X線の発生について理解するうえで欠かせないのがヒール効果です。
X線の構造を理解するうえでも、レントゲン画像をより理解するうえでも重要な項目の一つです。
内容は、さほど多くはありませんが、まとめてみたいと思います。
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ヒール効果とは?
X線は陰極から発生した熱電子が陽極に衝突することで発生します。
ただ、X線は電子と陽極が衝突した瞬間に発生するのではなく、電子は少しだけ陽極の内部まで進んでから発生するのです。
その発生する深さは決まっておらず、表面に近いところであったり、比較的深くまで進むこともあったりと、X線が発生する深さには広がりがあります。
また、陽極は陰極側に約20°傾いており、X線は放射状に照射されます。
すると、陽極側に広がるX線は陽極側に使われる金属内を進んでから、空気中に飛び出していくことになるのです。
結果、陽極側を透過したX線は金属内で吸収・減弱されてしまい、実効エネルギーも高くなってしまうのです。(低エネルギーのX線ほど吸収されやすいため、空気中に出てくるのは、金属内で吸収されなかった高エネルギーX線のみ。)
発生したX線は陰極側では陽極側の金属の影響をあまり受けませんが陽極側では吸収・減弱を受ける現象をヒール効果と呼びます。
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画像への影響
ヒール効果は画像にも影響を与えます。
それは、なぜか。
陽極側を通ったX線は、陰極側に比べて以下の二つのことが起こっているためです。
➀陰極側に比べて線質が硬い。
陰極側は低エネルギーから高エネルギーのX線が存在しますが、陽極側では、ターゲット内で低エネルギーX線は吸収されているため、高エネルギーX線が残っていることになる。
結果、平均したX線のエネルギーは陽極側のほうが高く、線質は硬くなる。(透過力の強いX線のみが残っている)
➁陰極側に比べて、強度が弱い。
X線強度はX線量を表すものだと考えるとわかりやすいかもしれません。
吸収が少ない陰極側に比べて、陽極側は吸収が多いです。
結果、陽極側のほうがX線量は少なくなり、強度は弱いと表現されます。
上記2つのことが起こると、画像では陰極側に比べて、陽極側のほうがノイズが増えるのとより暗く表現されるようになります。
ヒール効果は、X線管球を使って撮影する以上避けられない現象です。
そのため、体厚が厚いほう(X線吸収が多いものを撮影するとき)が陰極側、薄いほうが陽極側にといったようにポジショニングすることで画像濃度ムラをなくすといった工夫が必要になります。
※具体例
・マンモグラフィ検査の場合・・・
乳房先端を陽極側、大胸筋側を陰極側にして撮影する。
・手のレントゲン撮影の場合・・・
指先側を陽極、手関節側を陰極にする。
X線管球の陽極と陰極
といっても、X線管球を見て、どっちが陰極でどっちが陽極なのか知らないと工夫したくてもできません。
なので、最後に画像で示したいと思います。
大体は、X線管球に+、ーの印がついているので、それを探すのが一番ですが。。。
それ以外の見分け方としては、陰極側のほうが陽極側に比べて一回り大きい構造となって
いることです。
参考までに・・・