いまや、X線は病院の検査だけに限らず、土壌の非破壊検査、空港の荷物検査など様々な場面で使われ、当たり前のようになっています。
でも、みなさんは知っているでしょうか?
X線とは自然と発生する放射線ではなく、人口的に発生させる放射線なのです。
今回は、X線とはどうやって発生させているものなのかということをまとめてみたいと思います。
スポンサーリンク
レントゲンの発見を少しだけ・・・
発生方法の前に少しだけX線の起源というものにも触れてみたいと思います。
X線とは、1845年ドイツの物理学者ヴィルヘルム・レントゲンによって発見された放射線です。
当時、真空放電や陰極線といった研究が盛んに行われており、陰極線は電子の流れによるものであるが、金属を透過する現象から粒子ではなく、電磁波の一種と考えられていました。
その現象に興味を示したレントゲンもレーナルト管という放電管をもらい、研究にいそしみ始めます。
その後に似た構造であるクルックス管という真空放電管を用いて研究をしているうちに、光に反応する蛍光紙に暗い線が表れているのに気づきます。
しかし、クルックス管を用いて陰極線も研究を行っていたレントゲンは、陰極線を観察しやすくするために黒い紙で覆っていましたし、既存する光も遮っていたので、蛍光紙が反応を示すことなどないはずだったのです。
そこでレントゲンは、蛍光紙が反応している理由をクルックス管から光に似た目に見えない何かが発生しているのではないか、と考えたのです。
ここからは、この発生した何かを突き止めるための研究にシフトしていき、以下のことを突き止めていきます。
・1000ページ以上の分厚い本や硝子板を透過すること
・薄い金属箔を透過し、その厚みは金属の種類に依存すること
・鉛には遮蔽されること
・蛍光物質を発光させること
・熱作用を示さないこと
など発見された性質は様々でした。
ただ、これらの性質から発生した光に似た何かは電磁波であり、この電磁波は磁気に受けても曲がらないことから放射線の一種だという確信を得ることになります。
そして、新しい放射線に名前が付けられる際に、未知を表す「X」が使われ「X線」と呼ばれるようになったのです。レントゲンはこのX線の発見によって、1901年、ノーベル物理学賞を受賞しました。
現在の「X線」を使った検査は、レントゲンによる発見がなければ、行われていないかもしれませんし、医学の進歩もここまでにならなかったかもしれません。それほどまでにレントゲンの功績は素晴らしいものだったといえるのです。
スポンサーリンク
X線の発生方法とは?
では、具体的なX線の発生方法について解説していきたいと思います。原理の話が苦手な人でも、なるべくわかりやすいようにがんばります。
簡単に言うならば、【X線とは加速させた電子を金属に衝突させることで発生します】
X線を発生させる装置をX線菅といいますが、X線菅の中には、一本の導線で作られた陰極と導線から放出される電子を受け止めてるための金属(つまり陽極)が配置されています。
X線菅に電流を流すと、陰極の導線を通って流れますが、導線には電気抵抗があるために熱を発生します。次第に、導線がとても熱くなると、負の電荷を帯びた小さな粒子である電子が導線から離れようと、飛び出すようになるのです。
ただ、飛び出した電子は導線に戻ることはありません。反対側には正の電荷を帯びた陽極が配置されているためです。
正と負の電荷は磁石のように引き付け合うため、負の電荷をもつ電子は、正の電荷を帯びた陽極に向かって一直線に飛んでいき、衝突します。結果、熱とX線が発生するのです。
X線の強さと量
X線は電子を金属に衝突させることで発生しますが、電子の量や衝突させる強さを変化させることで、X線の発生量や強さが変化します。
X線の強さは電圧によって依存しています。一般に、陰極と陽極の電荷の差の電圧といいます。
X線菅で発生する電圧は、約45~125Kv手移動であり、この電圧が強いほど電子は陽極に強く引き付けられることになり、陽極にも強く衝突することになります。そして、電子が陽極に強く衝突したときほど、透過力の強いX線が発生するのです。
また、X線の発生量は電流量によって決まります。X線は、1,2個の電子では十分な量は発生しません。十分な量のX線を発生させるには、陽極に衝突させる電子の数を増やす必要があります。
その電子の数は、陰極を通って流れる電流量(アンペア数)と電流が流れる導線の長さによって決まってきます。当然、電流量が多いほど、電子が多く発生し、結果、X線量も増えることになります。
X線の発生効率とは?
X線の発生の話をするうえで欠かせないのが、発生効率です。効率よくX線を発生させることができるのか知る必要があります。
X線の発生効率には、明確な式があるのです。
その式がこちらです。
C:定数≒1.1×10⁻⁹
Z:陽極物質の原子番号
V:管電圧
現在、最も多く陽極に使われているタングステン(W)を用いて、管電圧120Kvの場合。
X線の発生効率=1.1×10⁻⁹×74×120000=0.97(%)
となる計算です。管電圧120KvでX線の発生効率は0.97%で、99%以上は熱を発生するため、陽極に使われる金属には融点が高い金属が使われているのです。
現在では、原子番号が大きく融点の高い金属としてタングステンが使われるのが最もポピュラーです。そのため、定数(C)と金属(Z)が決まっているため、電圧があがるほど、X線が効率的に発生すると教わることもあるかもしれません。