に境界層は不安定になり、流れは壁から離れ、剥離した血流領域が生じて、渦巻運動、逆流フローが起こり、低速になっていきます。

 

流れの剥離は、内頸動脈球に頻繁に観察されます。

血流とMRIでの信号強度の関係とは?

ここまで、血行力学なんて難しい話をしてきましたが、

 

「結局はどう影響するんだ?!」ということが重要で気になるところです。

 

これには、パルス系列や血流の物理特性など様々な要因が重なるため、一概には言えませんが、いくつかの原則はあるので紹介したいと思います。

 

1.速い血流や乱流は、SE法では一般的に低信号になる。(flow void)

2.遅い血流や脳脊髄液では、SE法では高信号となる。

3.マルチスライス法で撮影しているとき、端のスライスに血液が流れ込むと、高信号になる。
(flow-relatede enhancement または entry phenomenon)

4.飽和パルスが撮像視野外に印加されていると、entry phenomenonが弱まったり、打ち消され低信号となる。

5.ガドリニウム造影では、血管の信号を上昇させる。

 

表にまとめると・・・

信号を低下させる因子 信号を増加させる因子
速い血流 遅い血流
乱流、渦流 層流
飽和パルス gradient moment nulling
odd echo dephasing even echo rephasing
マルチスライス法 シングルスライス法
スライス面に沿った流れ スライス面に直角に流入する血液
撮像容積の内部 撮像容積の端
心拍同期法
ガドリニウム
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