みなさん、X線って一種類だと思っていませんか?
実は、2種類あるのです。その2種類とはなにかというと、連続X線と特性X線です。
今回は、この二つの違いをまとめてみたいと思います。
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原子核について少しだけ
今回の内容には、原子の話が欠かせないので原子の成り立ちについて少しだけ触れたいと思います。
原子は、原子核(陽子と中性子)とその周りを飛びまわる電子とで構成されています。
ただ、電子は飛び回っているとは言いましたが、それぞれ自由に飛び回っているわけではありません。電子殻といういくつかの層に分かれて存在しているのです。
電子殻は、原子核に近いほう(内側)からK殻、L殻、M殻、N殻・・・と呼ばれており、飛び回る電子はこの電子殻内に入ることになります。
しかし、電子をみんな一緒にK殻に入ろうというわけにはいきません。それぞれの電子殻には入場制限があるのです。
具体的な数というと、K殻は2個、L殻は8個、M殻は18個、N殻は32個・・・(殻の順番をnとすると2×n²個)までしか入ることができません。原子核に近いものほど、少数精鋭な電子なのです。
ここまでのことを図で表すと下のようになります!!
電子殻に入る電子にはもう一つ重要なルールがあります。
それは、電子は原子核に近い電子殻、つまりK殻から入らないといけないということです。K殻の2個が埋まったら、次はL殻、その次はM殻・・・といった感じで、必ず内側から順に入らないといけないのです。
例えば、原子11のナトリウム(₁₁Na)の原子を考えてみましょう。
₁₁Naの原子は原子核と11個の電子によって構成されています。
これを先ほどの原子の成り立ちのルールに当てはめると、中心にはNaの原子核が存在し、その周りに電子が飛び回ることになります。
電子はK殻から順に埋められていくので、K殻には2個、L殻には8個、M殻には残りの1個が入り飛び回っているのです。
これを図に表すと、下のような感じですね。
と、原子の成り立ちを見て来ましたが、ここで一番覚えていただきたい内容は、2つです。
➀原子は原子核と電子で構成されていること。
➁電子は電子殻という層のなかで、層それぞれに決まった数が飛び回っていること。
とりあえず、この2つを押さえて本題に進みたいと思います。
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連続X線とは?
連続X線とは、金属の原子核へ荷電粒子である電子を照射したとき、クーロン場(磁場のようなもの)によって電子の軌道がまげられ、その時に制動(ブレーキ)がかかり、その時に放出されるX線のことです。
例えるならば、F1などカーレースをしているときに、ドリフトをしながら曲がっている状態のときにドリフト時の摩擦によって発する熱と煙のように、電子もブレーキをかけられながら曲がると、熱とX線を発するのです。
連続X線はその名の通り、連続の波長分布を持っています。
では、連続の波長分布を持つとはどういうことなのでしょうか。
そもそもX線とは光と波の性質を持つ、電磁波です。そして、電磁波のエネルギー(強さ)とは、波長の長さよって決まるのですが、波長が短いほど高エネルギー、波長が長いほど低エネルギーとなります。それは、波長が短いのから長いのまで品揃えよく、続けて存在していることを表しています。
つまり、連続の波長分布を持つ連続X線とは、低エネルギーから高エネルギーのX線が順番に含まれたX線となるのです。(連続スペクトル)
特性X線とは?
一方、特性X線とは、特定のエネルギーをもつX線のことを言います。
まず、特性X線はどうやって発生するのか。
これにはいくつかの工程があります。
先ず第一に、原子核に向かって照射された飛来電子によって、電子殻に捉われている電子を弾き飛ばします(電離)。電子が弾き飛ばされると、空孔と呼ばれる孔ができます。
その電子殻に電子が存在する状態で、それより内側の電子が弾き飛ばされると、安定しないため、外側の電子殻に捉われている電子が内側へと移動して(遷移)穴を埋め、安定した状態になろうとします。
この時に、内側と外側の軌道電子エネルギー差に等しいエネルギーのX線が放出されます。これが特性X線と呼ばれるのです。
特性X線は、元になった原子核によって、固有のエネルギーを持ちます。そのため、放出されたX線のエネルギーからどんな材質が使われているのかという特定を行うことが可能なのです。
エネルギーの違い
連続X線と特性X線のエネルギー分布の違いをグラフで見てみましょう。
連続X線では、色々なエネルギーが含まれる広い領域を示す曲線を描いていますが、特性X線はその一部分だけで、曲線の連続性から少し外れたエネルギーを示しています。