TDCとは造影CT検査では、欠かせない用語であり、造影剤の注入量や速度、撮影タイミングにまで影響する重要な指標です。
そこで今回は、このTDCについてまとめてみたいと思います。
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造影CT検査とは?
小さな病変や正常組織・臓器とX線の吸収値に差がない病変の場合では、診断が困難となるケースが少なくありません。
そんな場合、行われるのが造影CT検査です。造影CT検査とは、造影剤を静脈から急速に注入し、通常のCT撮影を行う検査のことです。
造影剤を注入する前後では、病変と正常な組織・臓器とではコントラストに明らかな差が生じることになり、結果として、病変をより正確に診断することが出来ます。このため、CTでは全身のあらゆる部位の検査で造影剤が用いられることになります。
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造影剤を使えばいいわけではない?!
造影CT検査と一概に表現されがちではありますが、ただ、造影剤を注射して行えば勝手に詳細な情報が得られるというわけではありません。
より良い検査、つまり正確な診断を行うためには、血管内の造影剤濃度や臓器の造影剤濃度について考える必要がでてくるのです。
では、この二つはどんなものに影響を受けるのでしょうか。
考えられる主な要因は可変が可能なものと不可能なものの2つです。
まず可変が不可能な要因として挙げられるのは患者さんに関する内容です。
造影CT検査では、患者さんの状態、つまり、体重や心拍数、心拍出量、循環血液量などに影響を受けることになります。
ただ、同じ人が二人としていないのが当たり前のように、患者さんは体格が似ている人はいても同じ人はいませんし、体内の状態にまで目を向ければ、同じ条件のもと検査を行うことは決してありませんし、技師や医師が操作できるものではありません。
一方、可変が可能なものとして挙げられるのは造影剤の注入量や速度、時間といった投与方法と撮影を行うタイミングです。
これらの条件を最適にすることで、効果的な造影検査を行うことができるのです。
そして、造影剤の注入量や速度、時間による造影効果への影響を表したのがTDC(time density curve;時間濃度曲線)なのです。
TDCとは?
TDCとは、横軸に時間、縦軸にCT値(濃度)を表したものです。
どんなものかというと・・・下のような感じになります。
何度もいいますが、造影CT検査では、最大の情報を引き出すには適切な造影剤投与方法が重要です。
以前の造影CT検査では、造影剤の投与を点滴で行っていましたが、現在は、自動注入器を使い、急速注入にて、高い造影効果と再現性の良い撮影を可能としているのです。
そして、この自動注入器(インジェクター)の設定によって、TDCは変化することになります。
その変化を一つずつ見ていくことにしましょう。
・注入量を2倍にした場合
注入量を2倍すると、その分造影後のCT値が上昇し、よりコントラストの高い画像を得られることになります。
が、造影濃度(CT値)が最大になるまでの時間が、基準時に比べて遅くなります。
・注入速度を2倍にした場合
注入速度を2倍にすると、まず造影剤の到達時間が速くなり、基準時に比べて最大濃度に達するまでの時間が短縮されます。
また、速度を速めるほど、最大濃度値も上昇します。
一方では、造影剤による効果持続時間が短縮されるため、早い撮影スピードが要求されることになります。
・注入速度を1/2にした場合
注入速度を遅くすると単位時間あたりに注入される造影剤量が減少されるため最大濃度値に到達する時間が遅くなり、かつ、最大濃度値も小さくなります。
つまり、造影剤による効果は薄くなってしまいます。
が、造影剤による効果持続時間は延びることになります。
・注入速度2倍、注入量1/2の場合
注入量を減らすと造影剤による効果が薄くなるため、最大濃度値も下がります。
そこで、補うように注入速度を2倍にすれば、注入量が1/2になった場合でも最大濃度値は同様の結果を得ることが可能となります。
一方で、注入量も少なく、注入速度も速いとなると、造影剤による効果持続時間は短くなるので注意が必要です。
腎機能が正常よりも高値の場合に造影剤量を減らしたい場合などに、この方法を使うのではないでしょうか。
注入法とTDCの変化のまとめ
上のグラフの内容をまとめると以下のようになります。
➀造影剤が最初に到達する時間は一定である。
➁最大濃度値を表す時間は注入時間に比例する。
➂最高濃度は注入速度、注入量、注入時間に比例する。
➃造影剤による効果持続時間は注入時間に比例する。
これらをまとめて単純に表すと、大量の造影剤を短時間に注入し、高速で撮影することが一番、造影剤による効果が高くなるということになります。
ただ、高濃度の造影剤を使用すれば、注入速度を速める必要なく、同様の効果を得ることができます。(注入速度が遅いほうが、注入時にかかる圧力を減らすこともできるため、事故が減る可能性も・・・)